
【詩と雑文】今年ももう終わるので
ほら、ぼくにふれて
ぼくが最後だから
もう逃げないから
君の手でぼくの時間をとめて
君を見つめたままで
すべてをとめて
息を切らして
ぼくを追いかけて
やっと捕まえたって
嬉しそうな顔して
切なそうな顔して
ほら、この瞬間だけは
君のすべてがぼくのもの
ぼくだけを見つめる君
ぼくだけが知ってる君
ほら、ぼくにふれて
これでぼくらはえいえ…
以下、妄想てんこ盛りの雑文。
小さい頃に鬼ごっこはやったことあると思うんですが、結構ローカルルールというか、変わったルールを追加したものってありませんでしたか。その中に氷鬼というのが私の地域ではありました。これはきっとメジャーな方なのでご存じの方も多いはず。
簡単に言うと、鬼にタッチされると逃げている人は凍って動けなくなるっていうもので、最後の一人まで凍らせたら鬼の勝ちというルール。
この遊び、すごくドキドキしませんか。
鬼が一人で、自分が最後の一人になって逃げている時、鬼は必死に私を捕まえようと迫ってくるんですよね。他の人はみんな凍ってしまって、世界には鬼と私の二人きりになるんです。それを、必死の形相で追いかけてくる。逃げても離れても追ってくる。これってドキドキしませんか。
氷鬼に凍らせられた人も、他の逃げている人にタッチしてもらえたら氷が溶けてまた動けるようになるルールなんですよね。だから、鬼は逃げる人が複数人いたら、凍らせた人を溶かされないように警戒しながら追いかけるから、本気で全力で追いかけ回すのって最後の一人の時になるんですよ。最後の一人を捕まえたら勝ちですし、それはもう必死に。
で、最後の一人、というか私なんですけど。私は、その鬼の必死な顔も、乱れた呼吸も、全部全部、独り占めできちゃうんですよね。
あぁ、この人は私のためにこんな顔して必死に迫ってくるんだ、と思うんです。
もういいかなってところで、急に足を止めて、鬼の方を向いて、両手を広げるんです。
「さあ、おいで」
と言わんばかりに。
逃げるから追っていたのに、急に迎え入れようとするんだから鬼は戸惑いますよね。
突然のことで戸惑う顔も、意を決して近づいてくる足取りも、高鳴る鼓動も、全部全部私だけのもの。
「さあ、触って終わらせて。
世界を君の手で止めて」
どこにさわってくれるんでしょう。やっぱり両頬がいいですよね。
きっと私は満足しきった恍惚の表情で、その両手を迎え入れる。そして、その表情のまま、君の顔を見たまま、見つめ合ったまま、手が頬に触れた瞬間。
世界は停止する。
時間停詩『こおりおに』
※
だいぶ前に書いて、朗読していた作品。
冬が訪れるのを待っていて、そしてタイミングを逃していた作品。
2022年は悲しいこともあったけど良いことや嬉しいことの方が多かったから、もし世界が止まってしまうなら今年がいいなって思って。とはいえ、来年以降も良いことがあるのを充分に期待できるから、この文章は2022年に置いていきましょう。
それにほら、きっと溶かしてくれるだろうし?