気仙沼きくらげ園で百姓について考え、煙雲館庭園で歴史にふれる
国指定名勝・煙雲館庭園を見ようと、松崎尾崎防災公園を2ヶ月振りに訪れた。
煙雲館庭園には駐車スペースがあるが、初めて訪れることから駐車スペースがあると確信を持てず、確実に駐車可能と考えられた松崎尾崎防災公園を頼った形である。
煙雲館庭園までは、松崎尾崎防災公園から徒歩15分程度である。
途中、JR松岩駅(BRT駅)と片浜公園がある。こちらに駐車場はない。
須田生花店・気仙沼きくらげ園にて百姓の生き方に示唆を得る
松岩駅・片浜公園の前を通り、煙雲館庭園へと行く途中、大きなドーム状の建物が目に留まった。興味を惹かれ、入り口側に回ると気仙沼ボルダリングジムと書いてある。
一層興味を惹かれ、入り口の方へと歩を進めたところ、所有者の小野寺氏と近所に住んでいる方が談笑していた。挨拶を交わし、ボルダリングジムの表記が気になり訪れた旨を伝えると、中へと快く導いてくださり、お茶を勧められた。
聴けば、現在はボルダリングジムを閉じ、きくらげを育てる施設として運営しているそうである。東日本大震災後、片浜地区に訪れた東洋大学ボランティアの面々が、休日に楽しめる場所がなかったことから、ボルダリングジムを作ったのが始まりだそうである。
ボランティアの面々が去った後も暫くボルダリングジムとして運営していたが、パンデミック(新型コロナウイルスによる自粛環境)を機に閉業し、私設をきくらげの栽培と販売するために転用し、今に至るようだ。
小野寺氏とは、2時間以上にわたって様々な話を行っている。片浜地区の話、東日本大震災後の須田生花店の話、生花店の仕事の話、林業や百姓の話。とても多岐にわたる話題について談笑する中で伺った話の数々は、筆者にとって新鮮で、見聞を広められる魅力的な話だった。
とりわけ百姓に関する話は、今後の地方暮らしにおいては示唆に富む内容だったように感じられる。昔は、多種多様な仕事を組み合わせて通年の収入を得られるような生計の立て方がなされていた。
つまり、農作物の収穫期には農業で生計を立て、それ以外の時期には漁業や養蚕などその他の仕事で食いつなぐといった形である。(比喩として)百種類の仕事をこなすからこその百姓だ(以下リンクは広告)。
それが農家は農業に、漁師は漁業にと特定の仕事に専念するようになり、今に至る。だが、現代の地方において、特定の仕事ばかり行う形で生計を立てるのは困難になってきている。
市場が縮小する一方であり、生活コストも上がる一方であるためだ。歳を重ねれば重ねるほど、雇用での稼ぎは期待できなくなっていくため、それが顕著になる。
ゆえに、現代こそ様々な収入源を持つ生き方の必要性が高まっていると言える。もちろん、稼ぎが多様化すれば、非効率性は高まる。特定の会社に勤めて、そこからの給金だけで生活できるならば、それが最も効率的であり、また目先の不安に囚われて日々齷齪する必要もなくなる。
小野寺氏との話の中でも、事業者として生計を立てる難しさは、度々話題に上がっており、筆者自身事業者として生きてきたため、その難しさは肌身に染みている。他方、事業者として様々な食い扶持を持っておくことは、特定の収入源に依存するリスクを低減できるメリットがある。
東日本大震災やパンデミックによって、特定の企業、特定の事業に依存するリスクは、誰もが感じられたと思われる。百姓の生き方は、そうしたリスクを下げる上で重要性は高い。VUCA時代と呼ばれる、社会環境の変化の激しさに対するリスクヘッジとしても有効である(リンクは広告)。
小野寺氏と話す中で、そうした生計を立てていくことの難しさや地方で稼ぎながら暮らしていく上で大切な考え方など、様々な示唆を得られたのは、とてもありがたかった。偶然の出会いから生じた談笑の時間が濃厚なものとなったのは嬉しい限りである。
煙雲館・煙雲館庭園を歩きながら歴史と美しい庭園の造形にふれる
小野寺氏との談笑後、煙雲館庭園を訪れた。小野寺氏が案内を買ってくださり、煙雲館庭園にまつわる説明を受けながら、庭園内を巡った。生憎の雨であったが、詳細な説明を受けながら回れたため、良い時間となった。
煙雲館は、伊達政宗公で知られる伊達家御一家筆頭の鮎貝氏歴代の居館である。十二代鮎貝太郎平盛房の三人の子供は、気仙沼の先人として大きな活躍を果たしている。
長男・盛徳氏は気仙沼初代町長として地方自治・地方振興で辣腕を振るい、次男・落合直文氏は歌人として与謝野鉄幹・尾上紫舟・金子薫園等の有名な歌人を門下に迎え、世に輩出している。三男・房之進氏は、与謝野鉄幹等とともに短歌結社「あさ香社」を興し、朝鮮に渡った後に朝鮮文化功労賞を受賞している。
煙雲館庭園は、清水動閑の作庭で知られ、池泉の中に築山が島のように佇む回遊式池泉庭園で、岩井崎や大島を借景として作られた、とても美しい庭園である。煙雲館の屋内は、現代ではあまり見られなくなった天井の高い建物であり、古来の美しい造形が一目で認められる建築物である。
恐らく一人で訪れていたら、庭園にまつわる知見は得られず、ただ池泉の周囲を巡って去るだけの時間になったと思われる。小野寺氏との偶然の出会いを経て、案内を受けながら巡り、管理者の方と話す時間を得られたからこそ、充実した時間となった。心から感謝するばかりである。
尚、煙雲館庭園・煙雲館は私有地である。そのため、観覧にあたっては所有者に挨拶してから巡るようにして欲しい。庭園内は苔も含めての造形である。石の上を歩き、地面は歩かないようにして欲しい(裏側は地面を歩く形になる)。
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