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もしかして
具平親王に対向して女君を争える人は誰なのか。
かりにも親王に、対抗する人。
相手が親王でも、怪我をさせてしまうかもしれないのに、暗闇で大胆にも抜刀し得る人。
具平親王から大顔の女を奪った物の怪。
つまり物の怪と、曖昧に隠された誰か。
源氏物語の中で、音楽のコード進行のように、絶えず物語の根底に響き続け、
繰り返し語られる
『一人の女を争う二人の男』
『女の死と、その身代わりの女』
遠慮がちに、遠回しに、
一度では語りきれず、
語りきれなかった想いを書き残さずには居られなくて、
繰り返しもう一度それを描く。
紫式部やその周辺の人々が遠慮し、ぼやかす誰か。
紫式部とその周辺の人々にとっての最重要人物。
つまり花山天皇。ではないだろうか。