第10回ジャンプホラー小説大賞 銅賞受賞!
第10回ジャンプホラー小説大賞にて銅賞をいただきました!
前回の特別賞に続いて2回目の受賞となります。前回よりもひとつ上ということで、あと2回くらい送れば金賞が狙えるのではないでしょうか。
戯言はさておき、私にとって思い入れのある賞なのでとても嬉しいです。何しろジャンプには物心ついたころから親しんでいますし、第6回で最終選考一歩手前まで残していただいた時の講評が、この数年の指針のひとつになっていたからです。下記、今回までの学びと試行錯誤の履歴を振り返ってみます。
ジャンプホラー小説大賞の思い出
第6回 最終選考一歩手前
上述の講評がこちら。
君が待つ海へ 悠井すみれ
心理描写・情景描写ともに危なげない筆致で、文章力は抜群でした。偶然にも「島を舞台にした」別の応募者の作品も候補に残っており、最終候補作の座を争った結果、①ホラーとしての「溜め」のシーンが非常に長く事件が起きるのが遅く地味であること ②島と生贄というオーソドックスな組み合わせで現代的な新しさや予想を上回る部分に欠けること が理由で後塵を拝しました。
まず、文章力は抜群、との評には安心しましたし大いに自信になりました。一方で、「溜め」が長い・展開が遅いのは本当に仰る通りで……。こちらの記事では、総評的に以下のコメントもあったのですが、私宛でもあったのだろうと勝手に解釈しています。
文章の上手な方ほど、事件が起きなくても描写でページ数を持たせられてしまうぶん、展開が遅くなって損をしている例も多く見受けられました。自分の小説を書く際に、「今、書いているパートは本にした場合何ページ目になるのか?」を意識できるようにしてください。118枚上限という制限は、イコール「236ページの本を書く」ということです。「今236ページ中の50ページ目だけれど、まだ派手なことが何も起きていないぞ」ということを考えられるようになったら、読者を退屈させない力が手に入るはずです。
書きたいことを書きたいだけ書ける投稿サイトでの連載形式とは違って、公募、すなわち一冊の本として見る場合だと物語の起伏や構成、そもそもの枚数上限への意識がよりシビアになるということなのでしょう。
この講評を切っ掛けに、最終的に字数・枚数が規定に収まればOK! ではなく、スタートダッシュや盛り上がりを意識してプロットを考えるという意識ができてきた……気がするし、結果として受賞や書籍化・商業化に繋がったのではないかと思います。小説家になろうで定期的に開催されるユーザー企画、書き出し祭りで教えてもらったことでもありますね。
まあいまだに試行錯誤中なんですが。
ちなみにこの時の作品「君が待つ海へ」は、ほぼ同じ内容で現在カクヨムコンに応募中です。どんなもんかと興味を持っていただけたらこの機会にぜひ。書籍化を経験した今なら大幅な改稿にも耐えられるはずなのでどこかの編集部さん拾ってください……! と切に祈っています🙏
第9回 特別賞
第7回と第8回は結果を出せなかったので割愛です。
第9回に応募した作品は「太夫は羽化の時を待つ」、遊郭に絡んだ蝶の怪異の伝承と、現代のトランスジェンダーをテーマにした幻想・耽美的な作品でした。この作品で特別賞をいただいた時の講評がこちら。
講評
難しい題材に対して誠実に向き合っており、登場人物の想いが読者に響く、心を動かすホラーになっている。細かい伏線も丁寧に回収しており、作劇も危なげない。年齢が高い読者向けの作品に感じられ、若い読者向けのフックや、目を引く部分を求めたい。
「受賞作・最終候補作のあらすじ・選評」「最終候補作一歩手前作品講評」を公開!
