お米は誰のもの?(2)売買関係ではなく喜びを分け合う仲間としてつながる
お米の品切れや品薄の報道。
連日、商品のない空っぽの棚を映し出すテレビを見ていると、メディアによる影響も、消費者の買い込み行動に拍車をかけているように思えます。
米穀安定供給確保支援機構では毎月、消費動向調査を行い、公表しています。
7月までしか出ていませんが。これによると、
スーパーでお米を買う消費者は50%を超え最も多い入手経路です。
そして、次に多いのは、「家族や知人などから無償でもらう」で、全体の約13%を占めています。
こうした売買ではなく親戚や知人に贈答したり融通する無償のお米のことを「縁故米」と呼びます。
いわゆる農業政策では換算できないので、どちらかというと無視されてきました。
でも13%って少なくないですよね。
そのほかの入手ルートはネットショップ、ドラッグストアは10%前後、
生協、産直と続き、
米穀店は3%弱です。
消費動向調査
米穀機構 米ネットは、公益社団法人 米穀安定供給確保支援機構のウェブサイトです。政統計情報・調査・レポートや全国のお米に関する情報などを掲載しています。
www.komenet.jp
縁故米が意外に多いことに驚くとともに、筆者は、こうしたお金を介さない、市場経済とは別の流通ルートにこれからのヒントがあるように思いました。
田舎の親や親戚、知人から送られるお米には、送り主との関係性や、ふるさとの風景や思い出などが含まれています。代金とは違う方法で、感謝やコミュニケーションを取っているのではないでしょうか。何より、受け取る側にとって大きなメリットは、今回のような社会不安に巻き込まれずに済むことです。困った時に融通してもらえる“拠り所”が安心につながるのです。
とはいえ、縁故米の送り主である小さな農家は減る一方で、これを支えるシステムが必要です。
そこで
地域と消費者が売買関係ではなく喜びを分け合う仲間としてつながる取り組みを二つ紹介します。
一つ目は、愛知県豊田市の押井の里、しきしまの家による「自給家族」です。
お米を希望する家族は、3年以上の長期契約を結び、経費を前払いします。災害などで収量が減った場合のリスクも共有する組合員のような位置づけです。1俵3万円ですが、100を超える都市部の消費者が参加し、既に、第二、第三のネットワークを創り出しています。
代表の鈴木辰吉さんは「生産者と消費者が家族のようにつながって、遊休農地を活用すれば、食糧危機が来ようとも安心できて、みんなが少しだけ幸せになる米づくりです」と、その仕組みを説明します。
https://oshii.net/family/
自給家族になりたいという方や、詳しく話を聞いてみたいという方は、本ページをご一読の上、下記お問い合わせフォームよりご連絡ください。(お申し込み前のご相談もぜひお気軽にお寄せください) 源流米ミネアサヒCSAプロジェクト
もう一つは、西会津町の農家と消費者がスマホのアプリでつながる「石高プロジェクト」です。
先払いや収穫のリスク共有は同じですが、援農したり、SNSで発信するなど地域に貢献すれば、もらうお米の割り当てが増える「石高制」で、デジタル地域通貨のような新技術を活用しています。一口5キロからで現在400kgほどの申し込みがあり、アプリの登録者は約500人に上ります。
石高プロジェクト|web3.0と現代の米本位制
石高プロジェクトは、お米の生産過程を芸術的な表現として捉え、生産者をアーティストと位置づけ、この芸術的なお米の創造プロセスを購入する消費者が、ブロックチェーン技術を駆使して支援する仕組みです。つまり、お米の生産者が独自のアート作品として育て上げたお米を、デジタルプラットフォームを通じて消費者が購入し、その生産者を応援するという新しいスタイルのアプローチです。
https://www.kokudaka.jp/
ところでこの写真、6月に訪ねたフィリピン、イフガオの棚田で見た稲刈り風景~
なんとすべて手刈りなのです。
山岳民族による、売りものではなく、自分達が食べるためのお米です。
(またこの話はいずれ~)
お米は誰のものか。
ふるさとの田んぼを守りながら食べものを作る人と食べる人、人と人の結びつきを取り戻す時期ではないでしょうか。
農政と共済2024.9.17号に書いたコラムを大幅に書き換えました。
ベジアナあゆみ