福島屋@滑川温泉
紅葉を眺めながらの温泉って、良いですよね。当初は、「やってられない。とにかく、温泉へ逃避!」のために滑川温泉の福島屋を予約したのでした。できるだけ山奥で、源泉かけ流しが良いなと。
その後に、あれ?東北ならば紅葉のベストな時期かも、と期待が高まったのでした。
車を持たず、公共交通機関で行くとなると、選択肢は一つだけ。奥羽本線の時刻表に合わせるしかありません。ありがたいことに、最寄り駅の峠駅まで宿の車が迎えに来てくれます。(予約時に要連絡)
駅前は何もないのです。荒れた細い道は、いきなりカーブ、いや急坂を登るためのつづら折りです。崖ギリギリの細い道はボコボコで車はガタガタ揺れます。「車はいいんだけど(いや、かなり年季入ってる)、道が悪くて」と、土地の訛りの運転手さん。ジョークなのか、ちょっと笑えなかった…
時々、対向車が来ます。こわっ。
どちらかが停まって、ようやくやり過ごしました。雪が降ると通行止めになるので、旅館の営業は11月下旬までとなり、春まで休業となるそうです。
少し慣れてくると、山の木々の美しさに気づきました。わぁ、きれい。だけど、掴まっていないと不安なので、写真は撮れず。
そんなこんなで、20分程で到着しました。
やった!嬉しい、イメージ通り。
部屋に案内されました。スッキリとして、上等です。(WiFiもあります)
なんと言っても、窓からの眺めが素晴らしいのです。
荷物を置いて、少し探検します。玄関は一つですが、建物が二手に分かれていました。
外に出ると、小さな広場になっていました。公園のような木のテーブルとベンチで休憩ができます。
そして、屋根付きの場所にバーベキューセット?かな。この旅館は湯治部があるし、日帰り入浴の方のためかもしれない。
さて、肝心な露天風呂はどこに?
小さな灯りの下に、露天風呂の案内がありました。基本的に混浴なのですが、女性時間が朝と午後に設定されていました。
さて、少し周辺を歩いてみよう、と思いたちます。宿入り口の看板にあった「滑川大滝」へ行ってみよう。
大滝へ行くには旅館の敷地奥の吊り橋を渡らねばなりません。宿泊客以外は料金(200円だったかな)を旅館に払います。
いざ、渡ります。
始めは調子良く歩けたのですが、当然揺れ始めて一気に弱気になりました。
まあまあ揺れるけど、自分一人だし自分のタイミングで歩けたので良かったかな。
山道に入るとすぐに案内図が立っていました。
大滝までは20分、情報通りですね。
大滝展望台までは「初心者向け」とありましたが、高尾山とは大違いです。
けもの道ほどの幅でくねくね曲がりながら登って行きます。場所によっては、道のすぐ横は急斜面だったり、岩を越えたり(急斜面は岩で道が流れないように補強したのか)木の根が張っていたり…
はぁはぁ
ゼイゼイ
30分近く登っているかも。もうすぐかもしれない。けれども、けれども。「(登れると思うけど)帰り道、ここを下るんだよね、本当に?!」という場所で、しばし思案します。
だめだ…悔しいけれど、日ごろの運動不足の自分には無理だ…😢
展望台まで順調に行けば、あと数分(だろう)場所で引き返しました。情けない…
気を取り直して、お風呂入りましょう。
内風呂は昔のままのようです。半円形の湯船は4,5人が入って程よい距離が保てる感じ。お湯は、ちょうど良い温度で、軽めの温泉の香りがします。色は、少し青みがかった白濁の湯です。いいお湯。段差に腰掛けたり、肩まで浸かったり、じっくり味わいました。
2面は窓になっていて(すりガラスと、板が貼ってある)、天井の換気窓が明かり取りになっています。オレンジ色の照明が一つありますが、ほんのり明るい程度。
そうそう、ここは洗い場が”ないも同然”です。一つ(出るまでに時間掛かります、との注意書き付き)シャワーがありましたが、使いませんでした。皆さんも、そこは諦めた様子。
まぁ、温泉に浸かるだけ、なんですよね。きっと、昔の温泉はそういうものだったのでしょう。
