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呪術2期というエポックメイキング ―2期各話メモ&感想

※素人が好き勝手に作品の感想を言っているだけです。悪しからず。

 

 遡ること9ヶ月前、3月末のこと。ティザービジュアルやキャラクタービジュアルは既出だったが、本編映像を用いた第二期のPVが初めて公開された。美麗な作画、印象的な音楽、まだ爽やかさの残る初夏の雰囲気。作品の質が完璧に保証されていることを示した、素晴らしいPVだった。

 しかしPVのラストに一つだけ、あまりにも重大な懸念があった。

 メインスタッフが違うのである。
 監督は朴性厚さんから御所園翔太さんへ、副監督は梅本唯さんから愛敬亮太さんに変わっていた。朴監督は劇場版制作後に独立して自分のアニメーションスタジオを設立され、一期や劇場版に携わられたスタッフさんも数名、一緒に移籍されている。そのため色彩設計や音響監督なども変わり、メインスタッフの顔ぶれは大きく違ったものとなった。長期作品の途中で監督が変わることは割とある(ハリーポッターも監督は3回変わった)が、1期の評価が高かったにもかかわらずアニメ2期の段階でほぼ総変わりになってしまうのは珍しい。大好きな作品だけに不安を覚えもしたが、其れが全くの杞憂どころか、むしろ失礼な話だと思い知らされた。

 こんなにすごいアニメがあっていいのか。アニメーションはこんなにも面白いのか。

 毎週毎週、その思いが強まるばかりだった。中学生の時に、少女かウテナを初めて通しで観たときに匹敵する衝撃だった。アニメーターさん達がオリンピックをしているのかと思った。私が考えもしなかった様々なアプローチで、呪術廻戦という作品を思い思いに表現していた。荒々しく力強いタッチの時もあれば、独特な陰影で深みを出すシーンもあり、またある時はほとんど影をつけずに立体感を出す画もあった。面白いものを作ろう、もっと凄いことをやろう。そんな情熱が画面からほとばしっていた。

 アニメーションの歴史の転換点をリアタイしている、そんな感覚がずっとあった。実験場のようなアニメだと思った。毎週何が起こるかわからず、突然爆発し、見たこともない化学反応が起きる。原作で「見たことがないものを見たいだろう」というセリフがあるけれど、まさにそのスタンスが象徴されている。
 最新話の視聴が純粋に楽しみだった。本誌まで買う程の原作ファンだが、きちんと映像化されるだろうかなどという傲岸不遜な思いはなかった。今週は何が観られるのか、それが楽しみで仕方なかった。幼い頃、毎週日曜日に活躍するテレビの中のヒーローを応援するような、彼らの活躍を待ち望むような、やましさや打算のない気持ちだった。

 回ごとに作画の雰囲気がまるっと変わるので、周りでも人によって好きな回が分かれた。動きがとにかくめまぐるしい回、外連味の強い回、演出がノリにノッている回、勢いのありすぎる回。どの回が好きかで、今後の創作物にかなり影響を受けていくと思う。作者の芥見先生がバーディー世代を名乗るように、十年後、呪術世代というのが現れるのではという予感がある。そういう意味で、エポックメイキングな作品なのだと強く思う。

 以下は各話の感想とメモ。

第25話 懐玉
 原作を2話しか消化していないのでテンポはゆったりめ。シリ構の瀬古さん曰く、「今は伏黒だ」で引きたかったとのこと。納得。前半は冥さんと歌姫の任務を膨らませ、後半は五条と夏油のバスケシーン(原作では教室での会話)が描かれるなどスタッフさんの遊び心と作品の質感作りが素敵。

第26話 懐玉-弐-
 最強の2人が敵を一方的にボコるだけなので安心して観られる回。pvでも使われていたシーンが多い。若五条のサングラスに回想シーンを映す演出がオシャレ。

第27話 懐玉-参-
 平和な時間終了。エンディングがフライングで流れて最悪のタイミングで中断される。永瀬アンナさんの独白演技がとてもよかった。理子ちゃんの脇をタテジマキンチャクダイの幼魚が泳いでいくのがニクい。一般通過死滅回遊魚。

第28話 懐玉-肆-
 進撃で活躍された今井さんのアクションが気持ちいい回。中村さんの静と動がハッキリ分かれた演技も。「赫の言い方」がトレンド入りしていた記憶。cパートに玉折の冒頭が挿入されていて一気に重苦しい雰囲気に。最強コンビの終わりを予感させる赤と青のコントラストが印象深い。

