太りにくい食べ方って?食べる順番は、腸内環境だけでなくホルモンにも作用する|食の大切さと身体への影響 #4
前回は、野菜の色の違いによる成分の違いや、食べる順番が血糖値やインスリンの分泌にどう影響するかについて説明しました。
今回は、食べる順番が小腸から分泌されるホルモンに与える影響について解説します。最近、腸と体の関係が注目されていますが、実は小腸がとても重要な役割を果たしているのです。腸内環境だけでなく、小腸から分泌されるホルモンが、身体に強い影響を与えることが分かってきました。
※本記事は、ベジタブルテック(株) 代表取締役 岩崎の動画のリライトです。栄養学について解説しています。動画はこちら。
実は小腸が鍵?小腸の役割とは
食べ物の消化と栄養の吸収が行われる小腸は、胃の次に位置し、長さは約7メートルもあります。消化が早い食べ物は、小腸の上部で吸収され、消化に時間がかかるものや食物繊維が多いものは、小腸の下部で吸収されます。
小腸は7mもあるので、このように吸収する場所の違いが出てきます。そして、この吸収の場所によって、小腸から分泌されるホルモンが異なります。これが、食べる順番による影響の面白い点です。
上部小腸で分泌されるホルモン「GIP」
上部小腸で食べ物を吸収すると、GIP(グルコース依存性インスリン分泌促進ポリペプチド)というホルモンが分泌されます。
GIPは体脂肪を増やす働きがあり、過剰に分泌されると太りやすくなります。一方で骨には良い影響があり、身長を伸ばしたり、骨折を治したり、骨粗鬆症の予防する助けになります。
下部小腸で分泌されるホルモン「GLP-1」
消化に時間がかかる食べ物を下部小腸で吸収すると、GLP-1(グルカゴン様ペプチド-1)というホルモンが分泌されます。
GLP-1は、血管や心臓、免疫系に良い影響を与えることが分かっています。
また、満腹感を強める効果があり、体重減少にもつながります。
食べる順番とGIP
食べる順番によって、GIPやGLP-1の分泌量が変わることが分かっています。
野菜から食べるとGIPを節約でき、太りにくい
GIPは、過剰に分泌されると太りやすくなります。
ご飯から食べるとGIPがたくさん出るので、体脂肪が増えやすくなります。肉から食べた場合と、野菜と肉・ご飯をセットで食べる場合、GIPは同じくらい分泌量です。一番GIPを出ないのは、野菜から食べたパターンです。
ダイエットの目線で見ると、GIPを節約できた方が太りにくくなります。
野菜から食べるとGIPを減らすことができるため、ベジファーストは太りにくい食べ方です。
このように食事の内容が同じでも、食べる順番を変えるだけでGIPの分泌量が変わり、太りにくくなるわけです。
野菜から食べるとGLP-1の分泌が増え、満腹感が強まる
GLP-1は、消化吸収を抑える働きが強く、満腹感を強める効果があります。血糖値や見た目の改善、肥満の改善につながるので、美容や糖尿病の治療においても注目されているホルモンです。
野菜を先に食べると、GLP-1が多く分泌され、満腹感が強くなり、食べ過ぎを防げます。このため、ダイエットや糖尿病の予防にも効果的です。
食べる順番が血糖値に与える影響
ご飯を食べる順番は、血糖値やインスリンの量だけでなく、GIPやGLP-1の分泌量にも影響を与えます。食べる順番別の研究報告をご紹介します。
1.「食べる順番と食後血糖」の実験
この研究では「30分以内に完食する」という条件で、下記3パターンの異なる食べ方を試し、血糖値の分泌量を比較しました。
①10分以内にパンを食べ、10分休憩し、肉と野菜を食べる
②10分以内に肉と野菜を食べ、10分休憩し、パンを食べる
③10分以内に野菜を食べ、10分休憩し、肉と野菜を食べる
休憩時間が入っているので、ゆっくり食べた場合にどのような結果がでるかという実験です。
結果は、先ほど「紹介した食べる順番とGIP」の内容と一致しており、パンから食べた場合にドンと血糖値が上がり、野菜や肉から食べると血糖値が抑えられていました。
前回の記事でご紹介したように、食後のインスリンの分泌量も、パンから食べた時に一番出ていて、肉・野菜から食べた時が2番目、野菜から食べた時に最もインスリンも節約できていました。前回の記事はこちら。
このような研究結果から、成長期やアスリートなど、インスリンが必要な場合はパンから食べるのも1つでしょう。
一方で、血糖値の影響を抑えたい場合やダイエットしたい場合は、インスリンを節約するために野菜から食べた方が効果的です。
2.「食べる速度と食べる順番」の実験
もう1つ、食べる速度と順番について、2023年の研究結果をご紹介します。
早食いとゆっくり食べる場合で違いはあるのか。以下の3パターンで試験を行い、「野菜から食べた時の効果は、早食いでも維持されるのか」を調べました。
①ご飯を最初に食べ、魚と野菜をゆっくり食べる
②野菜を最初に食べ、魚とご飯をゆっくり食べる
③野菜を最初に食べ、魚とご飯を早食いする
結果、早食いでも、野菜から食べることで血糖値が抑えられ、インスリンの分泌を節約できることが分かりました。忙しい時でも、最初に野菜を食べることで健康を保つ効果があります。
ゆっくりでも早食いでも、野菜から食べれば食後の血糖上昇を抑えることができ、健康管理上、効果を発揮するのです。
まとめ
食べる順番は、血糖値やインスリンだけでなく、小腸から分泌されるホルモンにも大きな影響を与えます。
特に、カテゴリー1・2・3の中のカテゴリー3「副菜」から食べることが健康管理において重要で、ダイエットや血糖値のコントロールに役立ちます。時間がない時でも、例え早食いでも、ベジファースト、野菜から食べることで健康効果を得られるのです。
次回は、タンパク質の摂取について、解説します。ダイエットや筋トレにおいても、適切なタンパク質を摂ることは重要ですよね。お楽しみに。