好きな人に振られたので、催眠術の力を借りることにした。①
「ごめん、別れよ」
大学三回生の夏。僕は付き合っていた彼女に振られた。
「普通の友達に戻ろうよ」
「な、なんで」
心当たりがなかった。だって昨日も、僕達は男女の仲、恋人の仲だったのに。いまでもアパートに帰ったら荒れたベッドがそのままにある。
「まぁ、そう言うことだからさ」
どう言うことかさっぱりだ。
しかし、とにかく、僕は振られたのだ。
全国の振られた男がその後どういう行動に出るのか、誰か統計を取ってほしい。
きっとアルバイトを辞めるっていう男もいるだろう。生活資金が無くなるという事は死活問題だが、振られた彼女と同じ場所で働く事は出来ない。
辞めて数日が経った。相変わらずダラダラ過ごしている。友人のYは振られた僕を面白がり、気遣い、飲みに誘ったり外に連れ出したりした。
引きずってはいるし、まだ夢に出る程度には彼女は僕の中で大きかったとは思うけど、引き篭もる程ではない。
まぁ、そんな恋だった。
見栄を張る性格な僕の貯金残高は残りわずかだが、新たにバイト先を探そうとする気力も無い。
しかしこのままでは生きていけない。
スマホで「やる気が出る方法」と検索をかける。
【誰でも簡単に---】
【一瞬でやる気が出る言葉---】
【今直ぐにでも試したい---】
うーん。どれもこれもパッとしない。
その中で、心理というワードが飛び込んできた。
「‥これだ」
僕はYouTub○で『催眠術 暗示』と検索をかける。
昔、テレビで催眠術の特番がやっていた。暗示をかけると嫌いな食べ物が好きになるとかそんな内容。そこから少し興味を持った。
体験ムービーという動画がヒットする。
僕はベッドに座り、それを見た。
‥‥‥。
まぁ、人それぞれだよね。
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そんな中、バイト先の先輩から連絡が掛かってきた。
『久しぶり!何でバイト辞めたの!』
4つ年上の先輩はとても明るく気さくな人で、バイト先ではよくお世話になった。
僕は諸事情で、と返すと『アイちゃんでしょ』と返ってくる。
何で。あぁ、言ったのか。
すぐに追いメッセージが来る。
『アイちゃんも辞めたよ』
え。
『とにかく、一回会おうよ』
こうして、僕は先輩と会うことになった。僕の家で。
連絡が来てから二時間後、インターホンが鳴った。
先輩を確認した僕はどうぞと招く。
「お邪魔しまーす。おぉ、中々綺麗じゃない」
久しぶりに見る先輩は髪型が変わっていた。ロングからショートボブに。ピンクのタイトスカートに白のコートを着た先輩はやはりお洒落で、その先輩とは似つかわしく無いコンビニ袋を手にぶら下げていた。
「何ですか、それ」
「食べてないんじゃないかって思ってねぇ」
ニヤニヤしながら先輩は僕を見てくる。
「食べてますよ」
「あ、カップ麺ばっかじゃん。うわ、しかも同じやつ。飲み物も、エナジードリンクばっかり。身体壊すよ」
先輩はゴミ袋に入ってあった物を見て呆れたように言った。
「駄目だよ、ヤケになっちゃ」
「いや、これは関係なくて。結構、前からこうです」
「尚更駄目じゃん。それは振られるかもねぇ」
直球のキツイ言葉に「う」と声が漏れる。
「でも、これが原因じゃないからねぇ」
「え、何です?」
「まぁまぁ、今日は飲もう。コンビニ弁当も買ってきたよ」
「先輩、それも身体に悪いです」
「ウチの売上に貢献しないと、店長うるさいのよ。ただでさえ二人も辞められて今大変なんだから」
そう言われると何とも言えない。
先輩はコートを脱ぎ、キョロキョロ辺りを見渡してからハンガーを見つけそれをかける。
僕は先輩の買ってきた物をせっせと並べる。
先輩が座る位置に座布団を置く。「気がきくね」とニッコリ笑う。この笑顔を目当てに客も何人か来ている。
コートを脱いだ先輩は白のニットを来ており、服の上からでも分かるふくよかな‥いやいや何を言ってるのか。
「それじゃあ、お疲れ様ー」
「そこは乾杯じゃないんですか」
グサリとくる言葉を何度も投げかけてくる先輩。
明るくて気さくな先輩と、まさかこの後、あんな事になるとは。
②へ続く。
※画像は生成AIです。あくまでもイメージ。フィルターが掛かった僕にはこう見える。
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