組織図を読み解いてますか?商談準備の3ステップ
「商談の事前準備って誰も訪問してないと情報ないから何すれば良いのかわからない」という人は、組織図をチェックすることから始めましょう。
組織図からどんなことが読み取れるか、をツイートしたのがこちら↓
とは言っても、想像だけで理解するのは難しいので、実際に組織図をみながら、どう訪問準備するのか、実例を見ながらnoteで解説していきたいと思います。
最近話題にもなりましたがバフェットも出資した日本独特のビジネスモデルの商社の代表格「三菱商事」を例にとって、実際私がどんな訪問準備をしたのか振り返りながらご説明します。
1. 準備するもの (所要時間:10分)
1)最新の組織図
Googleで「三菱商事 組織図」と検索するとすぐにトップに出てきます。画像検索も含めてチェックすると最新の組織図はすぐ見つかると思います。
これをクリックすると、下記のpdfが立ち上がり、右上の日付をチェックすると、「2020年4月1日現在」と書かれているので、ほぼ最新だということが確認できます。
組織図は公開している会社とそうでない会社があります。組織図を公開してる会社は必ずチェックする癖をつけましょう。
2)最新の役員一覧
こちらも「三菱商事 役員一覧」と検索すると、下記のように出て、
一番上の役員紹介のページをクリックして、スクロールすると、下の一覧が出てきます。
同じものはプレスリリースの2020年4月17日発表の「2020年度 取締役・監査役人事について」からも入手可能で、だいたいウェブサイトかIRにこの手の情報はあります。
3)その他
1)2)に合わせて、適宜IR資料を見ましょう。この時点で他に有益な情報がないか、無駄に用意しきろうとすると時間が勿体ないので、これで一旦準備完了です。
2. 組織図の読み方 (所要時間:25分)
1)組織図の形から力関係を予測
組織図には上下と左右で部門の力の強さを表現する方法があって、例に挙げた三菱商事は上下左右の組み合わせで表現されている組織図と言えるでしょう。
①の「コーポレートスタッフ部門」が他部門と違って力が強そうで、その下に②の「営業グループ」が並んでいる構図。
②は、通常の組織図の法則からすると左から、もしくは右から順に強い部門となっているはずです。
2)役員一覧で答え合わせ
用意した三菱商事の役員一覧を上から順番に執行役員の担当を見ていきましょう。
取締役と常務執行役員を見ていくと、コーポレート担当執行役員が数人いて、コーポレートスタッフ部門の位置付けが他部門と異なることがわかってきます。
次に②の「営業グループ」は常務執行役員の序列と組織図は関連しておらず、組織図の左からも右からも常務執行役員の担当の序列に合っていません。
IR資料に記載されている「営業グループ」の純利益と照らし合わせても、組織の順と異なるため、何かしら別のロジックがあると言えるでしょう。
3)社長や役員の経歴からの答え合わせ
現社長から五代前くらいまで遡って社長の経歴を見ても、特定のグループや部署を共通して経験している訳ではないため、出世ルートのようなわかりやすいものはないと思われます。
共通しているのは駐在経験ですが、商社では当たり前なので法則とは言えないですね。
また、役員層の経歴を見ると、社外取締役以外は基本プロパー入社であるため、時代背景もあるかもしれませんが、中途入社で部長以上の役職者であればかなり異例と言えそうです。
4)新設部署は戦略そのもの
最新の組織図からはわからない新設部署はプレスリリースで1、2年分チェックして見ましょう。私の仕事のケースであれば、デジタル関連なので、気になるプレスリリースは下記の動きです。
2020年6月2日
HERE Technologies社への出資完了について
2019年12月20日
三菱商事とNTT、『産業DX推進』に関する業務提携に合意
2019年12月3日
デジタル戦略強化に向けたテクノロジー子会社 MC Digitalの設立について
これに合わせて、最新の決算説明資料や中期経営計画を見るのが良いでしょう。
2018年11月に発表している「中期経営戦略2021」では3つの主要課題に対して、各事業部に権限が割り振られています。