さらに、写真で見た混浴の内風呂の方が断然広い。そこも昔ながら、ですね。混浴は入らなかったけど。
午後4時、女性時間になったので、露天風呂へ向かいます。
露天風呂は完全に外でした。
脱衣所は男女別の小さな小屋ですが、最近建て替えられた感じで新しい。中は、棚に脱衣籠が6個ほど置いてあるだけです。でも、十分。脱衣所の奥に小さな池のようなものがありました。そこから管が露天風呂へ伸びています。あ、ここが源泉なんだ、とわかりました。
お風呂は岩に囲まれて、大木が覆いかぶさっています。本当に外にあるお風呂、本当に露天風呂。人工的な屋根はありません。やはり、青みがかった白濁の湯です。
見えなくてもすぐそばの川の流れがあって、音が響きます。眺める山の紅葉はまだ序盤ですが、十分美しいのです。
4,5人の方が入っていますが、ゆったりした広さです。何気なく会話した若い女性は活動的な方で、当然「大滝」へ登ったそうです。話しをうかがいました。とても良かったそうです。はい、私は断念したなんて言えませんでした…。
内風呂と同じ源泉のはずですが、外なのでお湯は温めです。いつまでも浸かっていられる感じ。
さて、部屋に戻ってまったりしていると、楽しみな夕食が部屋に運ばれてきました。雰囲気が盛り上がる「お膳」に乗っています。これは畳の上に置いて、正座で食べるでしょう。
野菜は地のものでしょう。おひたしの葉物は何だろう、これ好き。鯉のあらいって山の中の旅館でしか食べたことないけど、ここのものが一番かな。澄まし汁の鶏のだんごも。
ここは米沢市だから、”たぶん牛肉の何か”と予想していた鍋は、意外にもビーフシチューでした。(山形県だけど芋煮じゃないんだ・・・)
牛肉がゴロゴロしていて食べ応え十分、美味しかったのでした。
そして、なんと言っても、ご飯そのものが美味しい。おひつのご飯全部食べてしまった。満足。
ああ、それにしても正座は、久しぶりです。痺れました・・・。
すっかり日が暮れて夜になると、山の中は冷えます。東京の冬に近い。日中に宿の方が大きな湯たんぽを持ってきてくれていました。敷布団に挟んでいもらっています。
食事が済むと、自分でお膳を廊下に出します。もちろん、布団はセルフで敷きます。
もう一度、温泉で身体を温めて、おやすみなさい。
そして、朝。
内風呂で目を覚まします。朝食もおぜんで運ばれてきました。相変わらず美味しいご飯、温泉卵は出汁に浸かっていないので、卵ご飯にして食べました。味噌汁、味噌が独特なのかなと思ったけど、美味しかったです。
朝の露天風呂へ行って、しっかりとこのお湯を心に残しましょう。
早く出発される方もいるせいか、とても空いていました。一人の時間があったくらい贅沢な時間を過ごせました。
一つ、不思議だったのは、温泉がほぼ透明だったことです。源泉の池も透明だったので、そのまま反映されていました。後に宿の方に聞くと、「温泉は色が変わることがあって、自然のことなので理由がわからない」とのことでした。本当に自然の神秘。
チェックアウトの時間は11時なのですが、駅までの送りの車は12時50分とのことでした。それまでどうしようかな。では、散歩でも。まずは、敷地内をぶらぶらとします。
山奥なので、公共インフラとしての電気が来ておらず、自家発電設備を持っている旅館なんですね。なので、電気は大切、節電。そして、水も自家設備なのかもしれません。節水の貼り紙がありました。
まだ時間がたっぷりあるので、旅館の敷地の外へ出ます。
川沿いに少し歩きました。
あと一週間もすれば、紅葉の最盛期となるでしょう。けれど今でも十分、美しい。地元よりも一足早い秋の深まりを感じられました。
外界と切断された、まったく別世界でした。歩いて、眺めて、ご飯食べて、温泉入って、寝るだけ。この時に来ることができて幸せでした。
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