【読書note_003】プレイングマネジャー「残業ゼロ」の仕事術 小室淑恵

マネージャーは頑張るな
本書は、コンサルタントとして約1000社に働き方改革のノウハウを提供してきた著者が、チームとして最大の生産性を上げるにはどうすれば良いか、具体的な手法も交えて解説した本です。

まず印象的だったのは、 プレーヤーとしての仕事を頑張るマネジャーが NG だということです。

マネジャーがひとりで頑張って成果を上げ始めると、
かえってチームのモチベーションを下げるという結果を招くのです。
マネージャーが「自分がなんとかしなければ」と考えることは、
裏返せば「メンバーに期待していない」ということにほかなりません。
メンバーは「自分は期待されていないのか?」「だったら、マネージャーが頑張ればいい」と解釈し、仕事に対するモチベーションをどんどん下げて行ってしまうのです。(P6)

それでは、マネージャーがすべきこととは何でしょうか。
重要なのは、素直にメンバーに助けを求め、メンバーを信じて仕事を任せることだといいます。

メンバーに仕事を任せることの最大の効果は、チームのモチベーションが上がるということです。
そしてメンバーのモチベーションが上がることで、個々の成長が促されます。
そうすることで、チーム全体の効率が上がっていくのです。
著者はこれをマネジメントの「驚くべき力」と称しています。

この部分を読んで私は、メンバーの自主性を最大限に発揮することが、
マネジャーの最大のミッションであるということを理解しました。

「関係の質」向上と心理的安全性が大前提
それでは、具体的にマネージャーはどのようにメンバーをマネジメントしていけば良いのでしょうか。

本書の中では様々な具体的な手法が紹介されていますが、
その中で私が最も重要だと感じたのは、第2章で触れられている「関係の質」の向上です。

マネージャーとメンバーが、お互いの信頼関係をベースに、双方向で意思疎通を行うコミュニケーションを成立させるだけの「関係の質」を構築することが「マネージャーとしての仕事」を行う大前提であり、それなくして生産性の高いチームを生み出すことは不可能だということです。(P59)

関係の質の向上について、著者は「心理的安全性」という言葉を使ってさらに詳しく説明をしています。
「心理的安全性」とは、
「このチームなら、自分の意見を笑われない、拒絶されない、叱られない」
と思える安心感のことです。

この心理的安全性が共有されたチームの生産性が最も高いということを、
世界的な大企業 Google が証明しました。
驚くべきことに、メンバーの優秀さも生産性にはほとんど影響がなかったといいます。

この事実から私は三つのことを感じました。

まず一つは、優秀なトップが指示だけ与えるチームは、決して生産性が高くないということ。
二つ目は、人は他人から尊重されることでモチベーションを高めるということ。
そして三つ目は、仕事に正解はなく、 メンバーそれぞれが自分の考えを持って仕事をすることで、チーム全体として高い成果を上げられるということ。

私たちは、職務経験の多い上司や能力の高い先輩の言うことが、仕事上の正解だと考えがちです。
しかしそうではないのです。
もしそうであるならば、上司の言うことだけを聞く軍隊のような組織が、最も生産性の高いチームになるはずです。

「答え」は与えるのではなく、引き出すもの
著者は、答えを教える「ティーチング」ではなく、答えを引き出す「コーチング」を強く勧めています。

多くの人は、答えを教えてしまう方が効率的だと考えます。
しかし長い目で見ると、自分の頭で考えて答えを導き出せるよう促すことが、メンバー個人の成長を生み、チームとしての生産性向上につながるのです。

さらに著者は、マネージャーが答えだと思っていることが、実際には答えですらないこともあると警鐘を鳴らします。
現場に近い担当であるメンバーが頭を悩ませてたどり着いた答えが、マネージャー自身が出した答えよりも、圧倒的に優れたアイデアである場合もあるのです。

それではメンバー自身に答えを出してもらうために、マネージャーが具体的に取るべき行動とはどういったことなのでしょうか。

それは、アドバイスをせずに客観的な事実をフィードバックするということに徹することです。
メンバーが問題行動を起こした場合でも、厳しく指摘するということはせず、客観的な事実を伝えることで、相手が抵抗感なく受け入れることができるのです。
フィードバックには、本人が自発的に行動を修正するの促す力があるのです。 

本書全体を通じて私が感じたことは、メンバーが自律的に働くことの重要性です。
そして、マネジャーはその環境を整えることに注力すべきだということです。

多様な価値観を持ったメンバーが、自律的に様々な意見を出し合いながら仕事を進めていくことで、相乗効果が生まれ、生産性の高い仕事ができるようになるのだと思います。


最後までお読みくださり、ありがとうございました!
Happy Reading!


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