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さっちゃん

私がこっそり書いているこのノートを、読んでくれていた岸和田出身のさっちゃん
声がかっこよくて、笑顔がキラキラかわいいさっちゃん
一人称が「自分」なさっちゃん
なんでもすぐにインスタのストーリーに載せるさっちゃん
ドイツの建築が大好きなさっちゃん
私と同じで、空が好きなさっちゃん
私と違って、春菊が嫌いなさっちゃん

に今日会った。
さっちゃんは、母の高校生時代の親友。
大人になってからの二人は年に一度会えるかどうかで、私も母からよく話は聞いていたけれど、今日で会うのは三回目?だったかな

そんなさっちゃんに一度だけ二人であったことがある。
私が神戸に住んでいた頃、毎日さっちゃんが自転車に乗りながら橋や空をストーリーに載せているのを見て、気持ちよさそうだったから、確か「参加したい」というようなメッセージを送った。そんなことを送っておいて、私は当時神戸に自転車がなかった。いい加減もいいところだ。だけど、会う日はすぐに決まった。私らしいし、さっちゃんらしい。
そしてその日、駅で合流してから、いつものさっちゃんのサイクリングコースまで連れってもらった。着くとさっちゃんが「行ってこい!」と言って、愛用のかっこいいマウンテンバイクを貸してくれた。言われるがままにバイクにまたがり、私は自転車を走らせた。というより、走った。風を切りながら、海沿いや木々の間を通り抜けるのがあまりにも気持ちよくて、気づいたら立ち漕ぎで走っていた。
最高の気分でさっちゃんのところに戻って、私は少し疲れたので今度は二人歩いて駅まで向かった。さっちゃんは、「このビルにイニエスタ住んでんねんで」とか嘘かホントかわからないことを言って、私は私でバカなので、本当にどっちか分からなくて、どっちにしても面白くて二人笑った。
帰り際さっちゃんが、これあげるわと言ってポチ袋を渡してきた。お小遣い、なんてもらうつもりで会っていないし、「いらんいらん」と私は言った。「いやええって」「いや、ほんまにいいってさっちゃん」何ラリーか続いた。
そしたらさっちゃん、
「これ、手紙やぞ。お前お金やおもてるやん」って言ってきた。これも嘘かホントか分からなかったけど、急にお金と思いこんでいた自分のいやらしさに恥ずかしくなって結局受け取った。

あの日から一年か二年経ったかな。
今日、さっちゃんが電車で和歌山に来てくれた。私ではなく、母に会いに。
まあ私は昨日から、「さっちゃんが、私に会いにきてくれる!」ぐらいのテンションで待ってたけどね。
おじいちゃんへのお供えや、私が探していた自転車につけるヘルメットを被ったアヒル、遊び方のわからないようなカードゲームを三箱持って、さっちゃんはやって来た。なぜか、うちのおじいちゃんの写真を現像して額に入れたものをばあばにプレゼントしてくれた。なぜか、ではないな。さっちゃんらしい。そんなばあばは、この間亡くなってしまったさっちゃんのお母さんの写真をみては、写真から溢れるしあわせな笑顔たちに、泣き笑っていた。

お昼に、私たち家族が昔からよく行っていた山の上のレストランに四人で行った。車の中でも着いてからもたくさんお話しした。私が、「ほうれん草と春菊のおひたしがめっちゃ好きやねんな〜」と話すと、「うそやん、自分春菊嫌い。あいつさ、めっちゃ主張激しない?私が春菊です〜って言ってくるやん。」絶妙に分かりすぎてムカつくくらい面白かった。私はふと、あの日のことを思い出して、「あの日な〜さっちゃんお小遣いくれてん。」と話した。そしたらさっちゃん、「覚えてない。」やってさ。さっちゃんらしすぎる。

時間はあっと言う間もないくらい、早く過ぎた。母と三人で喫茶店に行ったり、家で遊び方の分からないカードゲームで遊んだり、どっか行こうって言った私だけ散歩に行かなかったり。まあ、それは二人で話したいこともあるかと思って、子供ながらに空気を読んだんだけどね。それなのに、母にはあんたはもう大人やでとか言われたんだけどね。
とにかく、ずっと楽しくて幸せな時間だった。
そして母とさっちゃんが話している時の二人の目は、ずっとキラキラしてた。
久しぶりに会う親友と話せるのが嬉しくてたまらないような、そんな顔してた。
そしてそして私は、そんなふたりの関係に憧れるのだった。

今、この文章を書いていたら、私がどうしてこんなにさっちゃんが好きなのか分かった。さっちゃんは私が小学生の頃から変わらず一番好きな小説「くちぶえ番長」の主人公に似ている。女の子なんだけど強くてかっこいい、男の子みたいなマコトに似ているからだ。多分、きっとそう。マコトはね、泣きたい時にはくちぶえを吹くの。くちぶえを吹くと涙が止まるから。
そんな、私の大好きなマコトに似ている。

たくさん話して、さっちゃんとはバイバイした。
帰り際、手を振りながらさっちゃんは手を目にあてて、泣く真似をした。
多分、あれは照れ隠しでもあり、そして本当に泣きそうだったんだと思う。私も本当に寂しくて泣きそうだった。私らしいし、さっちゃんらしい。

ここまで読んでくれているのかな、さっちゃん
今日は素敵な一日をありがとう。
次また会えた時には、なんの話しよう?
次のバイバイの時は、くちぶえ吹く真似してね。さっちゃん

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