連続小説「アディクション」(ノート16)
ギャンブル依存症から立ち上がる
この物語は、私の誇張された実体験を基に妄想的に作られたフィクションですので、登場する人物、団体等は全て架空のものでございます。
〈「名医?」〉
それにしても、私はギャンブル依存症です。それなのに、今私は、ギャンブルの象徴とも言える現役の競艇選手と、それを取材するスポーツ紙の記者と、さらにギャンブル大好きな人に囲まれて社会復帰を目指すという環境はかなり無理くりではないかと思ってしまいます。
ちなみに、「アディクショングループの話はするな」と言われてますが、私がアディクショングループのフロアから上がってきたことくらいは、メンバーの皆さんはご承知で、特におたけさんは、スタッフの目を盗んで私にアディクショングループのことについて、根掘り葉掘り聞いて来ます。
さらにに柳田さんと、隣のシマの休職中の住職をしている相羽さんとで、週末のレースの検討を堂々新聞広げて議論していたりして、私じゃないギャンブル依存症の人がここに来たら、一発でスリップするだろうと思いました。
それにしても、住職とかって僧侶のクセに飲む、打つ、買うを平然とやるとは。あ、相羽さんはクリニックの帰りにキャバクラによく行き、柳田さんもたまに付き合うとのことでした。
基本的に、依存症の克服をする環境としては「最悪」でしたwww
ていうか、こういう依存症の私への配慮が全く無いくせに、「アディクショングループの話はメンバーに悪影響」って、本当に我々を見下しているんだなと、腹が立ってきました。
そんなこと考えているうちに、スタッフの島貫(しまぬき)さんが
「それでは、これから外園(ほかぞの)院長のセミナーを開始します。外園先生はここの理事も兼務しており大変お忙しい方で、この午前に皆様のために貴重な時間をお取りいただいてます。是非、メモを取り、質疑応答をし、有意義な時間にいたしましょう。先生はまもなく到着します。」
実はここはクリニックなので当然、院長はいます。基本的には外来診察とクリニックの経営陣の業務で多忙を極めていて、フロアの方にはほとんど顔は出しませんが、ここのメンバーへの講義や診察は時間を取って行っています。
なお、他のフロアのメンバーも、医師の診察は定期的に受けていて、クリニック専属ではなく、委嘱契約をしている医師が診察しています。一応、クリニックですのでw
講義的なプログラムは、基本的にはマニュアルに沿ってスタッフが行ってて、スタッフも看護師、精神保健福祉士、臨床心理士など何らかの資格を持ってます。
そういうわけで、この外園院長の講義はクリニックにおいて、プレミアムなものらしいのですが、
「では、外園先生、よろしくお願いいたします」
室内には、プロジェクターとスクリーンが用意されました。
「外園です。では、いつものとおりこの動画から御覧ください。」
(え?)
なんか、E藤さんだか、O部さんだか訳の分からない人たちが出てきて、飲み会に行くだの行かないたの、ジュースでいいから参加しろだの、そんな動画が垂れ流されて、すぐに終わるのかと思いきや、50分くらい続きました。
ちなみにスタッフは事務スペースに引っ込んでしまいました。
「では、今回は時間も来てしまいましたので、これについての解説と質疑応答は次回とします。では、終わります。」
スタッフがのこのこ出てきて
「先生、ありがとうございました」
セミナー終了。外園院長ベール脱がず。
〈「リテラシー?」〉
院長セミナーに引き続き、私だけ顔合わせということて院長面談を兼ねた診察を受けることになりました。外園院長は、年齢的には私より少し上くらいでしょうか?何か歌手の島津ゆたかに少し似てると思いましたが、皆さん知らんかw
「屑星さんは、アディクションから移動ということで、これは実は私がフロアに指示したんですよ。」
「あ、そうなんですね。」
「なかなかリテラシーが高いと私は見ているので、こちらで社会復帰目指してもらってもいいかなと」
「ここのフロアの人って、リテラシーが高いんですか?」
「一概には言えないが、社会復帰の準備をするグループだから、そういうのも上げてもらわないと、ということだよ。」
「では、プログラムがそうなっているんですね。今日の動画もですか?」
先程の動画があまりにも意味不明だったのでついでに聞いてみたところ
「あの動画の価値が分からないうちは、うーん、屑星さんのリテラシーも今ひとつかな。よし、これ宿題にしよう。」
「はい?」
「来週の私の講義まで、今日の動画の論点を整理し、皆の前で発表してみよう」
「あの、飲み会断れない優柔不断なE藤さんと、ジュースでいいからとウソついて酒飲ませようとするO部さんの間に何か論点があるんですか?」
「どうすれば、E藤さんは上手く断れるかということだけでも考えて見てよ」
「優柔不断な性格直さない限り無理だと思いますけど。」
「ほう、性格は直せないと思うかね?」
「そりゃあそうでしょう」
「うん、そこも踏まえでまとめてきてください」
「そうですか。わかりました。」
実は、私の中ではこれについての答えは既に出ておりました。もちろん他の人との見解は異なっているかもしれません。
で、私は「リテラシー」という点ではここのメンバーさんのレベルについて行けないなどということはなく、むしろメンバーさんが私のレベルについて行けるのかという方が気掛かりでした。
(自惚れにも程があるw)
特にスタッフのリテラシーがあまりにも低いのではというのが第一印象でした、というのが本音です。
私は、亡くなられたアディクショングループの塩月さんのリテラシーに達している者は、ここのクリニック内では皆無だとも思っておりました。
今回は「リテラシー祭り」でしたが、そのホントの意味を私は知りませんw
今回はここまでとします。
GOOD LUCK 陽はまた昇る
くずぼしいってつ
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