七福神日誌29
九時起床。ガジュマルに水をやる。
今日は休日。
家の階段の塗装が始まったので、妻と荷物を持ってまた仮住まいのマンションに移る。
三日ほどしてペンキが乾いたら帰ってこられるとのこと。
「一気にやっちゃいます」といって見送ってくれた大工の手にでかい字でレッドと書かれた塗料缶が握られていて、少し不安になる。
数日前、ふいに始まった外壁の塗装は途中までグレー単色の落ち着いた仕上がりで、最後に家の一角を一階から三階まで太く一直線にオレンジ色に塗りあげて終わった。
これはタイ旅行中の義母の指示によるもので、俺にはこれがお洒落なのか変なのかよくわからないが、とても人目を引くことは確かで、「普通の色の家に住みたかった」といってその後の妻が今日まで落ち込んでいる。
仮のマンションに荷物を置いて、妻と冷やし中華を探しに出かける。
俺も妻も、夏が過酷になってくると冷やし中華は毎日でも食べたいが、今年は探し方が悪いのかどこを歩いても巡りあえない。
雪月花でやっている気がして行ってみたが、今日は臨時休業。
結局近くのトンカツ屋に入った。
腹が減っていたのでロース、ヘレ、エビフライなど全部のっかったランチを食べる。妻は梅じそロールカツ定食。ビールも注文する。
帰って昼寝。
夕方まで眠って、起きると妻がいない。社長に呼ばれ、新店の準備で梅田にいるとのこと。
台所にあったクリームパンを食べる。
風呂を洗ってお湯をためているとリキさんからメールが届く。
リキさんは今月から社員として新しく七福神に入った方で、身長百八十五センチの元ラガーマン。
メールには新店で使う食材のアレルゲンの一覧や賞味期間の情報がまとめられている。
お礼をいって、内容をパソコンに移す。
妻にデータを送ると文章の整理や印刷、ラミネート加工などを今からやってしまい、新店の書類立てにさしておいてくれるとのこと。
これでは何だか俺がほとんど働いてないような気もするが、今日は休日なのでこのくらいで良いに違いない。
風呂に入り、妻の帰りを待ちながら町田康の『リフォームの爆発』を読む。
これは最近、リフォームの大工たちに目撃させようと思って購入し、一週間ほど業者も出入りする部屋に置いておいたもの。
最初のうちこそギクリとした様子で、こっちで期待したリアクションを楽しむことも出来たが、だんだんと大工らの方でも休憩時間にちょっと読んでみて笑う、書かれてあることを仲間に教えてやり、盛り上がる、などし始めた気配があり、本日家を出る時に回収させてもらった。
二十時頃、妻が帰ってくる。
オクラと鳥肉でドライカレーを作ってくれる。
食べて、早めの就寝。
明日は新店舗、七福神バルチカ03店に初回納品のものが一気に届く。
各食材の置場所がスムーズに決まれば、人手も集めてざっと掃除してしまい、午後からはついに開店日に向けた仕込みを始められる予定だ。
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