スクール長コラム 「人生の豊かさ」 <世界が差異とはどういうことか>
昨日の話では,世界=差異であるというところがなかなか理解しにくいと思いますので,もう少し説明しておきます。世界は「認識されるものの総体」と定義しましたが,「認識する」ということは,対象を他のものから区別するということで,差異があるから区別できるわけですから,存在よりも先に差異があるということになります。たとえば,「AとBの差異」といった場合,通常の考え方では,Aという存在があって,Bという存在があって,そしてその間に差異があると考えますが,ではどうして,最初に「Aという存在がある」と認識できたのでしょうか?それはBとの間に「差異」があるからであって,差異が存在に先行するというのは,こういう意味です。そう考えれば,言語はすべて差異の体系であって,「りんご」という言葉は,「りんご」という言葉で指示される対象を「りんご」以外から区別する以上の機能はなく,それが示しているのは「りんご」そのものではなく,「りんご」とそれ以外の者の間の「差異」なのです。その証拠に「りんご」という「判断」を「停止」すれば,「りんご」ではないものがたくさん見えてきたことを先日のプロジェクトでは実習しました。エポケーの話です。こういう意味で,世界は差異の体系なのです。
國部克彦
8月28日 9時44分
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