糸端をつむぐ
私のいくつかある趣味の一つが、編み物です。
編み物をしていると必ず糸くずがでます。
私は糸くずを糸くずにしたくないので、捨てずに取っておいて糸端として再利用します。
綿のかわりに詰め物として使ったり、糸端をつないで一本の糸にしてポンポンをつくったり、あと数センチ糸が必要なときにつなぎ合わせて間に合わせにしたりして活用しています。
一時期、ハートのモチーフを編むのに夢中になり、ぷっくりしたハートのモチーフをポコポコ量産しました。
次々と色々な色のハートが編み上がっていくのがとても楽しくて、編む手が止まりませんでした。
ハートのモチーフ量産中もこれまた然り、糸端が大量発生しました。
同じような色合い、太さの糸をつなぎ合わせてハートのモチーフを更につくり続けました。
とうとう、編む糸がなくなり、糸端さえもなくなり、手元には数本の糸端が残りました。
糸たちを一本につなげてみると、ちょうどハートのモチーフが一個できそうな感じの長さです。
継ぎ接ぎのような、パッチワークのような、寄せ集めのハートのモチーフが一個できました。
仕上がりをみたとき、一つの作品として完成した達成感がありました。それから、愛おしさも感じました。
「私と一緒だ…」
色、太さ、素材の違う糸たちが一個のハートとして存在したことが、なぜかしら、自分が存在していることと同じのような思いがしました。
バラバラのものが一つにつながり一個のハートをかたちづくっています。
私も同じ。良いもの悪いもの、完全なもの不完全なもの、確かなもの不確かなもの、違う色々なものが混在して合わさって一つになって「私」をかたちづくっています。
このハートはこれで完璧です。
このままでいいのです。
ちょっとイモっぽくて、ちょっとダサくて、いびつだけど、このままでいいのです。
私もこのままの私でいいんだな。
私は私のままでいいんだな。
ハートのモチーフが私にそう教えてくれました。
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