3.11で海に沈んだ限界集落の式年大祭の影にあった静寂
2023年6月3日。
およそ50年振りに陸前高田市において全国植樹祭が開催されている裏で、隣の大船渡市にある三陸町綾里で式年大祭が催されていた事実を知っている人間は少ないかもしれない。
五年大祭と呼ばれるもので、旧村社である天照御祖神社(あまてらすみおやじんじゃ)を奉納先として五年に一度催されているものである。
本来、二年前に開催される予定だったが、新型コロナウイルスによる騒動を背景に開催が見送られ、本日催されることとなった。
大船渡市街は、全国植樹祭にご来訪された天皇皇后両陛下の護衛による交通規制等で移動がし難く、また全国植樹祭の方には取り立てて関心を掻き立てられるものもなかったため、こちらに興味が向いた。
さりとて三陸町綾里も決して広い道があると言える場所ではなく、式年大祭による各人の移動により車での移動をし易い状況と言えなかった。そもそも筆者は、祭りに強く惹かれるタイプの人間でもない。
ということで、踊り手や祭り組が去った後の天照御祖神社のある地区を訪れた。時間帯は昼下がり。人はほとんどおらず、静寂が佇む漁港が広がっていた。
田浜と呼ばれる地区である。東日本大震災時は、一帯が波にさらわれ、海と化したと聞く。奥に見える水色の建物は製氷施設だが、当時は屋上部分に漁船が激突していたそうである。
三陸町綾里は、リアス式海岸の影響により、東日本大震災においては非常に高い波を受けた地域の一つであり、一時的ではあるが大船渡市内においては唯一陸の孤島に近い状態になった地域と言える。
そしてこの田浜地区と対岸にある石浜地区、そこから地続きの港地区は、まさにそうした津波の影響を一際大きく受けた地区である。とりわけ田浜地区は、その爪痕を今でも見られる大船渡市内においては数少ない地区に違いない。
右側のコンクリート壁は水門である。東日本大震災以前より、田浜地区は水門と山に囲われた地区であった。ある種、「進撃の巨人」を想起させる地区である。
東日本大震災時には、中央部分一帯が海に沈み、そこに存在した家屋全てが瓦礫と化している。なお、一部の土地は自治体が購入し、今も買い主が見つからないまま放置されている(この先も買い手が現れるとは思えないけれども)。
祭りの始点となった天照御祖神社
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