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6歳児とモネ風呂に浸かってきました【モネ 睡蓮のとき】
東京・上野の国立西洋美術館で「モネ 睡蓮のとき」を鑑賞してきました。
頭からお尻までモネ。それも川、橋、そしてジヴェルニーの庭や池を舞台にした、茫漠として揺れ動く水回り、草花系で統一。
あざといと思いつつ、どっぷりモネ、睡蓮風呂に浸かってきました。
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大変ありがたいことに、未就学児を連れた人が優先的に入れる「ファストトラック」がありました。知らずにギリギリ未就学児の長女を連れてきたため、並んでいる方々に恐縮しつつ、優先入場させて頂きました。
これまでに、同美術館で開催された「ここは未来のアーティスト…」展や、東京都美術館のキリコ展、DIC川村記念美術館などで、注意されたり周りをハラハラさせたりしながらも、地道に鑑賞経験を積み重ねてきた長女。
なかなか熱心な鑑賞態度で頑張ってくれました。
と言っても、すごい人垣。110センチしかない長女には人頭の合間に、色彩の乱舞がチラチラ見えるだけです。そこで全体の半分以上は抱っこで過ごしました。いつもは妹に抱っこを譲っている長女は、ここぞとばかりに細い足をがっちりと巻き付けます。
今回はさらに、飽き防止アイテムとして単眼鏡を持参。すぐ使いたがる長女に「まず自分の目で見よう」と言い聞かせます。
さらに「次は心の目で」とか、「次はモネじいさんの目で」などと、自分でもよく分からない注文を付けつつ、周囲の邪魔にならなそうなポジションと、長女が飽きそうになるタイミングを見計らってサッと単眼鏡を渡します。
オランジェリー美術館を彷彿とさせる、写真撮影可のスペースでは、スマホも渡しました。お気に入りの一枚を見つけて、人がいない瞬間、ブレないように息を止めてパシャリ。
自分が絵の前でポーズするのはマナー違反であることも教えます(←海外でやらかして監視員にこっぴどく怒られた経験者)。
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6歳撮影
親がじっくり鑑賞している間に、ソファに1人で座らせて、鉛筆でスケッチさせることも考えたのですが、少なくとも未就学児のうちは親がそばを離れてはいけません。小学生になったら、ぜひ、美術館でのスケッチを体験させてあげたいものです。
子連れだと、自分はやはり、絵に完全に没入はできません。解説パネルやキャプションをじっくり読むこともできません。
前はそのことに凄く苛立ち、子供や美術館にブツブツ恨み言を言ったりしていました。
けれど最近やっと、子連れで鑑賞することのメリットのほうが大きく感じ始めたのです。
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というのは、いかにこの大人の娯楽と化した美術展という世界を、子供にも楽しんでもらえるかを、親なりに懸命に考えるからです。
子供の視点や脳内をフルに想像し、自分も目の位置を下げたり、「何に見える?」「どれが一番好き?」だなんて聞いてみたりします。
しつこいくらいに質問や話題を投げかけることで、意図せずして流行りの「対話型鑑賞」チックになっているのです。
なんで、同じセーヌ川の同じ場所を描いているのに、こっちはモヤがかかったようで、そっちはオレンジがかっているんだろう?
子供に問いかけながら、後者は夕暮れかと思ってキャプションを見てみると、どちらも朝だというのでびっくり。同じ朝でも、さらに時間帯や日で、あるいはその時のモネの心象によって、こんなにも変わるのでしょうか。
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「この池は、どこからが水の上で、どこからが水なんだろう?」
この話題だけで6歳児と1分は会話を続けられます。
黄色いアイリス(1924-1925年頃)は、下から見上げた画面になっている珍しい構図。モネじいさんはアリになっちゃったのかな?草原に寝そべって描いたのかな。けっこうお年だったと思うけど…
そんな他愛もない話をした後で、制作年と年表を照らし合わせて、また驚く。晩年どころか最晩年の作ではありませんか。モネじいさん、空想で描いた?実験的なことをしてみようと思った?それとも高い空の向こうに、何かを思い描いた?
長女との対話をきっかけに、想像が広がります。
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視力の危機に瀕していた1920年前後の作品は、言うなればメチャクチャです。ジャクソン・ポロックなど20世紀の抽象画を知っている現代の私たちの目には、それすら具象的で美しく、凄絶な執念に感嘆せざるを得ません。
これら「メチャクチャ」な時期のモネの絵は、長女と、家に持ち帰った図録で見た2歳児にも好評でした。見るなり「きれーい」「行きたーい」と。
目をくぎ付けにさせる色彩の配置。うねうねぼつぼつとして雑なのに、強靭な精神力が伝わってくる筆致が、そう言わしめるのでしょうか。
子連れ対話鑑賞with飽き防止アイテム
+図録購入(重いけど)→家で見返す…
試行錯誤を経て、子連れでも満足度の高い鑑賞方法が自分の中で確立されてきました。よし!
と、鼻息荒くしつつ…
余裕があればもう一回、今度は1人で浸かりに行きたい…幸いにもまだ会期末まで時間があるし。中毒性のあるモネ風呂なのでした。
【2025年2月11日まで国立西洋美術館にて開催】
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スーパースター・モネじいさん