曇り空のソーダブレッド
何年も前からソーダブレッドが気に入っていて、たまに思い出して食べたくなって焼く。
ソーダブレッドというのは、アイルランドの食べ物だ。以前読んだアイルランドの食べ物を紹介するエッセイで、国民的な食べ物として紹介されていた。よだれかけをつけてベビー椅子に座っているような赤子に与えられたソーダブレッドの一切れの写真が、アイルランドに生まれ落ちたなら当たり前に食事に添えられる、この食べ物のありふれた日常性を物語る。華やかさやゴージャスさとは縁がない。はっきりいって目を見張る程美味しいというものでもない。質素な、削ぎ落とされたミニマリストの食べ物だ。
ソーダブレッドは、その名のとおりベーキングソーダ(重曹)を使って作る。イーストの働きでゆっくり膨らませるパンよりスコーンやビスケットに近い食感だが油脂も卵も入らず、みっしりしていて、ブレッドといいつつパンの空気感はない。ちょっともそっとした感じの食べ物だ。でもイースト発酵の時間がいらない分、あっという間に作ることができる。ソーダブレッドは朝30分で作って焼いて、焼きたてで食べるのがささやかなご馳走だ。
材料も究極にシンプルで、ごまかしがきかない。それでも様々なレシピがあって、いろいろ試してみた結果ようやくこれはというのを見つけ、それを自分流にアレンジして焼いている。以来私の焼くソーダブレッドは、いつも同じこのレシピだ。
薄力粉 125g
全粒粉 100g
砂糖 小さじ1/2
塩 小さじ1/4
ベーキングソーダ(重曹) 小さじ1/2
すっぱめの無糖ヨーグルト(もしくはあればバターミルク) 175ml
オーブンは190-200度あたりに予熱する。
まず粉類を全部混ぜたのち、さいごにヨーグルトを入れて全体をまとめる。
べたつく感じの生地になるが、手から剥がしながら直径15センチ弱、厚み4センチくらいの丸い形に適当にまとめてベーキングシートを引いた天板に載せ、十字に切り目を入れて、25分ぐらい焼く。
慣れれば本当に焼き上がりまで30分。ヨーグルトを加えたらベーキングソーダがすぐに反応を始めてしまうので、おそるおそる混ぜずにとにかくぱぱっと手早くするのが一番大事。見た目がきれいでなくても全然かまわない。
ほの温かいうちに切って、バターやヌテラやジャムをがっつり塗って食べる。ミルクティーやコーヒーやグラスにいれたミルクを忘れずに。ちょっと肌寒いような、グレーの日の朝食向け。