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オーバーツーリズムとインバウンド?

オーバーツーリズムとインバウンドについて思うこと

コロナ禍が終わり、「インバウンド」や「オーバーツーリズム」という言葉を耳にする機会が増えました。観光地では訪問者の増加による混雑やマナー問題が指摘され、議論も活発になっています。私は、日本人観光客も外国人観光客も相手にする仕事をしている立場から、この問題について現場で働く一員として、観光にも出かける一人として、整理したいと思います。


オーバーツーリズムの本質

オーバーツーリズムについて語る際に、視点を分けることが重要です。「オーバーツーリズム=外国人観光客の増加」というイメージが強くなっていますが、実際には日本人観光客も含めた問題です。

例えば、ニュースでは外国人観光客のマナー違反ばかりが取り上げられがちですが、観光地の現場では日本人観光客のマナーの悪さが指摘されることも少なくありません。一方で、別の番組では「この絶景を見に行こう!」「ここでしか食べられない名物!」と、旅行を推奨する内容ばかりが流れています。このように、観光客の増加を後押しする情報と、その影響を問題視する報道が同時に存在し、矛盾した状況になっています。

また、LCCの普及により、かつては飛行機を使って旅行しなかった層が国内外へ積極的に出かけるようになったことも混雑の一因です。

さらに、観光地で「協力金」を求める動きもありますが、外国人観光客のほうが協力的であることがデータからも分かっています。例えば富士山では、日本人観光客の約9割が協力金を支払わないのに対し、外国人観光客の8割は支払っているという統計もあります。「日本人観光客は素晴らしい」という考え方は、必ずしも現実と一致していません

インバウンド観光客の現状

インバウンド観光客が増加している背景には、LCCの影響もありますが、円安の影響が特に大きいです。そのため、今後円高に転じれば、訪日客の減少も十分考えられます

また、現在は「日本が安いから」訪れている観光客も多く、その中にはマナーに問題のある人も見受けられます。例えば、新幹線の指定席を利用したある外国人観光客が、席を離れる際にリクライニングを戻さず、ゴミも網ポケットに入れっぱなしのまま降車しようとしていました。それを私が指摘すると、不満そうな表情を見せて去っていきました。

また、座席のリクライニングを深く倒す際、後ろの乗客への配慮がないケースもよくあります。日本では「他人に迷惑をかけない」ことが一般的なマナーですが、それが共有されていない状況では、鉄道会社側で調整する必要があるかもしれません。例えば、新幹線のリクライニング角度を制限するなどの対応が考えられます。

飲食店では、外部で購入したペットボトルを持ち込み、平然と飲んでいる観光客もいます。(←これが許される国もあるということは我々が理解しなければなりません)また、他人が写り込んだ写真をインターネット上に無断で公開する行為も、日本では問題視されるべきですが、あまり意識されていないようです。

さらに、公共交通機関の利用マナーについても、改善の余地があります。特に、混雑する時間帯にスーツケースを持って市バスや電車に乗る観光客の増加が問題になっています。バス会社によってはスーツケースの持ち込みを禁止しているところもありますが、京都や奈良のような観光地では明確なルールの統一が必要かもしれません。

どうしようもない観光地の代表

観光地の管理は、訪れる人々の利便性を高める一方で、環境や景観の保護とのバランスを取る必要があります。しかし、いくつかの観光地では、行政の対応に疑問を感じるケースがあります。

①美瑛町・青い池の問題

美瑛町の青い池は、自然の中にある美しい景観が魅力の観光地でした。しかし、現在は巨大な駐車場が隣接し、観光地としての雰囲気が大きく変わってしまいました。

さらに、冬季には池の青さがほとんど見えないにもかかわらず、駐車場の料金が変わらず徴収されることに不満の声もあります。観光地としての価値を維持するためには、以下のような代替案が考えられます。

道の駅の拡張:駐車場を遠方に設置し、そこから電気バスなどでアクセスする仕組みにすれば、景観を損なわずに済んだはずです。民間の会社と提携して経費は抑えられたでしょう。それができないというなら、それは美瑛町長の問題です。

回送バスの活用:バスは、道の駅よりもさらに離れた、専用の待機スペースに移動し、観光客のみを池の近くへ運ぶ方式(奈良・東大寺のモデル)を導入すれば、より良い管理が可能だったでしょう。そこでバスドライバー用の休憩室も整備するべきと思います。

現状では、青い池は「人工の池」としての側面が強くなり、かつての自然の魅力が失われつつあります。行政や観光協会が、もう少し計画的な対応を取るべきだったのではないでしょうか。

②箱根・大涌谷の渋滞問題

箱根の大涌谷では、毎年、毎シーズンのように深刻な渋滞が発生しています。駐車場に入るまで何十分、時には何時間も待つことが常態化しており、観光客にとっても、地域にとっても大きな課題です。

この問題に対して、より効率的な交通手段の導入が求められます。

駐車場の廃止とシャトルバス・ロープウェイの活用:大涌谷周辺へのマイカー乗り入れを制限し、芦ノ湖エリアなどからシャトルバスやロープウェイのみでアクセスさせる方式にすれば、渋滞を大幅に減らせるはずです。あるいはスイスの事例をまねて、箱根と芦ノ湖の特定エリアにはマイカー入場禁止にさせるべきです。

乗車効率の向上:現状では、1台のマイカーに1〜2人しか乗っていないケースが多く、それによって大型バスが進入できなくなるという本末転倒な状況も発生しています。公共交通の利用を促すことで、より多くの観光客がスムーズに訪問できる環境を整えるべきです。(地方の赤字ローカル線だってJRなどと協力して、こういう手法を使えばいいのです。頭が硬すぎる)

毎年繰り返される無計画な対応によって、観光地としての価値が損なわれていることは残念です。環境保護の観点からも、より合理的な管理方法を検討するべきでしょう。

観光地の魅力を維持しながら、訪問者の利便性を確保するためには、短期的な利益にとらわれず、長期的な視点での計画が不可欠です。今回例えに挙げた美瑛町や箱根の事例は、自治体が観光地の管理をどのように考え、実行するべきかを考え直すきっかけになるのではないでしょうか。

今後求められる対応

「他人のことを考えてくれるはず」
「きっとそんなことはしないだろう」

という前提で対応するのは、すでに限界にきています。日本人でもそう考えない人が増えています。例えば、コンビニのトイレ問題。海外のカフェでは、レシートに書かれたパスワードを入力しないとトイレが開かない仕組みが一般的です。日本でも、トイレを有料化し、その分きれいに保つことでサービスの質を向上させる選択肢が考えられます。

現在、テレビ番組では観光の問題を取り上げつつも、具体的な解決策を提示しないまま終わることが多いように感じます。しかし、これからの観光業を持続可能なものにするためには、実際の状況を踏まえた議論と行動が求められるのではないでしょうか。

※旅行評論家など

ワイドショーなどには、「旅行評論家」などとされる人が登場し、どうすれば安く泊まれるか、どういう旅をしたらいいのか、時々話をされていますが、とんでもなく迷惑な話です。出張で都内に泊まらなければならない中、1泊2万などどこの企業も出しません。せっかく見つけた穴場的なホテルのことをその評論家は自慢げに語ります。

また、その評論家は、マイルの修行をしたり、おおよそ一般市民はあまり興味もなければ知らなかったことを吹聴するため、本人は「どうだ!」という顔で話していますが、これまた大迷惑であることを自覚すべきでしょう。

Tさん、あなたのことです。

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