映画に出てくるワインを考察します①「パリの調香師 幸せの香りを探して」
映画に出てくるワインにぐいーんとズームアップしてあれこれ考えるのが好きです。あのテーブルに乗ってるワインは何だろう?なぜこれ飲んでるの?と本筋そっちのけで調べたくなるので途中で止めたり戻したりできるDVDや配信てほんと便利ですね。というわけで今回はAmazonプライムで「パリの調香師 幸せの香りを探して」を観ました。
あらすじは、ドライバーのギヨームが調香師アンヌの運転手として雇われ、ギクシャクしていた2人が少しずつ近づき、人生がリスタートするという内容です。といっても、恋の炎が燃え上がってとかそういうのじゃない。対人間同士、距離感を持ってちょっとずつ、わかりあっていく様子が自然な感じでよかったです。
そしてこれ、フランス映画なので、食事の際にはワインが出てきます。
仕事でアルザスに出張した2人。商談を終え、ギヨームが1人で食事をしていたところへアンヌがやってきたシーンです。
しかしこのテーブル上にあるボトル。これボルドー型ボトルなのです。ここはアルザスなのに、なぜアルザス型のボトルでないのか。一般的にアルザスワインは赤も白も細長いボトルに入ってます。(ふっくらしたブルゴーニュ型ボトルはたまにある。)めっちゃ違和感です。
本来ならその細長ボトルが出てくるはずなのに、なぜボルドー型ボトルがアルザスの(おそらく)まともなビストロで出てくるのか?
その謎を解くべく、画像をピンチアウトしてラベルを大きくしてみましたが、これ裏ラベルのような気がする。これだけでは、在日本でフランス通でもない日本人にはわかりませんでした。無念。
でもよくみたら、他のお客のテーブルにもボルドーボトルがあるじゃないですか。おまけに別のシーンの別のビストロでもギヨームは同じワインを飲んでた……これはもう制作側の事情ですかね。細長いボトルだと絵面がバランスが悪く見える、映えがイマイチだった、とかそういう事情かもしれません。そもそも香水が主役の映画なので、ワインのリアルは追求されなかったと思われます。
ワイン好きにはちょっとがっかりな結論でしたが、香りつながりで、調香師の仕事はとても興味深いものでした。アンヌの鋭敏な嗅覚は羨ましくもあるけれど、ホテルのシーツの洗剤臭が嫌だと持参したマイシーツに変えたり、喫煙者には近寄って欲しくないし、「お酒は体が疲れるから、嗅覚に悪い」とワインも飲まなかったり、特殊な能力と付き合う苦労と裏表です。それでも、鉱物、草、土、風、石鹸、香りの要素を読み取っていく2人を追いながら、観ている方もその香りを想像して、ゆっくりと深呼吸したくなります。
2人の日常は平穏には終わらず、ある出来事が起こりますが、それを取り立ててドラマチックにせず、淡々と追っていく演出が好きです。アンヌの「繊細で高慢で不器用」という複雑さを表現した女優さんの演技も素晴らしい。アロマや香水が好きな人には特におすすめですが、そうでない方もくつろぎながら楽しめそうな作品でした。