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<受講者からの質問に答えて②>

(受講者からの質問)「世界」の認識を3つのアプローチの共通点は、理論的分析であると感じました。一方、4つ目の視点として、経済学的な観点で、理論的分析に加え、実証的(データ・証拠)な理解と言うのも面白いのではないかと感じました。

ご意見大変有難うございます。ご意見いただけると,私にも刺激になり,自分自身の考え方を鍛えることになりますので,大変嬉しいです。さて,4つ目の視点として,「経済学的な観点で,理論分析に加え,実証的(データ・証拠)的な理解」を示されましたが,「経済」は「世界」のひとつの領域で,「経済学」はその学問領域ですので,私の考えでは,それは4つ目の視点にはなりません。したがって,経済へのアプローチ方法は,世界へのアプローチ方法と共通するものです。実証的な方法は,世界をデータという要素に還元して理解しようとする方法なので,これは世界を構成要素に分けて理解する方法の典型になります。なお,経済学でも経済全体を制度としてとらえて,全体からアプローチする制度派経済学(新制度派経済学ではない)もあります。質問では,AI等の発展により,実証研究が発展して新しい未来を創り出してしまう可能性にも言及されていました。たしかに,将来を予測してデータを作成して分析すれば,未来を予測できることができ,そのような政策を打つようになれば,システムが未来を決めているように見えます。しかし,そこでの予測モデルが人間が作ったものであれば,それは人間の思考を機械が強化しただけです。AIが新たなモデルを作成できるようになればどうなるかという問題もありますが,それも現在のAIのレベルでは,人間ならこのようなモデルを作るであろうという域内を出ることはできないので,同じではないかと考えます。今の私のAIの理解では,AIは人間の思考の社会的な影響力を強化するもので,「世界」の範囲が決められていてそれがAIでないと計算できないという状況(これは囲碁や将棋の世界です)でない限り,世界を変えるところまではいかないのではないかと考えます。たとえ,AIのせいで「世界」が変わったように見えても,それは人間が世界を変えたのであって,AIが変えたのではないという意味です。なお,私も世界へアプローチする第4の視点を用意しています。でも,もう少し基礎的なことを抑えてから,第4のアプローチへ進んでいきたいと思っています。

國部克彦

8月30日6時11分

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