名もなき道たち
学校帰り、あまりに暇だと言うクラスメイトと一緒に神宮前を歩いた。
普段は色とりどりの洋服が動き回るこの街が、今日は廃れていた。
というのも、台風の予報で誰も外を歩こうとしないのだ。
しかしながら、この時間は雨も降っておらず、生ぬるい風が吹いているだけである。
不思議なもので、現実に今どれだけ雨が強いかとか、風が強いかとかではなく人は予報を見て動いている。
案外人は簡単に騙せてしまう。
もちろん台風が来ているのは事実だろう。
けれども、現実に散歩できるほどの穏やかさであっても、予報一つで人々を大人しくさせることができる。
集団心理とか言うものだろうか。
そんなことを話しながらアテもなく歩き回り、そろそろ駅へ向かおうとした。
私がすれ違うのも危うい抜け道に入ると、クラスメイトはそんな道の存在に驚いていた。
その通りは明治通りに出られるのだが、その入り口はとても見つけずらく、普通ならば道などないと思ってしまう趣である。
私は散歩好きで、時間が許せばあちこち回遊魚のように歩きまわっている。
その過程でこのような場所を見つけるのだが、側から見ればむだな知識なのだろう。
小学生の時、通学路破り、通称『通ヤブ』が流行った。
周りと同じことをするのが嫌で仕方がなかった反抗期一同は、通ったら怒られそうな路地裏や民家の隙間、畦道などをわざわざ通って帰宅していた。
もちろん先生や住民に見つかって叱られることもあるし、生徒に告げ口されることもある。
そのスリルを味わいながらの帰路はとにかく楽しかった。
ちょっと悪い男の子がかっこいい時期だから、そのあたりももちろん期待していた。
そんなこんなで、地元の裏道はかなり詳しくなり、どんな土地にいても道を探す癖は治らない。
いつもの場所へつながる知らなかった道や、ワープしたとも勘違いするほどの近道を見つけた時の楽しさはたまらない。
無駄に動き回るのも悪くない。