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二月十五日
本当につらいのは大王様であるぞ
「キングダム」には考えさせられる台詞が沢山あります。 当今の名台詞などより吟味すべき言葉は、決め台詞よりむしろ何気ないシーンにこそ誠の価値があるのです。
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出典「キングダム」昌文君
《荒筋》
秦国の下僕・信は漂と自身の夢を叶えるため、王子の玉座奪還に手を貸す。逃避行で一緒になった河了貂を加え、嬴政達は山の王の助力を借りて連合を組み、玉座奪還作戦を行う。
王都咸陽に入城し、信たちは遊撃部隊として回廊と王宮にて王弟側の兵達と戦闘、激戦を制す。
途中に怪鳥・王騎とその兵達が介入するが、嬴政の未来にかすかな期待を持してその場を去る。かくして嬴政と山の王達は王宮反乱を収めた。
王宮反乱を鎮めたものの今後を踏まえた後処理で大王派が不平を鳴らす。大王派筆頭・昌文君が彼らを宥める。
《解説》
❤️人生とは戦い。だったら勝ち負けで終わることはない。
勝負・勝敗とは未来の門。
この世に命を受けた生物は戦争といわなくても小さな争いに至るまで、避けることが出来ない。
その激しさと厳しさに誰もが逃避しようとしたり不安に陥ります。故に戦いに勝つことが最も甘美に感じられ、戦果を欲することになります。
ですが、戦いの勝敗は未来の門にすぎない。
嬴政ら大王派も王弟竭氏と王弟らに勝利しました。ですが、嬴政はこれからも王の使命と成業が続く。
自分の中華の目的目標のためにはどうしても実権を自在に奮わねばならない。そのためには最後に生き残った呂氏派閥を制しなければならない。
そのための力が今の自分よりもっと高めねばならない。そのためには打倒した竭氏の人材でさえ必要になる。
故に処罰を最小限にとどめることを決めたのです。
❤️職人≠棟梁。則ち戦術≠戦略。
兵卒、組織員であれば与えられた仕事をこなし、良き成果と効率をあげればそれで業務は完了します。
ですが、彼らをまとめ、組織の事業を世界と社会の中で動かす側の人間達は違います。
大王派の兵達のように、その場その場の苦楽で文句を言えるのは「戦術」の世界です。
彼らをまとめる昌文君、大王は彼らの不平不満よりもっと考えて未来を予測しなければならない。
感情や不平不満よりも彼らの生活と仕事を支える場と世界を動かしていかねばならない。それが戦略です。
彼らを守り、動かす世界の仕事。それが組織の長であり棟梁であり、枢機を与る上層部の仕事です。戦略の仕事と言うべきでしょう。
❤️勝敗感情心よりも体、命。
組織員が不平不満があろうとも彼らを活かすためなら非情の手段を執る。昌文君が本当に辛いのは大王様御自身であるぞと言った理由です。
それが戦略に基づいた判断であり、多くの仕事と人を指揮する長の仕事です。
彼らに不平不満があろうともその思い感情欲望は生きてこそです。
感情よりも心よりも命と、体を大事にしていく。そこから戦略を考える基本になるのです。