ヒーローの右腕(左腕)
僕のTwitter上での名前「バイヨン」
どうでもいいかもしれないが、フランスの漫画「ミシェル・ヴァイヨン 」から取っている。
おそらく日本人の3人に1人は知らない作品だろう。フランスでは非常に歴史が長く1957年から今現在まで続いているレース漫画だ。
主人公のミシェル・ヴァイヨンはフランスの自動車メーカー、ヴァイヨン社の御曹司。彼をファーストドライバーに据えたチーム・ヴァイヨンはF1を始めとした世界中のモータースポーツに挑戦していく。
というのがシリーズの大筋だ。
ミシェル・ヴァイヨンがその他多くの漫画と大きくかけ離れているのは現実とのリンクだろう。
初期の頃から実在のスタードライバー、名門チームと鎬を削り、90年代以降は積極的に現実のモータースポーツとコラボを始めた。
フォーミュラルノー、ル・マン24時間、WTCC、マカオGP...
ヴァイヨンのエンブレムとトリコロールカラーを纏ったマシンたちは漫画さながらに現実のコースを駆け巡り、時に華々しい結果を残した。
2017年、耐久レースの名門、レベリオンレーシングとコラボ。31号車が年間タイトルを獲得した。
現在日本で活躍中のサッシャ・フェネストラズ。
ヴァイヨンカラーのダラーラF3でマカオGPに参戦。
2018年には3位表彰台を獲得。
そんなミシェル・ヴァイヨンは2021年、アメリカで開催される伝統のヒルクライムレースであるパイクスピークを挑戦の舞台に選んだ。
全力で威嚇するコンドルのような巨大なウイングを持つマシンたちが、標高4300mの山を駆け上がっていく。
ミシェルがこの過酷なヒルクライムの相棒に選んだのが今回紹介する『YEMA・ラリーグラフ』なのだ。
YEMAというブランドも日本ではあまり馴染みはないだろう。1948年にフランスで創業した腕時計としては若めなブランド。クォーツショックの影響で80年代以降は半分死んでいたこともあり、マイナーなのも仕方ない。
そんなYEMAが2005年にフランス資本で復活。
日本製のムーブメントをレトロな外装で包み、比較的リーズナブルな価格で展開した。
今回のモデルはモータースポーツへのリスペクトを感じるラリーグラフシリーズのコラボウォッチだ。
箱を開けた第一印象はHPで見た姿よりも10倍ハンサムなことだ。フランス国旗のトリコロールカラーで構成されているものの、派手さはない。先が赤く塗られた秒針は実に見事なアクセントになっている。
パッと見ではコレが5万円で買える時計とは信じられないだろう。
サブダイアルのデザインは、ミシェル・ヴァイヨンの第1巻に登場したル・マンレーサーのグリルをモチーフにしている。
ただこのデザインがクセ者でクロノグラフの積算計が少々見にくくなっている。
とはいえ時速300kmで時計を覗き込もうものなら一瞬で壁にキスして神に召されることになるだろうし、僕がストップウォッチを使うのはせいぜいお茶を淹れる時くらいだから大きな不満はない。
慎ましやかなヴァイヨンのエンブレム。気恥ずかしさを感じることなくチーム・ヴァイヨンの一員になれる。
心臓はセイコー製のVK64ムーブメント。特に語ることはあるまい。一応メカクォーツと言ってクロノグラフ針は機械式のようなスイープ運針を見せる。
もちろん本物の機械式に比べたら少々ぎこちなさはあるが、何も言われずに手渡されたらクォーツ時計とは気づかないだろう。
最新刊のパイクスピークでは確かに僕の手元にあるラリーグラフと同じものをミシェルが愛用している。
実在のレースチームと違って、紙の中にしか存在しない彼らの場合、普段身につけられるグッズの選択肢は多くない。
この素晴らしいコラボを実現してくれたYEMAに感謝しなければならない。
この1本を巻いてさえいれば世界一伝わらないコミックヒーローのコスプレの完成だ。