文章力に続いて作劇もお褒めいただきました。やったぜ🙌
前回の反省を踏まえて冒頭から死体と謎を転がし、ミスリードやちょっとした叙述トリックも交えて怪異の正体と歴史を紐解く推理パートも入れて、ラストのオチはホラーならではのものを──と、色々詰め込んだ作品でした。個人的には気に入っていて、公開できないのがもったいないなあとずっと思っています。なんとか過去作にもお声がかかるような作家になりたいものです。
一方で指摘された「年齢が高い読者向けの作品に感じられ」のところ、これもまた自覚がありますね……。この作品は主人公が妻子のある刑事、テーマもトランスジェンダーということで、ジャンプを読む層に刺さるというか共感を呼べるものではなかったかもしれません。受賞をお知らせいただいたお電話でも同様の主旨で長めの講評をいただいているのですが、聞きながら「これが『進撃の巨人』の諌山先生も言われたという『ジャンプ持ってこい』……!」などと思ったものです。
「若い読者向けのフックや、目を引く部分を求めたい」も耳が痛いお言葉でした。纏まってるけどキャッチーさや飛び抜けたものがない、ジャンプから一番遠い評価じゃないですか……。
とはいえ編集さんから具体的な講評を伝えていただいた・多少のカテエラ感はありつつも賞をもぎ取れた、という事実はたいへん励みになりました。「また送ってくださいね」のお言葉に甘えて、自分なりに色々考えて臨んだのが今回、ということになります。
第10回 銅賞
そしてこの度銅賞をいただいた作品、タイトルは「鴎は王の夢を追う」、作者がまとめたあらすじはこんな感じ。
1886年、バイエルン王国はミュンヘンにて。ワーグナー歌劇や中世風の「夢の城」の建築に耽溺し、玉座から追われた「狂王」または「夢想王」ルートヴィヒ二世は、その直後に謎の死を遂げた。市民たちが王の死を嘆き、謀殺を疑う不穏な空気の中、日本から渡独した若き軍医・森林太郎(後の森鴎外)は、亡き王の幻想が具現化したかのような怪現象に遭遇するが──
若い読者向けにジャンプをお出ししようとした結果がこれか? と言われても仕方がない、趣味に走りまくったテーマでした。私の趣味を知らない方のために言っておくと、ウィーン発ミュージカル「エリザベート」が好き過ぎたからという理由でドイツ語専攻にしたのが私です。劇中の台詞にもあるのですが、ルートヴィヒ二世はタイトルロールであるオーストリア皇后エリザベートの従兄の子です。
これはジャンプでホラーか? と書いてる最中も応募した後も思いました。が、押し切りました。一応勝算というか目算はあったので列記すると、
・好きなものや得意分野を題材にした方が良いだろう
(≒過去の受賞作にあったような青少年が主人公のもの、学校舞台のものは私には書けない、あるいは若い作者さんに対して分が悪い)
(≒ドイツ語やドイツ史の知識でディテールの演出ができるのは逆に有利?)
・ルートヴィヒ二世やエリザベートはともかく、森鴎外はさすがに皆知ってる(はず!)なのでキャッチーさがあるかもしれない
・日本が後進国だった当時、祖国のために頑張る! という主人公・森林太郎の動機は普遍的に日本人の読者に好まれるかもしれない
……という感じです。
ほか、以前の学びと反省を踏まえて事件は早めに起こすこと、事件・イベントによってストーリーを展開させること、主人公や仲間のピンチを意識して盛ること……は心掛けました。
また、何といってもヒロインの存在ですね! 本作には「エリス」を名乗る謎の少女が見え隠れします。女っ気という意味でも大事ですし、森鴎外の代表作とされる「舞姫」のヒロインと同名ということで色々期待や妄想を膨らませてもらえないかなあ、という魂胆もありました。
講評を拝読すると、やはり文豪×歴史上の人物という題材は目を引いたようです。ほかの受賞作と纏めてのコメントではありますが、非凡で目を引く着想・設定との評は誇っていこうと思います。
事前に想定以上の応募数のため結果発表を延期する、との報があり、これは厳しいかなとも思っていたのですが、そして実際、講評でも「作家の技術も上がっています」との言及があった中で、プロットも起伏に富み、エンタメとして楽しめる完成度の高いものと評していただけたのも嬉しく、自信になります。
いっぽう、「賞の結果を分けたのは、「怖さ」の濃淡でした」ということは、怖くないから競り負けたということで、ホラーとしては悔しい評価ではありますね……。いや、前回の太夫~もしかり、純粋な恐怖よりも幻想・耽美に寄った作品なのは自覚の上で送っていたのですが。やっぱりホラーの賞だもんな……という当たり前の事実を噛み締めています。
ジャンプホラー小説大賞の過去の受賞作には、恐怖度・ホラー度がそれほど高くない作品もあるのですが、それらは主人公が学生だったり青春ものとしてドラマ性が優れていた上での受賞でした。ので、レーベルカラーに合わせることをまず意識すべきなのかもしれません。
今後の課題
また出して良いと言われたので、空気を読まずにまた出します! ここまで来たからにはジャンプJブックスで本を出してほしい……ジャンプ作品のノベライズしたい……。
次回は青少年読者が感情移入できるキャラクターをしっかり怖い目に遭わせつつ、褒めてもらった構成部分でのギミックやトリックも頑張って盛り込んで──と、ネタ出し・プロット段階でもっと照準の精度を高めて練り上げたいと思います。
ホラーについてももっと勉強したいですし、一般文芸寄りのコンテストにも挑戦していきたいと思っています。横溝正史ミステリ&ホラー大賞とか創元ホラー長編賞とか!
ちなみに、強引に宣伝を挟むとホラー以外のジャンルでも頑張っていきたいです。文章力も作劇力も褒められ、エンタメとして完成度が高い、と評された書き手がどんなものを書くかは、近刊の紹介記事をご参照ください。題材等に興味を持っていただけたら、お読みいただけるととても嬉しいです。
なお、受賞経験者が再応募することについては思うことがある方もいるでしょうし、
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