第29話 玉折
 絵の雰囲気が前回までとまた違う。この回から山崎爽太さんを意識するようになった。夏油と九十九の対話シーンで雨を降らせるのを思いついた人、人の心がない。終盤は原作を読んだ時にもっと暗くじめじめした印象があったけれど、最後に一年トリオが登場して五条の生き方(夏油に教えてもらった人としての指針)が報われた感じがあって好き。一番好きなのとこは壇上でマイクを投げる夏油の動き。

第30話 そういうこと
 原作でほぼ唯一といっていい日常回。小沢ちゃんの髪色が思ったより暗かった。前半後半共に「恋と見た目」の話をしていて、シンプルに構成が上手い。原作だと「そういうこと」の方は過去編より前なので。小沢ちゃんの回想シーンのタッチ、影の揺れ動きの演出が美しかった。

第31話 宵祭り
 天元突破メカ丸ゲリヲン。後にうずまきを描かれるよーとさん回。Trigger味が強いと思ったらクレジットにTriggerの方がちらほら。今まで以上にアニメーターさんの好きなものを詰め込んだ感が強かった。私も大好き。the 外連味という感じの回。真人は敵だしすぐに治るのでいくらでも殴れるし変顔させられる。真人七変化はリトルウィッチアカデミアの後期opっぽさもあって楽しかった。 一緒に観ていたグレンラガンファンの兄が大興奮していた。

第32話 渋谷事変
 蝗害の説明はカットしても良かったのではと思ったり。アクションはダイナミックな立ち回りが観ていてとても気持ちよかった。渋谷の治安がいい感じに悪い。呪霊たちのシャボン玉シーンがポヤポヤした雰囲気で笑ってしまった。

第33話 渋谷事変 開門
 脳みそが想像以上に白くてキショい。冒頭のシーンは単行本10巻のオマケ。花御の抹殺シーンが原作通りの悪人顔で嬉しかった。千葉さんの叫び声がコミカルで好き。麻雀のくだりは、本誌掲載の時に額の縫い目を書き忘れて単行本修正されていた。

第34話 昏乱
 ストーリー的にもアクション作画的にもとてつもなく大きな動きはないけれど、テンポが良くて満足感の高い回。後の展開を知っていると、五条先生の「期待してるよ、みんな」で映る悠仁の明るい背中が意味深。この時は前向きな気分で階段を駆け上がるけど、後に階段を下る時はここと正反対になっているので。

第35話 降霊
 ワイヤーアクションの疾走感がいい。猪野の術式もすごく画面映えする。途中のインモラル親子はなんだったのかと、原作の時から思っている。粟坂を二人で殴るときのカットはPVで使われたくらい気合いが入っていた。脱兎ちゃんが可愛いのでぬいぐるみ売ってくれんかと思っていたらさっそく販売されていた。判断が早い。

第36話 鈍刀
 パパ黒の「ばーちゃん」で笑う。秒で覚醒して縮地法を使うのも笑う。パパ黒はオーディションで、最終的には芥見先生の一押しで決まったそうな。
 この回の見所は一も二もなくナナミン。山崎さんのXで投稿されている総作監修正は必見。野薔薇ちゃんはサポート向きの術式だとよくわかる回。

第37話 赫鱗
 この回から作品のステージがさらに一段上がったと思う。演出もライティングも動きもバッチバチに決まっていた。冒頭の看板と影からもうすごく良い。
 トイレバトルは芥見先生曰くインドネシアのアクション映画「ザ・レイド」のオマージュ。TSUTAYAでこれを借りようと思ったのに間違えてアウトレイジを借りてきてしまったという個人的な思い出。アニメではもう少し香港系のアクションだったかな?違ったらごめんなさい。荒井和人さんと砂小原巧さんの共同演出&コンテ。放送後に製作裏話が投稿されていて、かなり面白かった。
 アニメ一期の九相図戦と同じBGMが使われていて、悠仁が勝つ流れにしておいての敗北なので、お兄ちゃんの強さが際立つ。お兄ちゃんの術式はアニメ映えするしアニメオリジナルの使い方もしていて手数の多さが強調され、強さに説得力があった。この後の活躍も凄いし。直哉戦と「親殺し、いきまぁす!!」も楽しみです。

