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ツインレイ?の記録36
6月27日
この日は彼の現地語レッスンの前日だった。
レッスンの時はいつも私の部屋に彼に現地語を教える学生が来て、仕事後の彼が来たらレッスン開始。終わったらら私が作ったごはんを一緒に食べる。
ところが、前日の20時になって、
「趣向を変えて、明日の授業はこのお店で課外授業にしましょう。18時にお店に集合でお願いします。食べたい物を考えておいてくださいね」
とお店のアドレスを送ってきた。
それは私と二度ほど行った高級日本料理店だ。
これには私も驚いた。
なにせ彼はこの三日前、急性胃腸炎で救急車で病院へ運ばれ、点滴を打っていたのだ。
おそらく固形物も食べられないだろうと思った。
だからすぐに私は彼に「胃の調子は大丈夫ですか?」と返信した。
それに私は彼のために料理の下準備をしていたのだ。
「明日の準備のために最後の昆布で出しとってしまったんですが、差し入れいります?」
しかし、返事はNO
さらに
「明日は食事しながら、食事に関係する中国語を勉強できればと思います」
とのことだった。
ここで私はなるほど、と思った。
なぜならこの前日、彼は日本からの出張者を接待している。
その時に注文で困ったこともあったのだろう。
完璧な接待で不手際がないようにするのも仕事の一環と考えて、今回そのために役立つレッスンを希望したのかもしれない。
あくまで自分の都合というわけだ。
まあ彼がレッスン代を支払っている彼のためのレッスンなのだから、彼のしたいようにすればいいし、ましてや私までごちそうしてくれるのだからありがたいことだ。
そうなんだけど、なぜか私はモヤモヤしていた。
そしてこのモヤモヤがあるまま、食事会参加するのは嫌だと思った。
だから、私は自分が思っているモヤモヤの理由を彼に率直に伝えた。
「外食するならもっと早く伝えてほしいです。学生がたくさん食べることもあり、大量の仕込みを一人で消費しきれません。だからせめて差し入れをもらってほしいと思ったんです。学生の寮は冷蔵庫がないから保存できません。でも回復食の押しつけは良くなかったと反省しました。外食は嬉しいです。本日よろしくお願いします」
これはレッスン当日に送っている。
すると彼からすぐに返事がきた。
「お気遣いしていただいたのに誠に申し訳ございません。いつも食事を依頼することなく、毎回ご配慮で作ってくださっていたことに甘えていました。今回も準備されていたのに私の都合で断ってしまったことを反省いたします。次回から私の分の食事をお願いする場合には私から必ずご連絡しますので、連絡がない場合は準備は不要でお願いします。今後、ご負担、ご迷惑をお掛けするようなことがないよう注意いたします。本当に申し訳ございませんでした」
これを読んで、私は、なんかずれているんだよなぁと思ってしまった。
「私が作りたくて作ってただけですからお気になさらず。謝ってほしくて伝えたんじゃないし、お願いしてほしいってことでもないです。私も押しつけがましくて配慮が足りず、すみません」
そして、この夜、約束のお店へ。
時間より早く着いた彼は先に奥の座敷の部屋に入ると連絡をくれた。
もうこの時には、私は、彼と会うのも最後かもと思っていた。
なぜなら彼は「今後、ご負担、ご迷惑をお掛けするようなことがないよう」と書いてきたからだ。
またしても彼に距離を置かれたように感じたのだ。
だから、もうどうせ最後なら今まで食べたことないものを食べたいと思い、高いのを承知で図々しく「すき焼き食べたいです」と書いてみた。
すると、彼がめずらしく絵文字のThumbs upで返してきた。
これは彼が嬉しい時だ。
前も、家庭教師の件で私が仕切り切れずに丸投げした時に現れた絵文字。
彼はたぶん自分にすべて任せもらうこと、頼られることが好きで、私が差し入れしたりごちそうしたりするよりも、むしろたかるぐらい甘えたほうが本来うれしい人なんだろう。
その日の会食は思った以上に楽しいものだった。
二人きりならお互いあまり食べないのだが、この日、よく食べる私の学生もいたことで、私たちはよく食べた。
その学生が初めての日本料理だというので、お刺身なども色々食べさせてあげて、日本酒も飲ませたりしたので、私のお酒も進み、途中彼に止められたぐらい飲んでしまった。
彼が急性胃腸炎で、生まれて初めて救急車で運ばれたのが異国で、とんでもない体験をしたという話もおもしろくて、私はずっと笑っていた。
「この人、ずっと笑ってるんだけど」と言ってる彼も楽しそうに見えた。
彼は現地の言葉で注文をとる練習がしたかったらしく、店員とのやりとりの仕方を学生に熱心に質問していた。
だから、私に対しては、学生に対してよりはそっけないけど、まあこれはいつものことで、もはや私へのそっけなさにも慣れてきた。
前にも、親しくなってきたからだと彼は言ったことはあるけど、私はそれほど距離が近づいてないとも感じているので、ただぞんざいに扱われているようにも感じていた。
彼としては情をかけるわけにはいかない野良犬を追い払ってるようなものなのかもしれない。
誰に対して愛情を向けるべきか与えるべきかを彼はよくわかっているのだ。