デジタル領域でいけば、1ページを割いて説明されているところを見ると、事業をデジタル化していく流れが非常に強いことを感じます。
それに合わせ、CDOが新しく設置・任命され、デジタル戦略部の新設が明言され、2019年4月から新体制に。2019年9月にはMC Digitalが新しく設立され、同12月に設立発表されました。
また、2019年12月にNTTとの業務提携が発表されています。2020年6月にNTTとの共同出資・協業が実施されているため、経営レベルの強いコミットで動いていることが想像できます。
こうした事実を組み合わせていくと、経営のDXを推進する本気度はかなり高いと言えそうで、商社のビジネスモデルが今後どのように変わっていくか準備しながらワクワクしてました。
顧客に対するポジティブな気持ちや興味関心は商談に臨むセールスにとっては非常に重要で、話しているときの態度にも出るものなので、その観点でいっても準備は重要と言えるでしょう。
3. 商談での活用事例(所要時間:25分)
ネット上にある組織情報から洞察をまとめると下記となります。
わからなかったこともあるので、これも不明点としてまとめます。
こうした洞察が正しいかどうか、と不明点を明らかにするという観点で顧客に質問をなげかけながら、事実を確かめていきます。
とここまで読んでこんなに準備する必要ある?と疑問に思う方もいらっしゃると思うので、準備する理由と具体的にどのように活用するかを下記で見ていきましょう。
1)商談におけるチャンピオン(キーマン)を探す
商談相手の役職からは測れない組織内での調整力を知り、予算が獲得できそうかを知り、誰を中心に商談を進めて行くか意識しないと、進むものも進みません。
なので、下記のような質問をして、チャンピオン探しをしていきます。
2)社内の組織力学を抑える
検討やプロジェクトに複数部門関わる際には、どちらの部門が強いのか、を抑えておかないと実行されず、自分たちが考えたプランニングは絵に描いた餅になります。
顧客のせいにするのは簡単ですが、それを「顧客のせい」と言うなら、営業はいらないのです。営業は顧客の組織に起こる溝を埋める動きをすることも一つの価値なんです。
そのために、下記のような質問をしながら、組織力学を理解していきます。
3)社外の組織力学を抑える
エコシステムを理解し、どのパートナーと仕事をすることが契約に近付くか、良いプロジェクトができるか、は特に重要です。
大きな組織になると、社外を含めて見えない力関係があります。
例えば、今回のケースであれば、NTTグループとの取り組みが発表されていることを見ると、急速に関係性が濃くなっている可能性も高くなっています。
NTT本体にはシステム構築を外販する機能はないため、グループ会社のNTTデータやNTTコミュニケーションズが関わってくることも想定されます。
これを読み違えると、提案の実行体制が顧客にとって受け入れられず、どんなに良い提案であっても採用されません。ということを確認するために、下記のような質問をしていきます。
まとめ🌮
組織図は単なる図ではなく、作り手の立場になれば、必ず図にする際の意図があります。それを読み解こうとしたときに思わぬ発見や、商談時の良い質問が思い浮かび、初回商談がスムーズに進みます。
3ステップをおさらいすると、下記となります。
正直言うと、私の洞察は全く的外れかもしれません。それで言うと内部の人間でもないので知らなくて当然で、間違っていても恥ずかしくないので、このように公開しました。
ではなぜ準備するんでしょう?
仮に仮設が外れたとしても、外れるのは当たり前、商談相手は全く気にしません。むしろ、顧客の商談のためにちゃんと準備をしてきた痕跡は伝わるので、商談がスムーズに進みます。
仮説が外れてもマイナスはなく、仮説が当たればプラスになり、かつ相手に対する準備の姿勢は伝わるのでプラス、つまり組織図から準備することはプラスしかないのです。
オンライン商談が主流になる中で、初回商談から営業の想いが伝わりやすい準備と、その準備した仮説が先方の状況と合致すれば、一回の商談で顧客との距離はグッと縮まります。
いつからやりますか?次回訪問からでしょう。
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