図書館でパワーストーンを使って占いをしているあの女性は、一体何が本業の人なのだろうか?
今私の隣には透明度の高い水晶(2個。しかもそれぞれ茶色と黒色の石でできた腕輪がセットされている)を机の右上部に置いたのち、見知らぬ何かの文字が書かれた紙の上で、熱心にパワーストーンをぐるんぐるん回しているビビットカラーのシャツを着たサラサラロングのお姉さんがいる。
気になる。気になって仕方がない。
「その高そうな水晶の上に、ちんまりのっかっているこれまた高そうな腕輪にはどんな意味があるんですか?」
「そしてあなたは今鎖のついた薄ピンクの石を回しまくることよって、何をそんなに真剣に占っていらっしゃるのですか?」
しかもここは香港の図書館。
もう一回言おう。
私と彼女がいるこの場所は占いの館などではなく、本を読む人が集う図書館なのだ。
しかもこのお姉さんを見たのはこれが初めてではない。
結構な頻度で見かける。
何をしている人なのだろうか?
たぶん予想だけど、占いが本業の人ではなさそうだ。きっと占いで食べていくことを目指している人だと思う。勘だけど。
用事もないのに外に出かけると、こういう不思議な人を発見できるから良い。今までどんな人生を送ってきて、どうやって生きていっているのか?
全然その人の風貌から伝わってこない。こういう得体が知れない人は、想像力を掻き立ててくれるから大好物だ。
異国の地に住んでから、自分の理解の範疇を超えたおかしな人が世の中にごろごろ溢れていることを知った。面白いことは結構近場に転がっているのかもしれない。
と、こんなことを失礼極まりないことを隣の見知らぬ日本人が思っている事など知るわけもない香港人のお姉さんは、変わらないスピードであいわらずパワーストーンを回し続けている。
はてこの女性はどこから来て、どこに帰っていくのか。
こんな不思議な人にも親がいて、もしかしたら夫や子供もいるのかも知れないと思うと何やらニヤニヤが止まらなくなる。
そしてこういう人を見ていると、人の目を気にしすぎることの馬鹿馬鹿しさを感じる。確かに図書館で占いをしてはダメなんて決まりはない。
だけど「普通」はそんなことする人はいない。と思っていた、今までは。
だけど自分が思っていた「普通」は日本だけ、もしくは自分が決めていた自分だけの「普通」だったのかもしれない。
こんなことをつらつら書いていたら、占いのお姉さんはひっそりとあの重そうな水晶をピンクのリュックサックに大切そうに詰め、どこかに帰っていった。さようなら、心の中でつぶやく。
蛇足だが、「彼女は何をしてる人なんだろう」的な独り言は英語で、
I wonder what she doseというらしい。
最近ちょうど英語学習中に出てきたので、ここに無理やり詰め込んでみる。これで#英語学習なるものをつける権利を私は得られただろうか。
一人で英語と格闘していると虚しくなる瞬間がふと訪れる時があるので、ここでいつか仲間に出会えると嬉しい。
では私もそろそろ帰ろう。外はいつの間にか日も暮れて、さっきから図書館の職員さんが隣の椅子をしまいつつ、早く帰ってくれオーラを放ち始めたから。