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スクール長コラム 「デザイン思考を考える」②

9月11日 神戸大学V.School長 國部克彦

<デザインとデザイン思考の5つのステップ>
デザイン思考というのはどういう思考なのでしょうか。ロジカル思考であれば,論理的に考えるのだなとか,システム思考であればシステムとして対象を見るのだなとか,何となくイメージしやすいですが,「デザイン思考」と言われても,そのままではイメージしにくいかもしれません。それもそのはずで,デザイン思考とは,デザイナーが仕事をするときの考え方をプロセスに分割したものなので,デザイナーの経験がなければデザイン思考というだけでは何のことは分からないと思います。このことがデザイン思考という言葉の魅力でもあり,怪しさでもあります。デザインは英語ではdesignで,これは「~から外へ」という意味のdeと,「記号」という意味のsignからなっていて,文字通り解釈すれば「記号から外へ」です。もちろん,記号から外に出るためには,最初に記号化しないといけませんから,「記号化して外に出す」つまり「記号化して外部で適用する」という意味と解釈すれば,designの本質に近い理解になると思います。これまでの議論を思い出してもらえれば,記号化するということは,形式化するということで,「世界」を創るということです。そして,「外へ出す」とは,その「記号」を「世界」の外に出すということです。したがって,デザイン思考では,「世界」はどこから来て,どこへいくのかということを考えることになります(今まで議論と結びついてきたと思いますが,忘れた方は質問するか,復習してください。)デザイン思考には,さまざまなバージョンがありますが,最も標準的なデザイン思考は,次の5つのステップからなるとされています。①共感(emphasis)→②定義(define)→③アイデアだし(ideate)→④試作(prototype)→⑤検証(test)。これはデザイナーがユーザーから依頼を持ち込まれたときに,このようなステップで作品を作っていくことから,さまざまな問題解決に応用しようということで工夫されてきたものです。このデザイン思考のプロセスを,「日常生活における心の豊かさ」のような価値創造のプロセスに応用するとどうなるでしょうか。これから順番に考えていきましょう。

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