イスラエルの新興企業資金が減少、有名なサイバー分野が打撃を受ける
今月はイスラエルからの数多くの訪問者がある予定ですが、お会いする方々からは、難しい現状が垣間見えます。これまで伸びに伸びてきたサイバーセキュリティ分野の落ち込みが記事にありますが、やや「イスラエルだから」という単純な判断が少なくなって、これまで資金供給を支えてきた海外投資家がより際立ったものにのみ投資するということになったとも言えるのかと思いました。日本企業もたくさん現地進出している中、今後どのようにイスラエルが復活を遂げるのか、公私にわたり追っていきたいと思います。
イスラエルは、Check Point Software、CyberArk、Impervaといった大企業を輩出し、サイバーセキュリティ関連の資金調達額では米国に次ぐ規模を誇る、ハイテク新興企業の花形国である。
しかし、イスラエルは、前四半期のアジアのベンチャー企業の資金調達の大幅な減少の大部分を牽引した。Crunchbaseのデータによると、イスラエルの新興企業の資金調達額は前年同期比で67%減少し、昨年第2四半期の27億ドルから今年第2四半期には9億ドル以下に減少した。
最も懸念されるのは、この減少を先導しているセクターのひとつ、イスラエルで最も有名なハイテクセクターであるサイバーセキュリティだ。
米国に次いで世界第2位のサイバー・スタートアップ市場であるイスラエルでは、ベンチャー企業の資金が大幅に減少しており、Crunchbaseのデータによると、第2四半期のスタートアップ企業の資金調達額は87%減少している。
何が起こっているのか?
ベンチャー企業がほぼどこの国でも減少しているのは確かだが、イスラエルはベンチャー企業とそのスタートアップエコシステムに関して独自の問題を抱えているのかもしれない。
今年初め、ベンヤミン・ネタニヤフ首相とその右派政権は、国の司法の大改革に着手した。この改革は、国の民主的基盤を損ない、ネタニヤフ率いる政府により大きな権力を与えるのではないかと多くの人が懸念している。
この政治的緊張は、一部の投資家を後退させ、新興企業が資金を投じる先を再考するきっかけとなったようだ。
イスラエルにおけるベンチャーの落ち込みは、政変が始まるかなり前から始まっており、過去6四半期(おそらく7四半期目も)で資金調達額は減少している。
イスラエルの新興企業に対する今年最大のラウンドには、取引プラットフォームeToroのSPAC経由の株式公開計画が頓挫した後の3月の2億5,000万ドルの調達と、イスラエルに拠点を置くAI新興企業AI21 Labsの1億5,500万ドルのシリーズCが含まれる。
しかし、イスラエルでは今年、1億ドル以上の資金調達は4件しか行われていない。昨年の今頃は18件だった。
サイバーセキュリティの低迷
イスラエルで有名なサイバーセキュリティ産業でさえ、景気後退の影響を受けやすい。
イスラエルのサイバー新興企業は5四半期連続で資金が減少している。そのような新興企業に6億3800万ドルが投資されたのは昨年の第1四半期だけだった。それが今年第2四半期にはわずか6,900万ドルにまで落ち込み、前年同期の5億1,400万ドルからなんと87%も減少している。
今期のベンチャー企業の資金調達額はすでに第2四半期を上回っているが、1億ドルに達する可能性すらなさそうだ。
2023年のラウンドで5,000万ドルを調達したサイバー企業は国内にはない。今年最大のラウンドは、先月行われたグリップ・セキュリティの4,100万ドルのシリーズBである。
昨年のこの時期までに、国内のサイバー・スタートアップ・シーンでは、5,000万ドル以上のラウンドがすでに8件あった。
ディールメーキングも減速している。2022年第2四半期には20件のディールが完了したが、前四半期は8件のみであった。
簡単な歴史
サイバーの落ち込みは少しショッキングだ。サイバー関連の資金調達はどこの国でも減少しているが、イスラエルの落ち込みはより顕著である。
また、イスラエルはサイバー分野で誇り高い歴史を持っている。すでに述べたような上場企業やプライベート・エクイティに支援された大企業に加え、SnykやWizなどの新興企業もイスラエルがルーツである。
サイバーセキュリティはイスラエル政府と軍によって大きく支援されてきた。イスラエル国軍には、元々はイスラエル国防軍によって純粋な諜報部隊として創設された有名な8200部隊がある。数十年を経て、この部隊は一流のサイバー部隊となり、同国の多くのサイバー起業家の訓練の場となっている。
もし国内で資金調達が昨年の数字にまで回復するのであれば、サイバーセキュリティ業界は間違いなく攻勢に転じ、脆弱性を置き去りにしなければならないだろう。
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