V.School

社会を変える原動力となる価値を共に学び、したいことを実践する神戸大学の新しい学びの場です。価値あるものがどのように生まれて来たのか、そして価値をいかに具現化するのか、を理解しながら、自らの専門分野や得意分野に広い視野と進むべき道の切り拓く力を身につけます。

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社会を変える原動力となる価値を共に学び、したいことを実践する神戸大学の新しい学びの場です。価値あるものがどのように生まれて来たのか、そして価値をいかに具現化するのか、を理解しながら、自らの専門分野や得意分野に広い視野と進むべき道の切り拓く力を身につけます。

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管理者より

ここに掲載する文章は,執筆者の個人的な見解で神戸大学の組織としての見解ではありません。

    • スクール長ダイアログ <価値創造と民主的な社会④>

      12月18日 神戸大学V.School長 國部克彦  民主的な社会とは個人の尊厳を第一にする社会と定義して議論を展開してきましたが,尊厳は守るものではなく,それを発揮することで,民主的な社会が促進されます。コンビニに行って,自分の希望に合うものがなく,何らかの妥協をしたとき,あなたの尊厳は損なわれていることになります。それを回復させることが価値創造です。  かつて,世界が資本主義国と社会主義国に分かれていた時代,マーケットでの商品の多様性には歴然とした差がありました。社会主

      • スクール長ダイアログ <価値創造と民主的な社会③>

        12月12日 神戸大学V.School長 國部克彦  では「民主的な社会」とはいったいどのような社会なのでしょうか。政治的な代表者を選挙で選んでいれば民主的なのでしょうか。民に選挙権が与えられていなければ,それは民主的な社会とは言えないでしょうが,選挙権を与えられていればそれでよいかと言えば,そうでありません。選挙で選ばれた人間が暴走して,民主主義を蹂躙することも,これまでの人類の歴史では何度も繰り返されてきましたし,それは現在も何も変わりません。  民主という概念の生みの

        • スクール長ダイアログ <価値創造と民主的な社会②>

          12月7日 神戸大学V.School長 國部克彦  「民主的な社会」とは文字通り,「民」が「主」人公の社会を意味し,英語のdemocracyも同じ意味と理解できます。「民主的な社会」が人類にとって,最高の形態であることは多くの人が合意しているところでしょう。もちろん,それは民主的な社会以上の社会を構想できないからという消極的な理由から支持する人もいるでしょうが,それでも,自分が世界の主人公であるの方が,脇役であるよりも,生き生きと活躍できそうだと,誰でも思われるのではないで

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        • スクール長ダイアログ <価値創造と民主的な社会④>

        • スクール長ダイアログ <価値創造と民主的な社会③>

        • スクール長ダイアログ <価値創造と民主的な社会②>

          スクール長ダイアログ <価値創造と民主的な社会①>

          12月3日 神戸大学V.School長 國部克彦  V.Schoolを開校してから半年以上がたち,準備期間を含めて1年以上にわたって,価値や価値創造についてずっと考えてきました。多くの書籍や論文を調べ,講義を聞いたり,教員や学生と議論したりして,まるで学生のように過ごしてきました。教授も一学徒に過ぎませんから,当然のことではありますが。もちろん,V.School創設以前から,価値や価値創造についての自分自身の考え方はありましたが,この1年半くらいの間でいろいろな新しい発見が

          スクール長ダイアログ <価値創造と民主的な社会①>

          スクール長ダイアログ <神話から自由になるために④>

          12月2日 神戸大学V.School長 國部克彦  「少子高齢化」,「財政赤字」,「環境問題」,「イノベーション」を取り上げて,現代社会で非常に一般的に流布している主張が,その最も本質的な点が曖昧であること,本質があいまいであるにもかかわらずそれを議論することをタブーとしていること,しかしそれが達成されなければ「大変なことになる」という「恐れ」を中心に添えて,人間を一定の方向へ動かそうとする圧力として作用していることを議論してきました。「恐れ」を武器にして,人々を統治しよう

          スクール長ダイアログ <神話から自由になるために④>

          スクール長ダイアログ <神話から自由になるために③>

          12月1日 神戸大学V.School長 國部克彦  V.Schoolでの中心的な話題の一つのイノベーションも,すでに神話化しているということができるでしょう。国や企業の政策を見ていると,「イノベーションの促進!」という言葉で満ち溢れています。大学でもイノベーションの創出が大きな目的として設定されています。また,日本では,最近はイノベーションが起こらずに,社会全体が沈滞しているという悲観論が支配的です。  確かに,私たちの生活を飛躍的に向上させてくれたイノベーションは数知れま

          スクール長ダイアログ <神話から自由になるために③>

          スクール長ダイアログ <神話から自由になるために②>

          11月28日 神戸大学V.School長 國部克彦  もう少し「神話」の意味を考えていきましょう。私は,現代の二大神話は「財政赤字」と「環境問題」だと思っています。今日では,この2つの話題をその根本からから議論することは,「正統派」の会合ではタブー視されていて,問題提起すること自体に勇気が必要になります。議論するのに「勇気」が必要という事実そのものが,この問題の「神話性」の強さを証明しています。  「財政赤字」については,日本では国債等の長期債務残高が900兆円程度あり,日

