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主に文語体で歌を詠んでいます。 現代歌壇に嫌われそうな、雅語、枕詞、掛詞、必要とあれば…

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主に文語体で歌を詠んでいます。 現代歌壇に嫌われそうな、雅語、枕詞、掛詞、必要とあれば臆せず使います。

最近の記事

萩の歌 二首

秋の七草のひとつ、萩を詠んだ和歌を二首ほど紹介してみたいと思います。 ①秋の野に 咲ける秋萩秋風に     靡ける上に 秋の露置けり      (大伴家持  万葉集 巻八 1597) 意味  『秋の野に咲く秋萩の花、秋風に靡く中、その花に秋の露をのせている』 「秋」の音を4回使いリズム感のある歌ですね。 私的にもとても好きな歌で、この韻律を真似た短歌をよく作ります。 この歌の素晴らしいところは『秋の野』から『秋萩』そこへ吹く『秋風』ヘ。 更に花の上にのる『秋の露』ヘとまる

    • 『みだれ髪』考察『臙脂紫』編

      『俵万智訳 みだれ髪』は与謝野晶子の歌集『みだれ髪』に収められた本歌に対して現代語で解釈した(チョコレート語と言うそうです) が添えられているのですが、俵さんのあとがきに【『みだれ髪』には事実曖昧で難解な歌が多い。(後略)『鑑賞日本現代文学32 現代短歌』より】と載せているとおり読んでみると「?」の連続でした。 私も文語体で歌を作る事を趣味としており、解り難い語彙は辞書をひけば簡単に理解できるだろうと思ったのですが甘かったです。 それで本を丸々パソコンに書写し、文節、文法を調

      • 歌と随想 5

        記念日の名前に迷ふ   老い初めて昔の君の歌歌読む日 本当は新刊小説を買うつもりで出掛けた書店。 俵万智さんの書籍フェアを開催していました。 俵さんは私が指示する数少ない現代語歌人の一人。 早速第一歌集の「サラダ記念日」と与謝野晶子の「みだれ髪」を訳した歌集を購入しました。 「サラダ記念日」は収められている歌のいくつかは知っているのですが丸々一冊を読むのは初めて。 「みだれ髪」の訳は初版当初、是非読みたいとは思っていたのですが読みのがしていた一冊でした。 売り場に並べてあ

        • 歌と随想 4

          来世ではしもべと成るやみほとけの       菩提樹の花糸に止む蜘蛛 福島市佐原地区、吾妻連峰山麓に慈徳寺という寺があり、その境内に咲き散る菩提樹の花を歌にしてみました。 もう5年も前の光景です。 次々に散る菩提樹の花の下には蜘蛛の糸が張り巡らしてあり、花のいくつかを留めておりました。 その蜘蛛の巣の下では散った花の蜜を求めてか、アリ達が群がっていてなんとなく地獄でうごめく罪人を連想させました。 当時はその情景を見て芥川龍之介の小説を連想して 「菩提樹の花蜘蛛の巣に編み込み

        萩の歌 二首

          【乃東枯 夏至 初候 一】

          十薬の 群れの一縷に 射す一縷 杉の間溢す たまゆらの瑠璃 じゅうやく の むれ の いちる に さす いちる すぎ の ま こぼす たまゆら の るり 杉林の中、群生するドクダミの花に射し込んだ朝日を、。

          【乃東枯 夏至 初候 一】

          歌と随想 3

          下北沢酒場の灯影は琥珀色     悔ゆこと一夜語りし頃の 『酒は悲哀の階段を軋ませて  絶望の屋根裏に明るく洋墱を灯した  歎息が起き上がって 微笑のヴィオラを弾きはじめた  泪が黙ってその音を聴いていた』 ふと目にとまった某総合病院のロビーに飾られた額の『詩』。 柔らかなタッチの毛筆で描かれた(書くというよりも、。)文章になぜか惹かれてしまいました。 病院に『酒の詩』が掲げられているというのも苦笑い的な違和感がありましたが、毛筆の書体か詩の雰囲気を醸し出しており、その世

          歌と随想 3

          この一年で読んだ本とか、。

          この一年、隙間時間を利用して読んだ本をまとめてみました。 ①『短歌ください』海の家でオセロ篇     穂村弘 KADOKAWA (途中放棄) 「ダ・ヴィンチ」に掲載された募集短歌を単行本にしたものです。幅広い年代の短歌が批評付きで掲載されて「今時」を知るには良い歌集かも知れませんが、、自分的には飽きてしまい2/3程読んだ所で止めてしまいました。 ②『恋の短歌コレクション1000』    日本短歌総研 飯塚書店 (完読) 古典和歌から現代短歌までの恋歌1000首をテーマ別(

