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【236日目】現象は心の影

ご隠居からのメール:【現象は心の影】

亡くなった徹さんの研究テーマは「意識」だった。「現象は心の影にすぎない」と中学生の頃から言っていて、その頃はピンとこなかったが、今は徹さんの言う通り、「現象は心の影」にすぎないかもしれないと思う。仏教の唯識ゆいしき道元どうげんの『正法眼蔵しょうぼうげんぞう』、哲学の唯心論ゆいしろんなどを研究していた。井筒俊彦いづつとしひこの『意識の本質』を読めともすすめられたが、まったく理解できなかった。


大事なものが、「もの」や「かね」ではないことはわかるが、腹がすけば、おいしいものを食べたくなるのが人間のかなしい性(さが)だ。

横溝正史よこみぞまさしの小説では、炭焼きをして、細々と生計をたてている「尼子の落人」を皆殺しにした村人は後悔と懺悔の心から祟りを怖れ、八つ墓明神にお参りして怨霊退散を祈願する。黄金三千両を奪おうという欲心にかられたのだが、黄金は見つからなかった。そもそも「かね」のために人殺しをしようという欲心をおこしたのがきっかけだったのだ。殺人という行動にはしれば、もうとりかえしがつかない。

同じような事件は現在でも毎日のようにテレビで報道されている。もっと徹さんの哲学を学べばよかったのだが、徹さんは初心者向けの入門書を書いてくれなかった。その代わり、酒を飲みながらいろいろ話をしてくれたので、雑談の切れ端を何とか思い出そうとしている。


「大同からの便り」以後の過去メールを整理しているうちに、すべては、結婚式で披露された墓参りのビデオメッセージからはじまっていると、あらためて思った。あれから、「訃報」「ブログ(あるウェディングプランナーの思い出」「大同からの便り」「思いがけない電話」「戸籍謄本」「過去帳」などの語りかけがあり、メールによる情報共有や過去へのタイムスリップがはじまった。

やはり結婚式は必要な儀式だと、あらためて思う。


返信:【Re_現象は心の影】

徹さんはスゴイね。中学の頃から「現象は心の影」と発言しているとは、もってうまれた哲学者だね。「意識」や「精神」「心」の勉強を四十五歳になってからはじめようと思っている自分は、ラッキーだと思っていたが、世の中にはスゴイ人がいるね。

まだ、ざっくりのアイデアだが、人格者の教科書、「偉人の語録通りの生活をしたらこんな人生になった」みたいな文章をまとめたら面白いのではないかと、構想している。「息子へ紡ぐ物語」のもう一つの側面、「精神的豊かさ」のヒントをまとめた文章だ。論語など、偉人の語録はたくさんあるが、なかなか覚えていられない。

毎日、心穏やかに生きていくヒント、あたり前の生活に「意識」と「行動」を取り入れることで、心豊かな人生が送れるというものだ。半面、「後悔」と「懺悔」についても触れていけたら、人の役に立つのではないかね。

とはいえ、タバコも吸わない、酒も飲まない、ギャンブルもしない、喧嘩もしない、恋もしない、バカもやらないとなると、人として面白みに欠けてしまうから、そのあたりの葛藤と、ギリギリの線引きまで描けたらいいよね。

もし、じぶんの結婚式のときに流した「墓参りの映像」から現在の行動につながっているのであれば、それは、すごいことだ。スピリチュアル商品として販売したほうがイイね(笑)。

あの映像からはじまり、夫婦仲をとりもつところまでの流れが、この話の顛末なのであれば、核家族として、ご先祖さまや家族とは離れて暮らしていても、直系家族のように支えてもらっていることになる。


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