52ヘルツのクジラたち/町田そのこ ネタバレあり
だから、お願い。
52ヘルツの声を、聴かせて。
登場人物
三島貴瑚
このクジラの声はね、誰にも届かないんだよ
わたしはわたしを生きられない
半年前に東京から祖母が住んでいた家の大分に移住してきた。無職。
毒舌。
愛(いとし)
つよくなる。これから、もっと
52と呼ばれる。琴美の子供。
虐待を受けている。
岡田安吾
恩で死ぬの?
死ぬくらい追い詰めてくるものはもう『恩』とは呼べないんだよ。それは『呪い』というんだ
キナコ、新しい人生にいこう
キナコの思いはお母さんには届かなかったけれど、ぼくには届いたよ
美晴の会社の先輩。貴瑚のことを「キナコ」と呼ぶ。皆からはアンさんと呼ばれている。塾の講師。優しい。
牧岡美晴
52は誰かとこうして笑うんだ、絶対
26歳。貴瑚の高校時代の友人。父親が違う妹がいる。
私に貴瑚の辛さの半分をちょうだい。私だって、貴瑚とアンさんといつも三人で笑っていたのに、何もできなかったことが辛かった。何にも知らないで責めたことを、ずっとずっと後悔してた。
貴瑚はやっと美晴に言えたけど、すぐにこんな素敵な言葉を言える美晴が好き。
このシーンで泣きました。頼ってもらえないのも辛いんだよ〜
匠
友達は捨てられるものじゃないよ。オレは貴瑚ちゃんの友達のままだよ。
美晴の年下の彼氏。
美音子
貴瑚と一時期ルームシェアしていた同居人。52ヘルツのクジラの声を教えてくれた人。
新名主税
貴瑚の元彼氏。前の職場の専務。父親に愛人がいる倫理観のおかしい一族の息子。
貴瑚は何も知らないもんな。でもそれでいいんだ。お前には、俺がいろんなことを教えてやれる
貴瑚は主税を運命の人だと思っていたが、それは仕方がないことだと思う。初めての彼氏だし、上記の言葉ってなんか、上からだし、洗脳とか依存みたいな言葉で反吐が出るから、私はこの言葉から、こいつのことは1ミリも信用してなかったから、読み進めれば、ほら、やっぱりなって。
清水
貴瑚にパイプ椅子を投げた元同僚。
麻巳子
主税の元婚約者。主税の知り合いの娘さん。
藤江
北九州市に愛が住んでた頃の近所の人。
末長武彦
愛の父親。クズ。
末長真紀子
愛の父方のおばあちゃん。癌で亡くなっている。
末長千穂
52歳。愛の父親の妹。愛を可愛がっていた。
愛の行方を探していたが、昨年交通事故で亡くなっている。
村中眞帆
三島さんが笑ってるだけで感動する
家の修繕を依頼した業者で働いている。貴瑚に親身になってくれる青年。
村中サチゑ
村中の祖母。前老人会会長。
昌子と年賀状のやり取りをしている。
村中悠美
村中の母親。コンドウマートで働いている。
村中眞澄
村中の父親。陽気。マジックを練習中。
ケンタ
村中の後輩。ピンク頭に鼻ピアスをしているが真面目。
キヨ子
貴瑚の祖母。
品城
老人会の会長。琴美の父親で、愛の母方の祖父。村中の中学時代の校長先生。
琴美
野良猫に餌やったら居ついて迷惑ってところでしょ?そんなら勝手に餌をやらないでくれる?束の間だけ甘やかすのって、ある種の暴力なんだよ。
愛の母親。よし屋で働いている。女子高生の時に愛を身ごもり、最初はスーパーで働いてちゃんと面倒を見ていた。
昌子
琴美の母親。愛の母方の祖母にあたる。今は離婚して、別府に住んでおり、そこで再婚した夫・秀治と子供食堂を運営している。
生島秀治
昌子さんの再婚した夫。涙もろいタイプで優しそう。
感想
誰にも聴こえないクジラの歌声は誰の心にもあるけれど、勇気を出して、寂しいとか、助けてっていうのは難しいし、もしかしたら、その声に自分自身で気づいていないのかもしれない。
自分のことでいっぱいいっぱいだから、誰かの心の孤独にも気づくのはもっと難しい。
だから、私は貴瑚みたいなんだ、と思った。
助けてって声を出せない人。
貴瑚は限界になって、やっと抜け出せて、気づいてくれる人がいたけど、
気づいてくれる、アンさんがいなかったらと思うとゾッとした。
私のクジラの歌声は誰が聴いてくれるんだろう?
そもそも、その声に気づくことは出来るのだろうか?
私は誰かのクジラの歌声に気づくことが出来る?
気づいても貴瑚みたいに助けられる?
クズの中に最初からクズじゃない人もいるから、厄介。
大事にしないんだったら、最初から期待させるな、産むなって思うけど、人生は捨てたものじゃない。
大事にしてくれない人に出会っても、ちゃんと大事にしてくれる人が後からやってきて、希望をくれる。
だけど、そのことを見極めるのが、難しい。
貴瑚は失敗しちゃったけど、愛に会えて良かった。
愛も貴瑚に会えて良かった。