「男は得、女は損!~兄との確執が教えてくれたこと~」【後半】
目次
前半
🔳立派な父とみじめな母
🔳二つ年上の兄
🔳兄に負けない!〜優等生の私〜
🔳スーパーウーマン〜夫との距離は広がる一方〜
🔳どんなに頑張っても愛されない人生
🔳ターニングポイント~新しい出合い~
後半
🔳父の手紙
🔳愛のとりこぼし~私だけを見て欲しかった~
🔳クランクアップ!悪役の兄
🔳夫婦・家族の関係性が変わった今
🔳終わりに
前半はこちらからどうぞ
https://editor.note.com/notes/n04ddc2721c9d/edit/
☆interview☆
<インタビュアー:桒山 早苗研究員 / ライター: 小田朱里 研究員>
「男は得、女は損!~兄との確執が教えてくれたこと~」【後半】
後半
≪前半まとめ≫
男は常に女より上で、女はいつも弱い立場に置かれている。みじめな母のようにはなるまいと男並みに働き、家庭でも社会でも必死に役割を果たしてきたYさん。それでもその努力が報われることはなく絶望感を募らせていましたが、思考のテクノロジーに出合い、まったく新しい人生を歩み始めます。いったいYさんに何が起こったのでしょうか。
🔳父の手紙
思考テクノロジーによって自分の内面に無意識の葛藤があったことを理解し、その無意識が徐々に解放され始めていた頃、偶然亡くなった父の古い手紙を見つけました。
それは、すっかり茶色くなってネズミがかじった跡がある4枚の便せんで、そこには、まだ独身だった父が、一人息子としての役割を受け入れ、学校卒業後に勤めた国鉄を辞めて、先祖伝来の家業である農業を継ぐ決意が、祖父に宛てて記されていました。
「本当の幸せとは、金でも名誉でも地位でもなく、家族仲良く生業に励むことではないでしょうか。」
手紙には、孝行したいときに親がいないという後悔だけはしたくないとも書かれており、農業経営にとどまらず、田畑の土地改良や農村全体の生活改善への熱い思いも綴られていました。
父の言葉にはただ、家族を思う気持ちと、故郷の発展への強い願いがあふれていたのです。
その父の手紙で、私の男性性である父の深い思いを時空を超えて受け取ることができました。
すると、思い出したのです。
自分がかつて兄にこの父のような頼もしさを感じていたこと、その兄に憧れて中学では同じ部活動に入ったこと、ひと足先に社会人になった兄が何かと妹の私の面倒を見てくれていたことを。
🔳愛のとりこぼし~私だけを見て欲しかった~
兄は私の憧れだった。それなのに、いつの間にかケチだと感じ「家族に冷たい、役立たず」と思うようになっていました。
父に愛されなかった母の姿を見て、いつしか「女は弱い」「女は愛されない」と感じ、男女の不平等に強い不満を抱くようになりました。
そんな思いを跳ね返すかのように、男女平等を原則とする公務員という道を選び、生きてきたのです。
しかし、心の奥底にあった本当の願いは、ただ「自分だけを見てほしい」「大切にされたい」というものでした。
私は母の弱さを嫌い、その無意識に秘めた願いを否定していたのです。
その相反する思いが、自分の中で葛藤を引き起こしていたことに気付きました。だからこそ、いつも苦しかったのです。
苦しい現実を変えようともがき、その原因を「男」に投影していました。「男が悪い」「男は私を愛してくれない」と憎しみを抱くことで、心のバランスを取ろうとしていたのです。
兄を「悪役」と見てしまったのは、兄の結婚がきっかけだったのです。
兄が結婚して、私は兄をお嫁さんに「取られた」と感じ、寂しさを覚えました。
結婚すれば夫として妻を優先するのは当然なのに、「兄はもう私や実家のことを見てくれないケチなんだ!」と勝手に思い込んでしまっていたのです。
そのことに気付くと、夫への見方も変わりました。夫は、家族を守るために単身赴任をして、寂しさを抱えながらも黙々と働き、家族にお金を送り続けてくれていました。
その姿が、家族への深い愛そのものだったことが見えてきました。夫の浮気でさえ、人恋しさを埋めるための行動だったのだと、今では理解できます。
さらに、夫が私の決断をいつも信じて見守ってくれていたことにも気付きました。
私が金銭的に実家を援助することや、マンションを購入したり、早期退職したり、多額の退職金をどう使うかなどについて、夫は一度も口を挟んだことがありませんでした。
夫の単身赴任中、私は自分だけが辛いと思っていましたが、今振り返ると、夫も同じように辛かったはずです。
それでも夫は、その気持ちを言葉にできず、家族に対して攻撃的な態度でしか「分かってほしい」と伝えられなかったのだと思います。
そして私もまた、自分の心の中にあった無意識の感情を理解できず、一方的な態度を取っていたことが今では分かります。
🔳クランクアップ!悪役の兄
私は幼い頃、兄と両親の愛の奪い合いに敗れたような気がして、愛情は戦いに勝たないと得られないものだと無意識に思っていました。
そして、女だから兄に負けたと感じ、その思い込みから、男に負けないように生きてきました。
そして自分の存在価値を高めるために、そばにいる男たちを「悪者や弱者」に仕立て上げたり、遠くに追いやったりすることで、自分のポジションを守り続けていたことが分かりました。
役に立たないケチな兄の存在は、良い長女を演じるためには都合がよかったし、家に夫がいないことで「一人で何でもこなす男勝りのスーパーウーマン」を演じることができました。
そうやって自分で望みどおりに環境設定をしておきながら、「私だけがこんな大変な目にあっているの!」と悲劇のヒロインを演じて注目を集めようとしていました。
「愛の取りこぼし」
これこそが私のすべての苦しみだったということが、ようやく分かりました。
悲劇のヒロイン役も、兄の悪役も、もう全部クランクアップ、終わったのです!
