錦繍/宮本輝
生きていることと、死んでいることとは、もしかしたら同じことかも知れない。
登場人物
勝沼亜紀
35歳。
17歳の時、母を亡くしている。星島建設のご令嬢。
靖明とは大学1年生の頃出会い、5年間交際後、23歳の時に結婚した。
離婚後、1年位で勝沼と再婚している。
有馬靖明
私はきっとあのとき、ほんのつかのま、死んでいたのだと思っています。
37歳。
14歳の時に両親を亡くし、伯父に育てられている。
星島照孝
人間は変わって行く。時々刻々と変わって行く不思議な生き物やなァ
70歳。星島建設の社長。亜紀の父。
勝沼清高
8歳。生まれつき知能が遅れている。
亜紀と壮一郎の息子。
瀬尾由加子
27歳。靖明の浮気相手。
ホステス。
舞鶴市生まれで、実家はタバコ屋を営んでいる。
高校を卒業後、京都のデパートの寝具売り場で働いていた。
靖明とは伯父に引き取られるまでの中学2年生の時、同じクラスだった。
令子
うち、あんたの奥さんやった人を好きや
28歳。スーパーマーケットで働いている。
有馬と1年位前から暮らしている。
6人姉弟。
勝沼壮一郎
大学の助教授。亜紀の現在の夫。
亜紀がよく行く喫茶店のご主人の甥。
感想
10年前に夫婦だった男女が再会したことをきっかけに手紙のやり取りをすることになる話。
手紙のやり取りの文だけで、物語が進む小説を読んだことがなかったので、少し不思議な感じだった。
だけども、言葉では言うことが出来なくても文にすることによって、スッキリすることがあると思うし、この2人にとっては手紙のやり取りをすることがこれから生きていく上で必要なことだったんだと思う。
はっきりと言ってしまえば、もっと若い時に読んでたら、意味が全然わかんなかったと思う。
今でも共感できるか、と問われれば、全部は共感できないし、謎を残して物語が終わっている。
だけど、それでいい。
わからないことが残っていたとしても、二人の中でシコリになったようなものがなくなって、良い意味でも悪い意味でも手紙で過去のことに区切りをつけられて、前へ進むことが出来たのだから。