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【ドラマ】『終りに見た街』を観た※ネタバレあり

主演が大泉洋で、脚本が宮藤官九郎ということしか知らない状態で見た。
作業をしながら流し観ていたんだが、次第に画面の方へ意識が持って行かれてしまった・・・。
今回はそれについて書きたい。作品詳細は以下である。
https://www.tv-asahi.co.jp/owarinimitamachi/

【作品について】


戦時中の過去にタイムスリップしてしまう、という設定はけっこうある。
そんな主人公(脚本家)たちの目的はもっぱら「現代の平和な時代に戻れるか否か」である。
この作品も例外なくその設定と目的で話が進んでいくのだろう・・・

・・・なんてなんとなく適当に観ていたのが途中から変わる。
だって残り20分になっても主人公たちが現代に帰れる兆しがないじゃないか!
え、どういうこと・・・?これからどんでん返しが来るとかそういうやつ・・・?
しかし、どんどん状況は悪化していくばかりである。
主人公の子供たちが戦中の思想に染まり切って大人たちと揉め、そこへ予期せぬ空襲が起こる。
最悪じゃないか、どうなっちゃうんだよ・・・。

と、ここで過去に飛ばされてから幾度も見かけた顔を目にする。
主人公と一緒になって「そうだ!きっとあいつがタイムスリップの黒幕だ!これで現代に帰れる!」と思ったのも束の間、突如起こった爆発に巻き込まれてしまう・・・。

え・・・なんや今の・・・どういうこと・・・?(二回目)
不運にも空襲にやられて死んでしまったということなのか?
もう二度と現代へは帰れなくなってしまったというバッドエンドなのか?
だが、主人公は生きていた。
全身が黒墨になり、片腕を失ったけれど、まだ生きている。
そうだ、希望を失わなければまだ生きて帰れるはずだ!
主人公は、近くにいたもはや虫の息の男に尋ねる。
「今って、昭和20年の、8月・・・」
「・・・に、せん・・・」

???????????????

にせん・・・って、2000年代・・・ってコト!?
主人公の足元に落ちているスマホの通知だけが、ここが現代であることの証拠である。
なぜなら、住んでいた二子玉川の風景はもはや崩壊しているからだ。
主人公の意識がなくなる中、最後に目にしたのは幼くなった母とその想い人であった・・・。

【感想と考察】

!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!

予想外の結末である。
正直、予想していた結末は、
「黒幕とバトルする→勝利して無事に戻れる→主人公が戦争ものの脚本を書く→「リアルで面白い」と大成功を収める→最終的に家族みんなで喜ぶ」
みたいな流れになるかと思っていた。
元の世界に戻るという目的は果たせたのかもしれないが、「平和な」元の世界はすでに無くなっていた。
「終りに見た街」って、現代でも戦争を繰り返してしまった世界線の末路を表していたのか?
これをよくわからないと一蹴することもできるだろうが、なんというか、「起こった事柄を物語という枠で回収しようとしない」ことに私は敬意を感じた。
主人公の娘が劇中で「戦争に脚本家なんていらないんだよ!」みたいな台詞を、脚本家である主人公に向かって言ったことがポイントだと思う。
戦争は怖い、戦争は大変、それを物語にしようとしても、所詮物語の域を超えることはない。
とりあえず戦争ものを書けば感動させられるでしょ、と戦争が物語のジャンルの一つになってしまっている。
そんな現代の日本に生きる自分に対して、「感動作品として消費することが起こった現実への誠意ある理解と言えるのかね、というか作品を観ただけで理解して気になってるだけなんじゃないの?」と頬をつねられている気分になった。

はあ・・・何気なく観たのにとんでもない大ダメージである。
私は現在就職活動をしてる身であるが、世の中が大変なことになったら「ワークライフバランスが〜」なんて言いながら仕事を選んでいる場合ではなく、強制的に毎日毎日やりたくもないお裁縫をさせられるだろう。
労働といえば、作中にこんな登場人物がいた。
現代にいたころはやりたいことが見出せずに無気力で生きていたが、「力があれば評価される」という戦中のシンプルな考え方に共感を示し、「多様性なんて糞食らえだ!」と言うようにまでなった若者。
確かに、「個」で迷走するよりも、集団で決まったことをする方が良いという人もいる。
「お国のため」という崇高な目標に向かって日々汗水垂らして努力することに己の命の輝きを感じられるという人もいるに違いない。
それも含めて多様性であるが、誰か(ここでいうなれば敵国の軍人など)の死を喜んでまで労働に勤しむのは多様性の前に人間性として正しいのだろうか。
いや、そもそも争いの中では人間性などという言葉も無くなってしまうのだろうか。
これから日本が戦争に巻き込まれるとして、自分は人間性を保っていられるのだろうか。
このままでは就活の軸に「戦争になっても生きていける職」が食い込んでしまう。
・・・というか、その可能性がある将来というのは案外そう遠くないのかもしれない。


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