第38話 揺蕩
 陀艮の領域の色彩がパキッとしていてべらぼうにいい。カラースクリプトが入るようになったのはたぶん2期から。2期の画面の温度感、すごくいいです。スクリプトのゴキンジョさんはスパイop2曲目とかもされていたはず。爺ちゃんの現代アニメへの文句が原作より多くなっていて笑った。

第39話 揺蕩-弐-
 この回の作者コメントでバーディーについて触れられていたけれど、ほとんどの視聴者がおそらくわからず、複数のアニメーターさんが「先生のコメント、視聴者の大半がわかってないような単語使いまくってて笑う」みたいなことを言っていた。私も解説読まなきゃ半分はわからない。
 パパ黒の海面アクションは渡邊啓一郎さん。1期放送中のジャンフェスで芥見先生が好きなシーンに渡邉さんが描かれたナナミンのガラガラを挙げられてた記憶。ミミナナの死に方は止め絵の分、原作の方がグロかった。

第40話 霹靂
 土上さん回①(最近ようやくモブサイコ観られたけど広大な空間の使い方が本当にスゴかった)。土上さんは参考にした作品や挑戦されたことなどをXで解説してくれるのでとても有り難い。作品を二倍楽しめる。この回は前に一度記事を書いたので割愛。
 けど漏瑚さんとオファーについてちょっとだけ。cv千葉さんは芥見先生のオファーで、決定して以降ネームからノリノリだったとのこと。確かに他の声が考えられないキャラ造形してるものね。先生が直にオファーしたと公表されているのは千葉さんと一期opの山下清悟さん。作者がopアーティストの希望を出す話は聞いたことあるけど、opアニメーターの希望を出す話は他で聞いたことがない。というか有り得るんだ……。たしかクランチロールの映像インタビューで、山下さんご本人が経緯を話されていたと思う。

第41話 霹靂-弐-
 土上さん回②。伍柏諭さん・山崎晴美さんと共同。まこーらvs宿儺という両者共に主人公の味方ではなくこの章のボスでもないのに、作中一の破壊規模とキルスコアを誇るという異質な回。シーンの大半がシネスコでカッコいい。更地になった渋谷を見て絶望する虎杖にオープニングを被せる「人の心とかないんか?」演出に開いた口が塞がらなかった。まこーらの方陣は絶対CGを使うと思ったのに手描きだった。すごい。宿儺が信号の上で解を使うシーンがいっちゃん好き。どの回をどのアニメーターさんに任せるかは監督が決めているのだろうか。なんにせよ最高な布陣。ものすごくわがままを言えば宿儺の見開き領域展開をあの構図で見てみたかったが、前後の文脈もあるし漫画とアニメで違った楽しみ方ができるのでモーマンタイ。音楽もよかった。

第42話 理非
 これは14巻の副題で、私は宿儺による町と人々の蹂躙を指した言葉だと思ってたのだけど、どうやら東堂現着までの、虎杖の価値観や大切な物が大きく壊され再形成されていく一連の流れのことのよう。絵コンテは監督自ら描かれ、映画のような雰囲気だった。アクションも演出もいいのに、内容が辛いのであまり見返せない。ちなみにこの回のアフレコ風景は情熱大陸でちょっとだけ観られる。監督もちょっとだけ映ってる。
 後半の真人vs虎杖のアクションが場所やギミックを活用していて見応え抜群だった。壁が迫ってくるところで、ちょっとだけキャプテンスカーレットのエンディングを思い出した。どのアクションも「すげー!!」と「よく思いつくなこの動き……」となる。イマジネーションに脱帽。

第43話 理非-弐-
 内容が辛くて見返せない回②。でも野薔薇ちゃんの悪人顔がいいんだ。野薔薇ちゃん過去編は原作でそれまでずっと「渋谷事変」だったタイトルが一瞬だけ「あの子の話」に切り替わり異質さを放っている。人は自分の主観を唯一の真実だと信じ込んで生きている、というのが生々しく描かれた話しで、芥見先生の好きなホラー小説っぽい手触り。アクションは野薔薇ちゃんが真人に釘を打ち込むくだりが、影の塗り方も含め好き。

