発達に個性を持つ子どもたちからのメッセージ ~子育て・教育の新たな可能性~【後半】
前半では、発育や発達が遅れている子どもたちが、ゆらさんと関わる中で、みるみる可能性を見せてくれた様子をご紹介しました。
後半では、自己否定が強かったゆらさんの体験をお伝えします。いじめや不登校、難病やパニック障がいを経験した彼女がどのように変容していったか、そのプロセスには、子育てや教育に大切なエッセンスがたくさん詰まっています。
前半はこちらからどうぞ
https://note.com/vast_eagle460/n/ndb19b5e4152a
☆interview☆
<インタビュアー:山下愛子 ライター:福田みどり>
発達に個性を持つ子どもたちからのメッセージ【後半】
~子育て・教育の新たな可能性~
◆心の奥にしまい込んだもの
私自身、過去にいじめに遭い、それを機に不登校になり、難病やパニック障がいを経験しました。自分にまったく価値を感じられず、周りと比べて自己否定ばかりしていました。
なぜそうなったのか、生い立ちからお話します。
私の母は責任感が強く、仕事、家事、育児にとにかく忙しい人でした。
人のために走り回り、家を留守にすることも多く、幼少期は母の背中しか見ていません。
父も仕事で忙しく、ほとんど家にいませんでした。
忙しい両親に代わり、年の離れた兄と姉が私の面倒を見てくれました。
マナーに厳しい兄には、何かにつけて注意されるので、反射的に謝るようになっていました。
姉は優しくて可愛くて大好きでしたが、姉だけが親から愛されていると感じていました。
「お姉ちゃんだけいいな」「私は可愛くないんだ」と思うことが多かったです。
また、父は結婚前から浮気を繰り返していて、そのことで両親の喧嘩が絶えませんでした。私は、いつか離婚するんじゃないか、家庭が崩壊するんじゃないかと不安と恐怖でいっぱいでした。
母はいつもイライラしていて、父に対する怒りや、兄や姉に対するイライラを私にぶつけてきました。
私は「ごめんなさい」と思うだけでした。
「私は家族の迷惑になっている、足手まといになっている」
「私なんていない方がいい」という思いが強くなっていきました。
◆いじめに遭い、不登校になる
中学2年の時、頑張っていた部活動でいじめを受けました。私の嫌なところをノートに記入され、下級生も含めて全員がそれを読み上げていくのです。
「そんなことないよ」と一言でも言うと何倍も言い返される。泣くと会話にならないと言われ、次の日も呼び出されました。
学校の先生は見て見ぬふりで、助けてくれることはありませんでした。
母には言えず我慢して通いましたが、毎日責められ、何がダメで、何がいいのかわからなくなってしまい、やっと母に言えました。
部活以外の友達にもどう見られているのか不安で、自己否定の感情が膨らみ、外に出るのも怖くなり、電車にも乗れなくなりました。
人と関わることが怖くて中学校から高校3年生くらいまで不登校でした。
ただ、私の不登校をきっかけに、父と母が話し合うようになったんです。
「私がこうなってしまったのはお父さんのせいだ」と言えた時、初めて泣くことができました。
「お母さんも私に気づかないくらい忙しかったでしょ」と、父と母のことをすごく責めました。
でも、分かって欲しいという気持ちを表現することができたのです。
学校はいじめについては「そんな事実はない」の一点張りで、休む理由にはならないと言ってきました。
学校へ行こうとすると体調が悪くなり、とうとう若年性リウマチの症状が現れ、両親が私のために話し合い「この子は学校に行かせなくていい」と言ってくれた時は、本当に安心しました。
受け入れてもらえたことが嬉しかったです。
◆思考テクノロジーで自分を理解することが人生の転機に
その頃に思考のテクノロジーのことを知り学び出しました。辛いいじめの体験も、無意識の自己イメージや思考のパターンから生じていたことを知り、『私が自分を否定して、いじめていたからだ』と理解したら力が抜けました。
そこからいじめていた側の気持も分かるようになっていきました。
部活を楽しみたかった部員たちとは対照的に、勝つことに必死になっていた私。周りに認めてもらおうと頑張りすぎて、目的やわくわく感も失っていました。
