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障がい者施設と美術館のコラボによるSDGsなフラッグバッグが誕生!発売へ!

2024年11月23日、生活介護事業所「まどか西中田」と塩竈市杉村惇美術館のコラボによる商品が発売されました。街頭フラッグと呼ばれる広報用の「のぼり旗」などをバッグとして再利用するもので、同美術館の式典でフラッグバッグ(flag bag)という名称で紹介されました。単なるリサイクルではなくアートなデザイン性を持ち、美術館で販売することで価値をつけてお客様に提供することから「アップサイクルバッグ」(upcycled bag)と呼んでいます。この取り組みは河北新報でも取り上げられました。

生活介護事業所で生産活動に取り組む意義

生活介護事業所は技能訓練と工賃を稼ぐことを目標としている就労継続支援とは異なります。一般的に重い障害がいがあり、常に介護を必要とする方に日常活動の支援や創作活動などを提供しています。働くことが目的ではなく、生活面での自立や身体機能の維持向上を目指して取り組んでいる事業所が多いのが特徴です。

生活介護事業所「まどか西中田」ではあえて「工賃を稼げる生活介護事業所」というコンセプトを掲げて生産活動に取り組んでいます。仕事を通じ目標とやりがいを持つ事が利用者の皆さんの生活や身体を健やかにしていく上で大事だと考えているからです。昨年から野菜販売など新しい仕事を作ってきました(note別記事もご覧ください)。利用者の中には裁縫などの職業訓練を受けてきた方もいて、その力を発揮できる仕事を探していた折に塩竈市杉村惇美術館の統括をされている高田さんとの出会いがあり、新たな事業をスタートすることにしました。

「創作活動」から「生産活動」へ ー求められる品質ー

まどか西中田では「創作活動」(レクリエーション)として絵画やフラワーアレンジメントなどを行うことがあります。創作活動はそれぞれが楽しく自由にできるのですが、「生産活動」はお客様にお金を出してもよいと感じていただけるような価値が求められます。最近では100円ショップなどで大量生産された安価な商品が普及しており、手作りで時間をかけて作る商品に価値を感じて頂けるのか不安がありました。福祉事業所だからといって質の悪い商品を「お情け」で買っていただくのではなく、多くの人が欲しいと思う持続的な事業にするためには相応の「品質」が必要となります。

塩竈市杉村惇美術館の取り組み

塩竈市杉村惇美術館は昭和25年(1950年)に建設された公民館別館を改装して平成26年(2014年)に開館した新しい美術館です。美しい大講堂があり、塩竈市の有形文化財に指定されています。「地域の才能を国内外へ発信する文化発信地」を目指した活動を行っており、美術展示のほか、こどもたちのイベントや、ワークショップなどを行っています。

2023年の10月に障がいがあっても先進技術のサポートでの自己表現をテーマにしたワークショップ「Art for Well-being 表現とケアとテクノロジー」が美術館で開催され、高田さんが障がいのある方にアートの側面で支援されていることを知りました。その後、当法人の余暇活動にご助力を頂いた際に、今回のアップサイクルバッグのお話がありました。「美術館に大切に貯蔵されていた街頭フラッグ(のぼり旗)を使ってバッグを作れないか?」というアイデアに可能性を感じました。私たちの事業所に裁縫が得意な職員、そして何よりやりがいにしたい利用者の方の存在が今回の挑戦に繋がりました。

事業所での創作活動

高品質×高デザインのバッグを作るための投資と協力

フラッグバッグは元々野外に掲示され、雨風に耐えられるの素材であり、防水性も耐久性にも優れています。ただし、分厚く生地全体が滑りやすく、手縫いで綺麗に縫製をするのは非常に難易度が高くありました。
そこで最新のロックミシンを導入しました。縫い目がほつれないようにする「かがり縫い」を驚くほど綺麗にする事ができ、長く使って頂ける丈夫なバッグを作る事ができるようになりました。また、職員に加え、利用者の保護者の方も事業を手伝ってくださることになり、高田さんとも相談して作業方法を検討していきました。こうした投資と協力により少しずつ品質を磨き、「自信をもって商品として出せるフラッグバッグ」を目指していきました。

商品の検討会議の様子(右は杉村惇美術館の高田さん)

職員ではなく利用者が担ってこその「生産活動」

もちろん、すべての工程を職員が行うのでは意味がありません。スタートの時点では、利用者ができる作業は限られていますが、まずは職員が作業手順を設計し、少しずつ利用者の皆さんにお伝えし、任せていくことになります。まずは、フラッグにあるハトメ(紐を通す穴を金属製リングで補強した部分)など不要な部分の糸を解く作業から始めていきました。今後、型取り、裁断、ミシンによる縫製など作業を分解していき、少しずつでも利用者のみなさんが対応できる部分を増やしていけるように計画をしています。

フラッグバッグの製造

フラッグバッグでSDGsのコンセプトを発信する

事業所の利用者にとっては生産活動を行い、やりがいを創出することに、なります。また、街頭フラッグを再利用したバッグはSDGsのコンセプトを伝える上でも役に立ちます。
本取り組みを手探りで進めてきましたが重い障がいのある利用者の方が生産活動を行い、やりがいに繋げていくには未だ多くの課題が残されています。それでも、このチャレンジに対して多くの関係者の方が力を貸してくださっています。
本件に関わらず社会福祉の取り組みは地域の関係者の支えによって成り立っています。より多くの方に存在を知っていただき、地域による福祉の力を高められるように今後も取り組んでいきます。

パッケージをして美術館で販売された商品


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