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珍しい演奏会に行ってきました。

先日、川口成彦さんと
ヴィアチェスラフ・シェレポフさんの
『古楽器と現代楽器で聴く
 華麗なる鍵盤楽器の世界』
という演奏会に行ってきました。

ショパン国際ピリオド楽器コンクールで
第2位になられた川口さんの演奏を
TVでは聴いたことがあったのですが、
実際にフォルテピアノを体感してみたい、
そして演奏しているところを
見たくて行ってきました。

舞台上に鍵盤楽器3台!?

鍵盤楽器の演奏会というと、
2台ピアノの演奏会でない限り、
ピアノだけ、チェンバロだけという感じで
舞台上に1台だけ置いてあるのが
普通だと思います。

しかし今回の演奏会は
とても珍しいものでした。

なんと
チェンバロ、フォルテピアノ、ピアノの
3台が舞台上に並んでいたのです!

楽器を入れ替えるのは時間がかかるので、
確かに並べておいた方が効率いいですよね。

そして楽器の大きさそのものを比較するには、
そこに置いてあった方が断然わかりやすい。

3台も並べて楽器を比較する、
音色を比較するという演奏会は
なかなかないので、とても面白かったです♪

チェンバロとピアノは
ホールが所有しているものを使用。

フォルテピアノは持ち込みされた楽器でした。

今回、使用されたフォルテピアノは
モーツァルトの時代に作られた楽器を
新井千笑さんが復元されたものでした。

(楽器博物館ならともかく、
フォルテピアノを所有している
ホールはさすがにないのではと思います。)

フォルテピアノとは

フォルテピアノとは何だ?
と思われている方もいらっしゃると思うので、
すご〜くすご〜く前に
大学で学んだことを
思い出しながらご説明しますね。

ピアノはイタリアの楽器製作家
クリストフォリが1700年ごろに発明しました。

その当時の鍵盤楽器の主流は
チェンバロでしたが、
チェンバロは強弱を変えるというのが
難しい楽器でした。

強弱を可能にするアクションを発明し、
楽器として完成させたのが
クリストフォリです。

彼が発明したアクションは
現在のピアノの元となっています。

現在のピアノは金属のフレームなどが
使われていて、より大きな音、響く音、
そしてどんなタッチにも
耐えられるように作られています。

パワーアップしているところは
たくさんあるようですが、
元のアクションは1700年ごろというのは
本当にすごいなと思います。

ピアノという楽器の名前は
『小さな音も大きな音も出せる』
というのが由来です。

小さな音→ピアノ
大きな音→フォルテ

ピアノフォルテを省略して
ピアノと呼んでいます。
(現在でも楽器名の略語はPではなく、
 Pfと表記されます。)

ピアノと呼ぶと現代のピアノを
思い浮かべられてしまうので
区別するために古楽器は
『フォルテピアノ』と呼んでいます。

実はチェンバロは楽器分類が違う

同じ鍵盤楽器ですが、
チェンバロはフォルテピアノとピアノとは
楽器分類が違います。

フォルテピアノとピアノは
同じアクション構造を持っていて、
ハンマーが弦を打って音を出す楽器です。
→打弦楽器

一方、チェンバロは
弦をはじいて音出す楽器です。
→撥弦楽器

鍵盤があって見た目は同じような感じですが、
実は全く音の出し方が違うんです。

この音の出し方の違いによって
音色にもかなり違いが出ます。

3つの楽器の音の違い

3つの楽器の音を聴き比べた感想は…

やはり現代のピアノは迫力があるな!
ということでした。

3つの楽器を並べるため
場所の問題もあって広い大ホールでの
開催だったと思います。

大きなホールに見合う楽器はやはりピアノ。

チェンバロとフォルテピアノは
大きなホール向きではないなと思いました。
聴こえなくはないけど、
迫力があまり感じられませんでした。

この2つの楽器は
小ホールまたはサロン向きですね。

サロンや小規模の演奏会が
多く開かれていた時代には
それにあった楽器が流行していたんだろうな
と思いました。

逆かな?
楽器の発展に合わせて箱(披露する場所)が
変わって行ったのかもしれません。

チェンバロは、はじいて音を出すため
独特な音がします。
そしてちょっと雑音がするんですが、
そこがチェンバロの良さですね♪

フォルテピアノはピアノと
同じ構造を持っているとはいえ、
現代のピアノよりも音量は小さかったです。
でもしっかり強弱の違いがわかりました!

