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吉原 紅
2020年8月20日 20:48
わたしは日本海を眼前にした漁村の育ちである。そこは完全なる田舎であり、遊園地や映画館はおろか、スーパーですら車を30分も走らせなければ目にすることはできない。家の周辺には文字通り何もなかった。それでもいつもそこに空気の如く、わたしからの一抹の感謝も享受することなく存在していたのは、ただただ海だった。その海の匂いは、全くもって洒落てなかった。港町にあるそれとは全く違うし、人が集まるような
2020年8月7日 21:48
「夏って感じじゃないよね」幾度となく、わたしは他人にこう言われてきた。事実わたしは冬生まれだし、雪の降る町で育った。しかしそうであっても、夏というイメージを醸し出す人はいるじゃないか。玄関から秒で海という家に育った。海に対する特別な想いだってある。夏が嫌いなわけでもない。むしろ、冬よりどう考えても夏。なのに、夏のイメージにあなたはそぐわないと言われる。夏にくらうは門前払い。夏が似合う人とは?
2020年5月1日 12:43
朝目が覚めたら、海と言われた。また来たな、今日はちょうど絶好の晴天だ、はい分かった承諾。海まで続く道を歩きながら思った。この衝動はいったい全体何なんだろうと。今までにも何度かこういうことがあった。こっちの都合もタイミングも問わず突然、海!海が見たい!となるのだ。それを億劫に思って行かないこともあったが、その内の数回はその衝動に従ってきた。すると不思議なことに、海からの召集に従った後は必ず、