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足りないピースを埋めるのは組織を超えるチームづくりー地域福祉ラボの創設ー

理事長に着任してから1年が経過した頃、直近に取り組むべき課題と将来に向けて準備をするべき課題の両方が少しずつ見えてきました。特に後者に取り組むためには、将来の福祉を見据えた新しい組織の立ち上げが必要となると確信を持ちました。今回はこのテーマについてお話します。

日常の事業運営をする中で強く感じたことは、福祉事業の一つひとつは様々な関係者(ステークホルダー)によって成り立っているということです。以下は私がよく使用しているネットワーク図です(下図)。実際に一人の利用者の支援には多くの方が関わっています。

図:ネットワーク図

「卒業後の相談先がない」という問題

これから卒業をして就労を考えている支援学校の生徒や保護者の方々はどのようなことに悩み、我々事業者に何を期待されているのかを知りたいと考え、支援学校の先生方に教えを請いに伺っています。支援学校の先生は毎年多くの方々を受け入れ、相談をしているため、環境の変化や世代による違いなども感じられることがあり、色々な気づきをいただいています。
例えば、知的障がいのあるAさんは特別支援学校(高等部2年生)で色々な職業訓練を受けています。卒業後の就労先を探すことになり進路指導の先生、保護者の方と一緒に将来について検討を始めました。就労先を決める際には、通いやすさや自身がやりたい(できそうな)作業を提供している事業所をいくつか選び、実習を通じて進路を決定します。ところが、卒業後に自身で計画を立てること(セルフプラン)になると、どのようなサービスをどんな事業者が提供しているのか、どうやって選べばよいのか…という判断が難しいケースもでてきます。
一般的には、相談事業所を利用し、ご本人のお困りごとを整理し、サービスと今後に向けた計画づくりに伴走してもらうことが可能です。当法人でも相談事業所を設置し、相談支援員が多くの利用者のサポートをしています。しかし、相談事業所の定員がオーバーしていることも多く、今後に向けて不安を感じている方も多いという話を伺い、改めて、相談事業の重要性を感じました。

仙萩の杜の相談事業所

新たな課題に対応する新組織「地域福祉ラボ」

さらに、色々な案件にかかわる中で、既存の福祉環境や事業者が単独では解決できない課題があることに気づきました。ニーズの変化に対応し、将来の福祉事業の在り方を考えるためには、これまで以上に外部に目を向けて多くの関係者と対話する必要があると考えました。
そこで、2024年の4月に新しい組織を創設しました。自分たちの力だけでできることには限りがあること。地域には多様な能力を持つ人や組織があり、力を合わせることで大きな力となります。また、多様なバックグラウンドを持つ人々と対話することは社会から期待されていることや、他の業界で行われている運営のヒントなど多くを学ぶ機会になります。もちろん、慢性的な人員不足の中で日常に業務に追われている中で短期的な収益に繋がらない新しい仕事を増やすことは容易ではありません。それでも、将来に向けて大事なミッションであると考え、相談事業所に所属している2名の職員に兼務でお願いすることにしました。

多くの関係者と会話することが最初のステップ

まず最初のアクションは私自身が「コミュニティソーシャルワーク(CSW)プログラム」に自らが参加することでした。東北学院大学でコミュニティソーシャルワーカー育成のために設置された社会人向けの講座で、福祉テーマに関係する大学の先生や実務家がそれぞれの視点で社会課題や取り組みを学びます。講義の後で先生方にお声がけをして、大学の研究室や事業所に地域福祉ラボのメンバーとお伺いしています。
他の事業を見学することで新たなアイデアを頂くことが多くあります。また、お互いの思いや研究の話をするうち、共同でプロジェクトをできないかという話になることもあります。このようなご縁を大事にしていきたいと考えています。

冒頭にもお伝えしましたが、福祉事業の一つひとつは様々な関係者によって成り立っています。力を合わせることでこれまでになかった価値ある取り組みに繋がる可能性があります。社会の変化を捉え、福祉事業者の側からイノベーションを提案していける組織をつくり、それを担う人材の育成をしたいと考えています。その第一歩が「地域福祉ラボ」であると考えています。今後も活動については発信をしていければと思います。

地域福祉ラボのメンバー


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