お米は誰のもの?!食べる人と作る人の手に取り戻す「石高プロジェクト」
スーパーなどでお米が品薄となり、ニュースでは米騒動として騒がれています。お米が本当に買いたいのに手に入らない人のためには、短期の解決策が必要ですが、
そうした議論とは別に、いまこの国における(主食だったはずの)米のあり方、価格、仕組みを問い直す長期的な議論も必要だと考えています。
そんな矢先、出会った新しい提案が、西会津町の石高プロジェクト。
特徴の一つは「自分が働いた分だけ、お米がもらえる」という仕組み。
お米が報酬になるというものです。
今の市場は、
足りないから値段が上がる→ニュースで騒ぐ→それを聞いた誰かが買い占める→するとまた…、
そんな不公平で不幸なスパイラルは誰も幸せにしません。(誰かのところには滞留しているはずです)
そろそろ変わらないといけない…
しかし、そのためには具体的な代替案を示さないと次に進めません。
あらゆるシステムが、経年劣化をおこしている時代。
経済成長時代には都合のよかった市場流通によるひずみを、みんな薄々感じているのではないでしょうか。
コロナや、災害時にそうしたひずみは現れます。
お米の流通システムも、これからの時代にあった新しい仕組みが望ましい。
石高、米本位制、年貢、人足を切り口に、お米だけの話に終わらず、実はお金のあり方を問い直す動きです。
(日本農業新聞9/3付に書いたコラムを大幅に加筆修正しました。)
新技術アプリで米本位制
~農家とつながる安心~
働いた分だけお米がもらえる権利がたまるポイント制
スーパーなどでお米の品薄、品切れが続いています。
頻発する地震や台風の備えとしてお米を買い込む傾向から、
小売店の8月の売上は前年比2倍以上、産直サイトでは10倍になったと、日本農業新聞9/1付でも伝えていました。
こうした中、おいしく良質なお米で知られる福島県西会津町では、農家と消費者がスマホのアプリでつながり、米作りに参加し、応援するサービス
「石高プロジェクト」が注目されています。
これまでにもCSAや産直アプリで農家とつながる仕組みはありましたが、大きな違いは3つ。
① 先払いで農家に投資する。
② 収穫までの間にボランティアなど(援農)をしたり、
SNSでPRするなど「貢献」すれば、自分の「石高」として、ポイントが加算される=もらうお米が多くなる。
③米の出来により配当が変動する、という点です。
リスクの共有を参加型の投資ととらえ、収穫までのプロセスを楽しむことや、農家や地域との関係づくりに価値が置かれています。
米の出来は毎年違います。
毎年、県ごとにコメの作況指数が発表されます。
平年を100として、98になったり、102になったりする。
地方や品種によって、米の出来は変わるのです。
沖縄、九州、四国、中国、近畿、北陸、中部、信越、関東、東北、北海道と、47都道府県は10ぐらいに分けて考えることができます。
(農水省には、農政局という出先機関があるがこれはもうちょっとおおざっぱ)
去年スタートした町のデジタル戦略の一環で、プロジェクト運営に関わるのは、東京都出身で地域おこし協力隊の長橋幸宏さん。
「水路清掃や草刈り、祭りなど“コメニティ”に参加することをおもしろがる人たちが口コミで集まっています」と話します。
東京などでもお米を食べるイベントを開催し、現在、アプリの登録者は約500人、参加する農家は橋谷田ファーム、坂井農園、岩橋義平さんの3人です。
品種や農法により価格は送料込み5キロ4000~6000円台と、市場からすると高めですが、ここで取引されるのはお米だけではありません。
去年は高温障害の影響で、予想の収穫より2%ほど減りしましたが、今年は豊作傾向で、現在までに400kgほどの申し込みがあります。
リアルな田んぼ作業とデジタル上の交流で生産の一端に触れた参加者は、
例え取れ高が減っても、支えようという思いやりが芽生え、農家にもやる気や誇りをもたらします。
この信頼関係が、いざというときの安心感につながるのいです。
プロジェクトでは今後、他の地域とも連携し、米作りを軸に産地と人がつながり、支え合うローカル経済圏として「現代の米本位制」を目指しています。
石高プロジェクトのおもしろさは、外からの支援ではなく、農業生産の当事者に近づくことかもしれません。
お米は誰のものか?
まずは、作った農家のものです。春に田植えをして、秋に収穫をする。四季の自然現象に寄り添いながら、田んぼで成長し、収穫期を迎えます。
その後、出荷され、農協や卸会社に渡り、
市場流通を経て、スーパーなどの小売店へと所有者を変えながら、お米は旅をします。
食べるわたしたちのものとなるのは、今はスーパーが50%、
米穀店など専門店はわずか3%だそう。
ドラッグストアも10%ちかく、あります。重いものは大型店でまとめて買うのでしょう。
意外なのは、縁故米です。譲渡米とも呼ばれ、いわゆる親や親戚、田舎の知人から送られてくるお米です。縁故米は実は13%と意外に多いのです。
この話はいずれまた書きます。
今は品不足が続き、店頭に補充しても朝のうちになくなってしまうという状態が見られます。
(もちろん、家のストックが切れて本当に困っている人もいる反面、
まだ余裕はあるけど、ニュースでもなんだか騒いでるし、
たまたま売ってるの見たから余分に買っておこう~
と気持ちが働いている場合もありそうです。
厄介なのは、個人レベルだけでなく、囲い込みをするプロの業者も出てくるのが、この世の中です。需要と供給というのはそういうことだからです。)
買い込む消費者が本当に求めているのは、何でしょうか。
本当に手に入れたいのは、「安心」ではないでしょうか。
スーパーに並んだ商品をどれだけ集めても、消費行動からは心の安らぎは得られません。
農村風景を思いながら生産サイドに加わる選択肢を提案するこうした
石高プロジェクトのような、作る人と食べる人が、直接つながる第三の流通、オルタナティブなお米のチャネルが、全国に増えて欲しいと思います
ローカルフードシステムという考え方が、欧米では見直されています。
また、食料主権とか、食料の民主化です。
CSA(コミュニティがサポートするアグリカルチャー)というのもあります。
日本語でいうと、地産地消で行こう!あるいは、農家や農村と直接繋がろう。
流通や、市場に自分たちの食べものを任すだけでなく、プランBや第三のルート、オルタナティブな食べ物のルートをこの手に取り戻そうというものです。それが、いざというときの支えになるよと。
今回の西会津はそれに加えて、WEB3.0とか、NFTとかトークンとかいう
デジタル技術で、仮想通貨というか、地域通貨を「お米」にして考えようというものです。
古くて新しい提案。
詳しく知りたい方はこちらのサイトをどうぞ。
石高プロジェクトのページはこちら
https://www.facebook.com/kokudakapj
ちょうどきょう金曜にオンラインのトークがあります!必見^^
石高プロジェクトと新百姓!
農ジャーナリスト・ベジアナ・あゆみ