そして現代のピアノと同じように弾いては
すぐに壊れてしまうんだろうな
というような繊細な感じがしました。

弾き方の違い

鍵盤奏者は普段練習している楽器と
本番で弾く楽器が違うことが当たり前です。

いつも本番では
はじめましてのピアノで
弾かなくてはいけないので、大変です…。

同じピアノでもそれぞれ個体差があるので、
それをリハーサルの時に弾いて確かめ、
より良い演奏のために
弾き方やペダルの踏み方などを
調整しなくてはいけません。

リハーサルができない時もあるので
その時は弾きながら
感覚で調整して行きます。

私はブライダル奏者もしていますので、
ピアノだけでなく、
キーボードも演奏します。

オルガン音色やストリングス音色で弾く時は
いつも通りのピアノの弾き方で
弾いていてはダメなので、
慣れるまでとても苦労しました。

ピアノとキーボードでも大変なのに、
チェンバロ、フォルテピアノ、ピアノを
弾き分けるというのは
大変だろうなと思いました。

ここからは今回の演奏会で
お2人が弾かれている様子を観察して
私が感じたことを書いてみますね。

チェンバロは
音量を変えるということが
難しい楽器なので、
そもそもタッチを変える弾き方が
不必要なのかな?

重みをあまりかけず
指だけを使ってぱらぱらと
動かしていく弾き方に見えました。

フォルテピアノは打弦楽器なので、
ピアノに近い弾き方を
しているように見えました。

チェンバロと違って
少し上から落として打弦する弾き方や
重みをかける弾き方だったように思います。

しかし、やはり繊細な楽器なので、
瞬発的に当てるという鋭い弾き方は
されていなかったように思います。

フォルテピアノをピアノと同じような弾き方で
弾くと多分壊れるんだと思うんですよね…。

今回使用されたのはモーツァルトの時代に
作られた楽器の復元でしたが、
もっと後のリストの時代のピアノは
このフォルテピアノより
もう少し頑丈だったと思います。

それでも現代のものよりはやはり繊細で、
リストの演奏に耐えられるピアノは
あまりなかったようです。

ベーゼンドルファーのピアノは
リストの演奏に耐えたと
一躍有名になったというエピソードが
残っているくらいです。

このエピソードから
現代のピアノになるまでの
フォルテピアノの発展と昔のピアノが
いかに繊細なものだったかがわかります。

川口さんもシェレポフさんも
お2人とも古楽器の専門でいらっしゃるので、
中でもフォルテピアノの演奏が本当に素敵で、
繊細な音、そして繊細な表現でした。

現代のピアノでは
手首やひじ、
時には全身を使って音を出しますが、
フォルテピアノではそこまでできない。

指先の感覚、重みのかけ加減が
とても大切になってくるんだろううなと
演奏を聴いて思いました。

私はインパクトのある音や
切れ味鋭い音を出す方が得意なので、
繊細な音、柔らかい音、なめらかな音を
出せるよう日々研究しています。

この演奏会を観て、聴いて
ピアノの原点のようなものを
感じることができ、本当に勉強になりました。

フォルテピアノのような繊細な楽器を
イメージして弾くと今よりもっと
柔らかな音が出せるようになるかなぁ?
なんて思いました。

最後まで読んでいただき
ありがとうございました!

ピアノや鍵盤楽器に少しでも
興味を持っていただけると嬉しいです♪

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