【読書レビュー】『むかしむかしあるところに、死体がありました。/青柳碧人』(双葉社)(2020年9月4日)
おはようございます。
森貴史です。
皆様コメントして頂きありがとうございます。Twitterも含めて、全部読まさせて頂いております。
さて、本日より読書レビューの記事を不定期にあげていきます。レビューといっても、殆ど紹介のような文章ですが、楽しんで頂けたら嬉しいです。
『note』になって第一回目は、先日新作が出たばかりの青柳碧人先生によるこちらの作品。
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『むかしむかしあるところに、死体がありました。/青柳碧人』(双葉社)
(話のネタバレ含む)
「2020年本屋大賞」にノミネート、さらに紀伊國屋書店スタッフが全力でおススメするキノベス!2020で第二位を獲得して話題になった異色ミステリー短編集。
作者は、数学ミステリー「浜村渚の計算ノート」でシリーズ累計60万部を突破した青柳碧人さん。
この本を読んだ段階で「本屋大賞」の結果は出ておりまして、10作品中10位と最下位だったんですね。
その前情報を知った上で読むので、果たして楽しめるのか不安だったんですが……結果、
「最下位とは思えないぐらい読み応えのある傑作!しかし、最下位というのも納得出来る!」
……決してけなしているわけではないので、あしからず。
タイトルから想像出来るように今作の「核」となるのは、昔話。
誰もが知っている名作に、本格ミステリーの要素を融合した全く新しい、「昔話ミステリー」というジャンルが完成しました。
短編のタイトルを見ても、「一寸法師の不在証明」「密室竜宮城」「絶海の鬼ヶ島」と、興味を惹かれるものばかりなのです。
「一寸法師の不在証明」では、村で起きた殺人事件の容疑者は一寸法師!? だが、その時間一寸法師は、鬼の腹の中にいた?このアリバイを崩せるのかーー
「密室竜宮城」では、竜宮城内で密室殺人事件!? これを解き明かせるのは、外部から来た浦島太郎のみ!?
と、あらすじだけでもう面白そうだ。
さらに宣伝広告にも力を入れており、
「一寸法師×アリバイトリック」
「浦島太郎×密室トリック」
「桃太郎×クローズドサークル」
と、ミステリーをさらに細分化したジャンルと昔話をコラボしていることを公表しているので、色んな味わいを楽しむことが出来る。
ミステリーファンならずとも、読んで損はない一級品へと仕上がっている。
……となると、当然誰しもが浮かぶ疑問があります。
どうしてそんな作品が、「本屋大賞 最下位」という結果になってしまったのか?
ここからはあくまで僕の推測なのですが……
今回のノミネート作品の中で、「異色」の類だったからないでしょうか。
どんなジャンルにも「正統派」と「異端」というものが存在する。
そして、ランク付けをする際に(審査員の好みにもよるが)どうしたって正統派の方が票を集めやすい。
自分の本職である「お笑い」で例えるなら、「爆笑オンエアバトル」(NHK)だ。一般公募で選ばれた100人の審査員が投票し、10組中上位5組が番組でオンエアされる……そうなると、優等生的芸人が勝ってしまう傾向にあり、キャラクター性が強い芸人は厳しい戦いを強いられていた。
まだノミネートされた全ての作品を読んだわけではないが、表紙のイラストやタイトルから、一番王道から離れた作品に見えてしまった感は否めないのではないだろうか。
因みに個人的には「密室竜宮城」と「絶海の鬼ヶ島」の二作品がおススメ。
昔話パートも簡単なあらすじさえ知っていれば苦労せず読めるし、事件のトリックも上手くファンタジーを取り入れたユニークな作品となっていた。
ただ、全作ラストの後味が悪かった気がする。
とにかく「発表された時代が悪かった」と思う、不運な一級品である今作。
三時間もあれば読めると思うので、是非一度読んでみて下さい!
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こんな感じとなっております。
〝読書芸人〟目指して、頑張ります!
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