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体験記 〜摂食障害の果てに〜⑨
救命センターへ
二度も死にかけたので、救命センターに部屋を移されました。『どんなことがあってもすぐ対応できるように』ナースステーションのすぐ目の前の部屋でした。看護師さんがすぐ来てくれるのは心強いですが、コロナの隔離病棟で親切に世話をしてくれた看護師さんとお別れするのは辛かったです。
看護師さん達にお世話になって、気付いた事があります。
看護師さんにも二つのタイプがあって、患者に寄り添った対応をしてくれる人と、ただ『仕事をしている』だけの人がありました。お金を稼ぐ為に、決められたことを決められた時間にこなすだけの人は、患者に対して手加減がありません。例えば、採血の時、ゴムバンドを腕に巻くのですが、腕がちぎれるほどキツく巻き、悲鳴を上げても決して緩めてはくれません。
対して、患者に必要な事を肌で感じて、自発的に行う人は、看護師として『機能している』と感じました。例えば、食事を患者のペースに合わせ、時間をかけて食べさせてくれたりします。患者に安心する言葉をかけてくれたり、「大丈夫ですよ。」と、笑いかけてくれたりもしてくれました。私はその笑顔と看護にどれだけ感謝した事でしょう。神様だと思いました。苦し過ぎて、言葉を発する事ができなくなっていたので、両手を合わせ、目を閉じて、看護師さんを拝みました。全ての看護師さんがそうでないのは、残念です。
救命センターは、二重ドアの薄暗い個室でした。窓の気配すらしませんでした。私の側には常に心電図と酸素濃度と呼吸数の計測値を映し出す機械がありました。コロナの隔離病棟にいた時からです。左手の人差し指には酸素濃度を計測する器械が取り付けられ、肺に繋がったチューブ(ドレーン)が左胸の横から二本、肺の空気を抜く機械に繋がっていました。尿管は相変わらずつなげられたままです。
キビキビした年配の看護師さんが、救命センターの初日の担当でした。
「床ずれができないよう、しっかり体の向きを変えていきましょう。」
と、大きなクッションの様な枕を二つ持ってきて、横を向いて寝ている私の体の下に入れました。私は、
(床ずれなんて、起きないだろう。寝返りを打てばいいのだから。こんな大きな物は邪魔。)
と、思いました。続いて、看護師さんは、
「好きな音楽はありますか? 流してあげましょう。」
と、親切に言って下さったのですが、聞きたい音楽なんてありませんでした。しーん、と静かにしていてもらいたいのですが、パソコンの前で「何でもどうぞ。」と、にこやかに言われると、「ない。」と言いづらくなって、「水の流れる音。」と言ってみました。
「ああ、自然の音ね。なるほど、そういうのが好きなんですか。」
と、パソコンからせせらぎの音を流してくれました。けれど、頭の中を掻き回される感じがして、一秒も聞いていられなくなったので、止めてもらいました。