■夫婦・家族の関係性が変わった今
自分の内面と向き合い、無意識の思い込みから自分を解放したことで、私の世界は劇的に変わり始めました。
かつてあれほど勝手気ままで冷たく見えた夫が、驚くほど優しくなったのです。
長い単身赴任生活を終えた今、夫は自ら進んで食器を洗い、洗濯物をたたみ、庭に花を植え、外食にも頻繁に連れて行ってくれます。
以前は命令ばかりし、荒々しい言葉を吐いていた夫が、今では愛情豊かで気前の良い駄々っ子のような存在になり、「我が家は今が一番いい」と明るく言うのです!
娘夫婦との同居をきっかけに夫と建てたマイホームは増改築をすることになったのですが、これも家族再生の象徴のように思えてなりません。
今はこの新しく生まれ変わった家で3世代6人が一緒に暮らす私たちは、笑い声が絶えない日々を送っています。ご近所さんや親族から羨ましがられるような家族、一番欲しかった互いを大切に思い合えるぬくもりのある家族が実現しているのです。
愛情は常にそばにあるもの。以前はそれが見えないから争い奪い合うものに感じていましたが、自分が心の目を開きさえすれば、愛はここかしこにあふれている。このことを、今、実感しています。
■終わりに
人は皆、家族や夫婦の中でさまざまな役割を果たしながら、生きていきます。その中では時に、思いがけない壁にぶつかったり、相手との間に見えない溝を感じたりすることもあることでしょう。
Yさんもまた、そのような葛藤や迷いを通じて、自分自身や家族との関係を見つめ直してきました。
家族の在り方とは、一つの理想形があるわけではなく、それぞれが自分たちのペースで築いていくものだと思います。
相手を理解しようとする気持ち、そして何より、自分自身の感情をあるがまま受け止め、自分自身を理解していくことが、実は目の前との絆を深める鍵になるのだと感じています。
そして、男であるとか女であるとかにかかわらず、人はみな自分が自分に与えた役割という枠の中で理想を持ち、いつしか弱音を吐けなくなっていたことを理解していく必要もあるのでしょう。
もし、この記事が、夫婦生活や家族関係に悩んでいる方々に少しでも共感を呼び起こし、自分の中で新たな視点を見つけるきっかけになれば幸いです。そして、自分たちの関係性を見つめ直し、新たな形で結びつきを再構築していく勇気を持っていただければと思います。
家族の在り方は、時に変化しながらも、根底にシステムの理解と愛情があれば、必ず乗り越えていける。
この体験から確信しています。
【編集後記】
小田 朱里 研究員
この記事が出る少し前に、Yさんのお兄さんが他界されたことを知りました。その時最初に出て来たのは”感謝”でした。そしてこの感謝は、自分を感じていたYさんにあるお兄さんへの思いだとも感じました。この記事はYさんからお兄さんへの感謝状でありラブレターである。そんな感覚です。このタイミングでお届けすることにも、何かの導きのようなものを感じています。この記事の作成にかかわらせていただき、幸せでした。
ありがとうございました。
桒山 早苗研究員
この思考のテクノロジーの凄さはやり方さえ間違えなければYさんの様に”無意識のうちに握りしめてきた思い込み”を消滅させ、生き辛さや苦しみから完全に解放され、2度とその苦しみを体験しないところです。何があれ程苦しかったのか?自分でも不思議になります。この様に自分の世界を変えるという嘘の様な現実。Yさんの体験をご紹介させて頂き、ご自身の世界を変える方がいらしたらこの上ない喜びです。
(株)ミロス・インスティチュート
https://www.mirossinstitute.co.jp/