第44話 理非-参-
 東堂が出てくると虎杖が「東堂!」しか言わなくなるのだが、本編を観た視聴者も思考のほとんどが東堂に浸蝕されてしまうくらい狂気と勢いの凄まじい回。120%の見開きやナナミンの分まで苦しむよなど、原作のコマや構図をふんだんに取り入れつつ、レインボー東堂のような人類がまだ目にしたことのない光景をお出ししてくるので、コンテと演出をされた德野雄士さんのファンになってしまった。巻頭カラーのキス顔までばっちりねじ込まれていたので文句なしの神回です。德野さんにはぜひ3期で仙台結界と私鉄純愛列車もやってほしい。
 新幹線内での三輪ちゃんとメカ丸の対話シーンも美しかった。泣き顔と髪の透かしが息を呑むほど丁寧。たぶん三輪ちゃんの面白いところは作中で一度も三輪ちゃんと呼ばれていないのに読者の大半がちゃん付けで呼んでいるところ。ついでに、一期から作監で参加されてる丹羽さんのXのアイコンが三輪ちゃんで、これもとてもかわいい。

第45話 変身
 単行本15巻の副題。
 最後の黒閃も、音や感情の動線のピークに合わさって素晴らしかった。ここはメインアニメーターの富岡海任さん。「放課後のブレス」のヌルヌルナンジャモを描かれていた方。あの動きもとってもキュートだった。
 ここぞというバトルシーンでopが流れる演出好きだけど呪術はそんな感じじゃないよなあ、と思っていたら作中アイドルの架空の代表曲が流れ出すのは反則だよ。黒沢ともよさん、歌がとてもお上手。昔プリキュアのopとか歌ってたもんね。東堂の魅力である「かっこよさとキモさの両立」が完璧なバランスで成立していた。妄想で自分にバフをかけられるのが強すぎる。もはやキャラというか発明の域。
 アニメでは尺やテンポの都合でカットされてしまったけれど、最終決戦の駆け引きがスゴく好き。虎杖が黒閃を狙ってくると読んでいた真人は、ナナミンとの戦闘経験を生かし体を伸縮させることで狙いを外し、カウンターを決めようとする。しかしそれすら読んでいた虎杖は意識して逕庭拳を使うことで真人のカウンターを防ぐ。そこに東堂のフェイントが介入し、翻弄される真人に向ってトドメ、という流れ。駆け引きとバトルの組み立てが美しいので、ぜひ原作を読んで欲しい。

第46話 変身-弐-
「どけ!!!俺はお兄ちゃんだぞ!!!」これは新年一発目のジャンプに載っていた回。「明かされた正体、謎深まる関係」という煽りはさすがにナレーションで入らなかった。安心したようなちょっとだけ残念なような。お兄ちゃんの顔が原作通りのキマリ具合だった。お兄ちゃんvs偽夏油の戦闘が盛られ、見たことのない呪霊が登場。呪霊操術は手数の多さが強みだもんね。
 うずまきもスゴかった。劇場版のうずまきvs純愛砲は大ベテランアニメーターの上妻さんだったはず。上妻さんはXでいろんなアニメーターさんを褒めてらっしゃる素敵なお方。

第47話 
 放送終了後はトレンドを乙骨先輩と出てもいないドブカスに占拠されていた。気持ちは大いにわかるけれども。3期のスタートは「で、死んだん?」なんだろうか。そうなるとBパートくらいでもう東京に着いちゃうので、彼の生き急ぎ感が出ていいのかもしれぬ。
 二期1話と同じような雰囲気だと思ったらやっぱり監督コンテ回だった。タッチやテンポがちょっと洋画っぽい。
 ラストシーンは顔に消えない傷をつけた虎杖が、一人橋の上で佇む光景。一期のラストが五条先生の呼び出しを受け並んで歩く虎杖、伏黒、釘崎の3人だったので、惨い対比。しかも前作主人公から殺害宣言されてるし。

 書きながらもう一度本編を見返したけど、やっぱりすごく面白かった。3期はどこで区切るのだろう。原作の消化量が今回と同じくらいかつ連続2クールだとしたら「血と油」かもうちょい先くらいだろうか。なんにせよ楽しみ。いつまでもワクワクして待つので、どうか2期の設定資料や絵コンテを載せた本を出して欲しい。忙しいのは重々承知だが、御所園監督のインタビューを読みたくてしかたがない。そして売上げをアニメーターさんたちに還元してください……。Blu-rayも買いますから……!



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