その事を教えてくれていたのだと分かったら、彼女たちを許すことができ、感謝が湧いてきたんです。
病気は回復し、パニック障害も落ち着きました。
家族も変わり、笑いが増え、日常の中に幸せを感じるようになれました。
自分に軸が出来たんだなと思います。
❒この経験が、今とても役立っているんですね。
◆先生と子どもが共に育み合う、新しい保育のカタチ
はい、そうです。
目の前でパニックを起こす子や、騒いでる子を見ていると、「まるで私そのものだ!!」とハッとし、私が自分自身を嫌い、こんなにも苦しみ、もがいてたんだなぁと、目の前の子どもと自分を重ね、心にしまい込んでいた感情や記憶を、もう一度丁寧に感じることで、手放していけるんです。
すると子どもも変わっていきます。
私が自分を認めることができるようになったら、子どもたちから信頼され、心を開いてくれるようにもなりました。
そして、その子どもたちの保護者や家族からも信頼してもらえるようになりました。
かつて学校も先生も大嫌いだった私が、今、先生という立場になり、子どもたちが話し出すのを待ち、その声に耳を澄まし、気持ちに寄り添ってあげることで、当時の私が聞いて欲しかった思いや、寄り添って欲しいという気持ちが癒されていきます。
あの頃に出会いたかった先生に、自分がこうしてなれていることも、とてもうれしいです。
❒大人が自分自身を認めることで、子どもとの関わり方も変わり、子どもたちが、素直に自己表現し、自ずと自立していくところが本当にすごいと思います。
最後に、子どもに関わる先生や保護者の皆さまに伝えたいことはありますか?
私がしていることは、その子を丸ごと受け入れてあげることです。
その子が望む世界を信じてあげることです。
これができない、ここが弱い子という目を持たずに、子どもたちひとり一人の世界を大切にしてあげてほしいと思います。
私自身が自分を表現できるようになったら、目の前の子どもたちも自分を表現できるようになりました。
私が自分を愛し、子どもたちに愛を伝えると、子どもたちも自分を大切にするようになりました。
毎日「大好きだよ」と子どもたちに言葉で伝えることで、彼らが自分を好きになっていくのがよくわかります。子どもたちから「ゆら先生大好き」と言われることがどれだけ癒しになるか…。
私は本当に大切な存在として、一人ひとりを見ています。
子どもに感じることを自分に重ねながら心のバランスを整え、共に通じ合い成長し合うことで、毎日がとても楽しくて幸せです。
私の周りにも笑顔が溢れています。
自己価値がゼロだった私が、お金に変えられない愛を知り、その愛が私だけでなく、関わる人すべてに連鎖していることにも気づきました。
この喜びを皆さんにも体験していただきたいです。
※編集後記
【山下愛子・インタビュアー】
インタビューさせていただいた際、岡田ゆらさんが目をキラキラさせて生き生きと話してくださったのが印象的でした。 いじめやひきこもりを体験し、自己価値ゼロだった彼女が、思考テクノロジーを知り、いじめの原因も理解し、今は幸せに暮らし、家族とも仲良くなり、毎日子どもたちと生きている姿に感動しました。 子どもの存在、可能性、気持ちをそのまま受け入れ、自分として観る眼差しに、子どもたちも本来の姿に戻れることに愛を感じました。 私自身、自分の人生に、ハナマルをいっぱいもらえた貴重なインタビューでした。 たくさんの悩めるお母さん、お父さんに、新しい視点でお子様を見られるヒントになれば嬉しいです。
【福田みどり・ライター】
目の前の子どもと自分を重ね合わせる中で、無意識に抑え込んでいた子ども時代の思いや無価値という”思い込み”に気づいていったゆらさんは、癒され、自分を認めることができました。その変化は目の前の子どもたちにも波及し、子どもたちも頑なさが緩み、本来の姿を見せてくれるようになったのは驚きです。今では、自分を信頼し、子どもたちや親からも信頼される存在となったゆらさん。1人の気づきによる変化がもたらす周りへの影響の凄さを実感します。お話を伺い、「共に癒し育み合う新しい教育」が既に始まっていることを感じました。皆さまにも、教育の明るい未来の可能性を感じていただければ幸いです。