スクール長コラム 「人生の豊かさ」 <世界へのアプローチ方法>
「認識されるものの総体」としての世界という考え方は理解できたでしょうか。もちろん,人間の認識の外にも物質的な存在物はいくらでもあるわけで,最新の哲学ではそのような「実在」をいかに取り込むかが焦点になっていますが,当分の間はこの議論はおいておきたいと思います。次の課題は,それではそのような「世界」に対して,我々はどのようにアプローチすることができるのか,という問題です。言い換えれば,どのようにして「世界」を理解することができるのかです。それが分からなければ,「世界」をどのように変えればよいのかは見えてきません。そこでのアプローチは大きく3つに分かれます。最もオーソドックスな考え方は,「世界」をその構成要素に分けて理解しようとするアプローチでしょう。V.Schoolの授業では菊池先生の分析哲学的な考えが近いです。もうひとつはその対極で,「世界」という全体構造あるいはシステムから理解しようするアプローチです。玉置先生が講義されたシステム論はこのような考えに近いです。つまりこの2つは,個から全体を考えるのか,全体から個を考えるのかの違いです。3つ目として,そのどちらでもない考え方があります。それは,認識する主体である人間の主観から「世界」にアプローチする方法です。森内先生が講義された現象学,長坂先生が指揮された「情動」,小池先生が重視される「非理性」は,このような観点に近いものです。「近い」と書いているのは完全に同じかどうかは議論の余地があることを示していますが,大まかにはそのように理解しておけば一旦整理ができます。この3つのアプローチを理解できれば,皆さんの哲学的思考はかなり進歩しますし,現実に適応すれば価値創造の可能性が広がります。しかし,それぞれのアプローチには固有の限界もあります。次回以降はそれを考えていきましょう。
國部克彦
8月29日 10時37分
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