![見出し画像](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/151776667/rectangle_large_type_2_f2bde4d8d010e1a2d9ee9bf7afba825c.jpeg?width=1200)
「これといった趣味がない」という趣味を持つ。
「定年本」、とりわけ老後を中心に取り上げた本には「きょうよう」の譬え話がよく出てきます。もっともこの場合の「きょうよう」とは、いわゆる「教養」のことではなく「今日用」、つまり今日やるべき予定や用事のことを意味していることに、現役である「あなた」にしてみれば、まったく思いもつかなかったことでしょう。
つい最近まで「現役」であった「わたし」にしても、「何も予定がカレンダーにない日々」がやってくるとは、正直思いもしませんでした。そして残念なことに、そんな多かれ少なかれ「きょうよう」のない日々は、確実にあなたにも訪れます。
そうならないように「趣味」を持ちましょうと、多くの「定年本」はアドバイスをくれますが、たとえどんなに「趣味」で埋め尽くされた日々を送っていようとも、必ずふとこう思う日がやってきます。
今日のこの用事、よくよく考えてみると「予定のために作った用事だった」
皮肉なもので、現役の頃にはあれほどストレスに感じていた、「びっしりと予定が詰まったアウトルック・カレンダー」でさえ、懐かしく思い始めるのです。すると「あなた」は、次のように反論されるかもしれません。
「あの頃(現役)の頃の予定とは、いわば自分が好きで入れた予定ばかりではないから、今とは全く性質が違うし、今の予定は毎日自分のやりたいことだけなのでストレスもないし、何より充実しているよ」
確かに、それはそうなのでしょうがその一方で、「自分の意思に関わらずに勝手に埋められた昔のカレンダー」と「自分の好きなこと(趣味)だけで埋めたカレンダー」の間には、ある大きな違いが存在します。それは、すでに前述したように「あなたのその予定、本当は『暇つぶしに過ぎない趣味』のために、一生懸命に埋めたものではないですか?」と言うものです。
おそらく「あなた」も、これまで続けてきた趣味の一つや二つはお持ちでしょうし、さらに「死ぬまでにやりたい100項目」といったリストなんかも、ひょっとしたら既にお持ちかもしれません。そうした人がいる一方で、「やりたいことが全くない」、「趣味らしい趣味もないし、これからも持てそうもない」と言う方も少なくないのです。
ちなみに、私が「これは役に立つ」と思った数少ない「定年本」の一つに、『定年入門・イキイキしなくちゃダメですか」』高橋秀実著・ポプラ新書)があります。これまで往々にして「定年退職者」は、やれ「これからは、もっと社会貢献をしなくてはならない」とか、「ひきこもらずに、もっと趣味やボランティアを」といったように、「イキイキと生活しなくてはならない」と主張する「定年本」が多いのが事実です。ここからは、そんな無趣味な「あなた」のために、前述した高橋氏の著書から一つご紹介させてください。それは、
「毎日、何をされているのですか?という問いも、趣味をたずねているようなニュアンスを帯びてしまう。だが、この『趣味』という言葉は、明治時代につくられた翻訳語である」
えっ、趣味って翻訳語だったの?知らなかった……。
「もともとは英語の“taste”、つまり味わう、味わいという一種の味覚のようなもので、決して“hobby” (余技)や“amusement ”(娯楽)の意味ではないのです」
「味わう」が趣味のもともとの意味だったなんて、これまた知らなかった……。
「実際、明治時代の本や雑誌を読んでみると、『趣味は○○』とではなく、『○○に趣味を覚える』という言い方をしていた」
む、むっ、なるほど……。
「対象物より本人の感覚。定年後は『何もない』と嘆く人もいるが、娯楽が何もないなら『何もない』ことを味わうことが趣味になる」
こ、これは目から鱗の発想だ!
「ぼんやり過ごすのも趣味だし、退屈を極めるのも趣味。『定年後の趣味』というのも、定年後という境涯をどう味わうか、その吟味のセンスと解釈したほうがよい」
どうでしょう、この考え方はこれまで、「これといった趣味がない」と思い悩んでいる方には、とても参考になったのではないかと思います。
それは、例えば「趣味はゴルフ」ではなく、「ゴルフしながらコースを歩き回ることを楽しむ」ことが趣味なわけですし、同じように「趣味はグルメ」なのではなく、美味しいものを食べることで「口福を感じること自体が趣味」となるのです。
すると、これからは自然と「○○を感じる、覚えること自体が趣味」になるわけで、たとえば必死になって近所のカルチャー・センターの「数ある講座の中から、めぼしいのを見つけ出す」ことではないことが、よくわかります。
これからは定年後に「特にこれといって打ち込む趣味がない」と嘆き悲しむのではなく、自宅に引き籠り、ボーッとしている毎日が私の“趣味”ですと「堂々としていればいい」、そんなポジティブな気持ちになれます。
そんな高橋さんから頂いた「定年」にまつわる様々なアイテムが満載なのが、こちら↓、「定年いたしません!」です。ぜひよろしくお願い申し上げます。
![](https://assets.st-note.com/img/1724469317201-3vVDQyJ8mu.jpg?width=1200)
なおご注文はこちら↓から。