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北京留学日記 其の七

ある日、日本人向けラジオ放送を聴いていると、茶道裏千家中国支部で師範をされている先生がお話していらっしゃいました。
当時の裏千家家元千宗室氏は世界中に茶道を広めるべく、各国・地域に支部を設置されていました。その中国支部です。
半畳の畳と着物、道具一式を担いで飛行機で中国国内を飛び回っているお話をされていました。最後にイベントにボランティアして頂くことを条件にどなたでもお稽古に来て下さい、とのお言葉。
実は私はこう見えても(いや、姿は見えないし)裏千家免許皆伝だったのです。上海でも野点籠(お茶のピクニック用セット)を持ち込んで、人に振舞っておりました。なので、ぜひ参加したいと考えました。
先生とコンタクトを取り、お稽古に伺う運びとなりました。
お稽古日にはバスを3回乗り継いで、日航ホテルにあるお稽古場に通いました。
しかし!行ってみるとそこは駐在員の奥方様ばかりで私は場違いでした。
でも、先生は一留学生の私も受け入れて下さいました。
私もここでは入門からお稽古するとはいえ、一応免許皆伝なのでそんなに卑屈になることもなかろうと思い、参加していました。
部長クラスの奥方様は、運転手付きのお車で、課長クラスの奥方様はラグジュアリーなタクシーで、他の方々は日航ホテル内か近くのホテル住まいなので徒歩でお越しでした。
毎回床の間に飾るお花を持参するお花当番というのがあって、皆様は日航ホテルのそばのお花屋さんでお求めになったお花をお持ちでしたが、ビンボー学生の私は学内の庭に自生している槿などを持参していました。
大きなお茶会の際はみんなで持ち寄るのですが、その素朴さがお茶の心に合うのか私の持参したお花も採用して頂けてました。

ホテルでのお茶会のお水屋



ドラマ『大地の子』のお父さん役の俳優、朱旭氏が招かれているイベントお茶会もありました。
海外ならではの大変貴重な体験をさせて頂きました。

中央が朱旭氏、隣のボクは主人公の子役さん


先生は外国語大学の寮にお住まいで、私たちのように門限あり、シャワーの時間に制限あり、のなかなかお仕事の割に不自由な生活を送っておられました。と言うのも、先生の前任者も若い女性で、駐在員用のマンションに住んでおられたのですが、そこの方と不倫関係に陥り、強制帰国させられたのでした。その同じ轍を踏むまいと、私の師事する先生からは強制的に寮住まいになったのだそうです。


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