          スクール長ダイアログ <神話から自由になるために②>

          スクール長ダイアログ <神話から自由になるために①>

           11月27日 神戸大学V.School長 國部克彦  V.Schoolで学生の議論を聞いていると,世の中で一般に言われていることを,そのまま信じてそこから議論を展開している人が大変多いように感じます。たとえば,「少子高齢化で未来は社会を支えられなくなる」とか,「財政赤字でいずれ日本円が暴落する」とか,「環境破壊がどんどん進んで地球に住めなくなる」とか,極端に悲観的な見解を頻繁に目にしたり,聞いたりするので,いつの間にかそれを事実として刷り込まれてしまっているのかもしれませ

          スクール長ダイアログ <神話から自由になるために①>

          スクール長ダイアログ <価値創造教育の意義③>

          11月14日 神戸大学V.School長 國部克彦  ひとまず,価値を「何らかの満足」と定義できたとして,この定義から,学生の価値創造能力を育成するプログラムを構築するにはどうすればよいでしょうか。学生の能力を伸ばすためには,知識の提供だけでは限界があり,価値創造に関する知識を学生に内面化する必要があります。そのためには,学生の「経験」が不可欠になります。ジョン・デューイが「経験と教育」(講談社学術文庫)で力説しているように,教育は経験と結び付けられて初めて効果を発揮するも

          スクール長ダイアログ <価値創造教育の意義③>

          スクール長ダイアログ <価値創造教育の意義②>

          11月13日 神戸大学V.School長 國部克彦  価値の本質を議論することが大変な難問であるとしても,実際に価値創造が求められているのならば,価値の本質の議論はいったん棚上げにして,まず価値とは何かを定義して先に進むことが必要です。前回も述べましたように,経済学でも,目に見えない価値が目に見える価値に変わるプロセスについては,定義以上のことができていません。しかし,経済学は,その定義からどんどん先に進んで行って,私たちの生活を支える理論や政策を生み出しています。したがっ

          スクール長ダイアログ <価値創造教育の意義②>

          スクール長ダイアログ <価値創造教育の意義①>

          11月11日 神戸大学V.School長 國部克彦  価値創造の必要性は,企業でも,政府でも,大学でも,頻繁に叫ばれていますが,そのための教育プログラムは,世界的に見ても,まだ十分に構築されていません。私たちは,Creating Value Allianceという国際的なネットワークを通して,アメリカ,ヨーロッパ,アジアの大学や機関と,価値創造の教育プログラムについて検討していますが,こちらもまだ「valueとは何か」について共通の理解を模索している段階です。その意味で,V

          スクール長ダイアログ <価値創造教育の意義①>

          スクール長ダイアログ <大阪市住民投票から価値について考える③>

          11月7日 神戸大学V.School長 國部克彦  ここまでの話をまとめれば,いわゆる「大阪都構想」の本質は,「分からないなら改革しましょう」という意見と,「分からないなら現状を維持しましょう」という意見の対立であって,大阪市を廃止して二重行政にしたらどれだけ経済成長するかとか,大阪市を廃止するのにどれだけコストがかかるかなどの価値に関する計算は,自らの政治的姿勢を正当化する方便に過ぎないものということでした。未来の計算は,それが計算である以上,この「方便」の要素を必ず含む

          スクール長ダイアログ <大阪市住民投票から価値について考える③>

          スクール長ダイアログ <大阪市住民投票から価値について考える②>

          11月6日 神戸大学V.School長 國部克彦  アメリカ大統領選挙の決着がまだついていない中で,まだ決着がついてから1週間もたっていないのに,いわゆる「大阪都構想」の話をするのは,すでに旧聞に属する気もしますが,もう少しポイントを掘り下げておきましょう。  「これからの時代に新しい大阪にチャレンジするか,現状でとどまるのか。そりゃチャレンジしかないでしょう。」(11月1日投票日) これは,「大阪都構想」の生みの親である橋下徹氏の住民投票当日(2020年11月1日)のツイ

          スクール長ダイアログ <大阪市住民投票から価値について考える②>

          スクール長ダイアログ <「大阪都構想」住民投票から価値について考える①>

          11月3日 神戸大学V.School長 國部克彦  いわゆる「大阪都構想」(正式名称「大阪市廃止・特別区設置住民投票」)が僅差で否決されました。私は大阪市民ではありませんが,「大阪都構想」絶対反対の立場だったので,投票結果に安堵しましたが,そのような特定の立場を離れても,コロナ禍で吉村知事の評価が高まって,大阪では強いはずの公明党が賛成に回っても,5年前の住民投票とほぼそっくりの結果が出たことは,価値を研究する私たちに,深い示唆を与えてくれます。  「大阪都構想」をめぐる闘

          スクール長ダイアログ <「大阪都構想」住民投票から価値について考える①>

          スクール長ダイアログ <学生との対話にまた教えられる>

          10月30日 神戸大学V.School長 國部克彦  昨日の価値創造サロン「日常生活における心の豊かさについて」はJTプロジェクトの成果に基づき,JTの大瀧さん,参加学生のK澤さん,M野君も参加して,V.Schoolからの私と祇園先生も加わり,JTプロジェクトコーディネータの安川先生の司会のもと,大変豊かな議論ができました。  私は10分の報告時間でしたが,登壇が決まった9月上旬から,どのような話をしようか入念に考えてきました。JTプロジェクトにも毎回出席し,「心の豊かさ」

          スクール長ダイアログ <学生との対話にまた教えられる>