スクール長コラム 「デザイン思考を考える」①
9月10日 神戸大学V.School長 國部克彦
<4つのアプローチと3つの思考方法(シンキング)>
「世界」に迫る4つのアプローチに話を戻しましょう。4つのアプローチとは,①構成要素からアプローチする方法,②全体からアプローチする方法,③主観からアプローチする方法,④実践からアプローチする方法の4つでした。それぞれを哲学的な理論と関連付ければ,①論理実証主義,②構造主義,③現象学,④プラグマティズムになります。(ちなみに,主観を超えた存在を考える5番目のアプローチもあります。)そんな単純ではないと哲学者からはお叱りを受けそうな乱暴な分類かもしれませんが,大枠をこのように理解しておくことが,哲学の専門家ではない私たちには必要なことと考えます。どのような対象も境目は常に曖昧ですから,細かい議論は専門家に任せておいて,大枠さえ間違えなければ前に進めます。自動車の構造の細部まで知らなくても,概略が分かれば運転できるのと同じです。これを最近はやりの思考方法(シンキング)で分類すると,①はロジカル思考(シンキング),②はシステム思考(シンキング),③と④を合わせたものがデザイン思考(シンキング)に該当すると思います。ここでも細かい議論はありますし,それぞれの思考方法は他の思考方法も取り入れる方向で展開可能なので,この場合も境目はあいまいな部分が残りますが,大体このように理解しておけば,実際の問題に適用する面で問題は起こりません。V.Schoolはスタンフォード大学などで有名になったデザインスクール(Dスクール)をモデルに構想されていますので,デザイン思考が核になります。それでは,今まで縷々述べてきたことは(抽象的過ぎて頭が痛くなった人もおられると思いますが),デザイン思考を進めるうえでどのように役に立つのでしょうか。これからしばらく,価値という概念を中心に,この問題を考えていきましょう。
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