          この一年で読んだ本とか、。

          歌と随想 2

          あの頃の塵ほの舞ひぬ窓の陽に    表紙の夕陽褪せゆく本の いつもではないが、ふと読みたくなり書棚から取り出す本が幾冊かあります。 『生きいそぎの青春』(高沢晧司 講談社)もそのうちの一冊。 もう記入した事すら忘れてしまったのですが、 (S59.8 青山書店)のメモが本の最終ページに残っています。 ちょうど40年前の書籍(初版が同年4月)。 外苑前の職場に勤めていた頃購入したと思うのですが記憶がなんとなく曖昧。 ただ、書かれている内容に当時衝撃を受けたのを覚えています。 当

          歌と随想 2

          歌と随想

          あめつちに召さるる雪の輝きを謳ふ大巓(だいてん)みちのくの五月雨が上がり快晴の日の五月、郡山市喜久田町の田園地帯から見た吾妻連峰を、。 福島市に住んでいた頃はトレッキングが趣味でよく親しんだ山でした。 郡山市北部の高台からは安達太良山山塊和尚山の左裾の奥に穏やかな山容を控えめに挑む事ができます。 自分のトレイルは常に単独行動で一般のハイカーがいない深い森や暗い沢筋、鬱蒼とした藪径を好むスタイルでした。 遭難のリスクを考えると「そろそろ止めた方が良いのでは?」と五年ぐらい前か

          歌と随想

          『アボカドの種』雑感 九首

          それぞれの金色詠めば懐古趣味     あなたは晶子私は八一 時を経て甘さのわけも変はりけり     水蜜桃と福島の桃 言の葉はつむがれ続け天に舞ふ     弟上娘子の想ふ火の穂も 君もまた同じ病か    点滴の針の感触それぞれに詠む 同年代二人に一人の確率の     独りになりて有名無名 シャルドネも熟成せねば旨からず     グラス回せば涙が語る アボカドの果肉のごとき文節よ    嗚呼もどかしきわが文語体 アボカドの種の形にまろまりぬ    寒き夜半読む歌集

          『アボカドの種』雑感 九首

          【閉塞成冬 大雪 初候 一】

          薮百舌鳥の 哭のみし泣かゆ 朝夕に いたもすなべなみ 我の声かも なんとなくの雑感。 意味が通らなければ、それでも良いような軽薄な歌です。 本歌 『君に恋ひいたもすなべなみ葦鶴の哭のみし泣かゆ朝夕にして』万葉集巻三456  余明軍 (挽歌) #短歌

          【閉塞成冬 大雪 初候 一】

          【街とその不確かな壁】

          【街とその不確かな壁】

          【橘始黄 小雪 末候 一】

          「五百年を 戦ひ滅ばぬ 星なく・・」 と 説きて燃ゆらむ ペテルギウスよ 「いほとせ を たたかひ ほろばぬ ほし なく」 と ときて もゆ らむ ペテルギウス よ 冬晴れの夜  オリオン座を見上げながら、。 ペテルギウスの光が地球まで届くのに五百年だったか? また、仏教では五百年が盛衰の周期としているそうです。 #短歌 #短歌フォト #オリオン座 #ベテルギウス

          【橘始黄 小雪 末候 一】

          【朔風払葉 小雪 次候 二】

          ルリッルリッと 鉛の空に 色添へて 小鳥ちりばむ 枯れ葺く野辺も 冬枯れに遊ぶカワヒラという小鳥を、。 鳴き声は人により表現が違うと思いますが、。 結句の「も」は詠嘆を表す終助詞です。 #短歌 #短歌フォト

          【朔風払葉 小雪 次候 二】

          【朔風払葉 小雪 次候 二】

          枯るる山 透かし彩る 虹越しに 今だ見ゆかも 昔の夢を 冬枯れの山肌に架かる虹 #短歌 #短歌フォト

          【朔風払葉 小雪 次候 二】

          【虹蔵不見 小雪 初候 三】

          切れ細む いなりの眼 かき積みし 落ち葉に射す陽 まぼる静けさ きれ ほそむ いなり の まなこ かき つみし をちば に さす ひ まぼる しづけさ お稲荷様の祠の前にかき集められた落ち葉を。

          【虹蔵不見 小雪 初候 三】