愛するクラブの元戦士:幸野志有人【3】
V・ファーレン長崎は今、あまりに痺れる状況にある。「J1昇格プレーオフ」への出場権を手にし、自動昇格の可能性も残している。それらすべての戦いを、新たな本拠地・ピーススタジアムで戦う権利も得た。「最高の舞台」へ立つ準備を整えている。
現在重要な試合を控えるクラブを見て、ふと思った。クラブ初のJ1昇格を達成したあのシーズンの戦士たちに話を聞くことで、ファン・サポーターの気分をより一層盛り上げて試合を迎えられるのではないか。
今回話を聞いたのは、幸野志有人。V・ファーレンがJ2に初参入した2013年に期限付き移籍で所属すると、存外のJ1昇格プレーオフ進出に貢献。さらに2017年には完全移籍で加入し、30試合に出場した。クラブ初のJ1昇格を達成したチームの一員で、ファン・サポーターの記憶に濃く残る選手の1人である。
幸野さんの現在の活動や、考え方について語っていただいた【1】はこちら。
V・ファーレンに加入した経緯や2013年・2017年について語っていただいた【2】はこちら。
前ちゃん(前田悠佑)とか杉さん(高杉亮太)とかが大好きだった
―2017~2019年に一緒にプレーした方のうち、特に誰と仲が良かったんですか?
「ホントにみんなと仲が良かったです。
でも(中村)慶太とか(田上)大地とか、あと(鈴木)武蔵、呉屋(大翔)とかは同い年だったのでめっちゃ仲が良かったですね。あと(徳永)悠平くんとはもともとFC東京でも仲良くしてもらっていたので、すごく仲良かったです。(中村)北斗くんとか大竹洋平もそうですね。
2017年で言うと、ほんと前ちゃん(前田悠佑)とか杉さん(高杉亮太)とかが大好きでした。こっちが好き勝手にやって、あの人たちがバランスを取ってくれるみたいな感じ。
あと、田代真くん(田代真一)もそうですね。真くんとは3チーム(町田・千葉・長崎)で一緒にやっているんです。
ホントにみんな大好きだし、この前(7月6日・熊本戦前に実施)のレジェンドマッチもめっちゃ楽しかったですね。知っている人しかいなくて、懐かしかったです」
長崎での去り際が悲しかったから、レジェンドマッチには感謝
―レジェンドマッチでは、幸野さんらしいプレーが随所に出ていたなという印象です。
「暑かったですけど、めっちゃ楽しかったです。日本に帰ってきたばっかりだったんで、今の方が全然コンディション良いんですけど(笑)。
でも楽しかったし、またやりたいですね。次は高校生ぐらいとやりたいです。
僕は長崎に2019年までいたんですけど、2018年に前十字靭帯を切って1年ぐらいサッカーができませんでした。
2019 年の夏ぐらいに復帰して、復帰した試合(天皇杯・高知戦)で点を取ってここからという感じだったんですけど、その年のリーグ戦は1秒も出られなくて。正直、監督と上手くいっていませんでした。
そこに関しては、何かがあったわけではありません。そういうことはあるのでしょうがないと思っているし、好き嫌いがあるのは当たり前だし、責任は監督が取りますし。
そこに関しては何とも思わないですけど、僕としてはちゃんとプレーを見せられずに終わってしまったことが、長崎での去り際が悲しかった。
僕のキャリアで1番試合に出たのは長崎だったので、多分トラスタでのプレーが一番多かった。
そのトラスタでもう2度とプレーすることはないと思っていたから、レジェンドマッチという形でしたけどプレーできて良かったです。長崎のサポーターの前でプレーできたのは良かったなと思っています」
―実は、同じような形でともにプレーした乾大知さんにもインタビューをしています。幸野さんから見た、乾さんの印象を伺ってもいいですか?
「乾くんかあ。長崎にはそういうタイプが多かったんですけど、すごく優しいしいつもニコニコと笑っていました。
あと、あの人めっちゃ点取るんですよ。しかも超大事なところで取る。杉さん(高杉亮太)とかもそうなんですけど。(2017年の)ジェフ戦も乾くんだったし、そういう大事なところでめちゃくちゃ決めるんです。
僕はそもそも怖くてヘディングできないんで、いつもすごいなと思っていました。飛び込んでいく姿の印象がめちゃくちゃありますね」
僕が好きな人の好きな場所だから、長崎が好き
―最初から長崎への愛情があったわけではないと思います。現在も会社をするほど、長崎を好きになったのはなぜですか?
「僕は、土地とか帰属意識とか、組織もそうですけど、そういうのを好きになるのは結局人だと思うんですよ。
もちろん試合に出ていたから、活躍できたから、昇格したからと良い思い出があるからというのはもちろんそうなんですけど。
『焼肉きばらし』の方だとか、長崎には自分のことを本当に孫のように可愛がってくれる人たちがいっぱいいます。
だから場所が好きというより『僕が好きな人の好きな場所だから好き』なんです。その人たちが生まれた場所だから、大事にしている場所だから自分も好き。応援してくれている人たちもたくさんいますし。
もちろん、例えば魚が美味しいとかご飯が美味しいとかっていう理由もあるんですけど、そういう要素だけで好きになるかと言ったら多分そうじゃない。自分が好きな人たちがいる場所だから、っていうのが1番かなと思います」
―話は少しずれますが、ピースタに行かれたとSNSで拝見しました。どうでしたか?
「感動しましたね。大分戦当日の朝早くに着いたんですけど、街にはもうユニフォームを着た人がいっぱいいました。
昔は長崎の中ですらV・ファーレンのことを知らない人がいる中で、『ブイファーレン』とか言われていた中で、10年ぐらいでこんな風になったのはすごいなと。文化になったんだなと感動したし、感慨深かったですね」
サッカーという文化の発展に少しでも貢献したい
―これを読んで、当時の活躍を改めて思い出した方もたくさんいると思います。V・ファーレンのファン・サポーターに、メッセージをお願いします。
「今でも僕を応援してくれているサポーターの方がたくさんいて、本当にありがたいです。やっぱり最後にちゃんとお別れできなかったというのはずっと心残りでした。
そういうもんだという風に自分で納得させている部分もあったんですけど、レジェンドマッチでまたプレーを見せることができて嬉しかったです。
長崎は僕にとって大切な場所で、今『Meta Nagasaki』という会社をやっているので今後も長崎に行くこともたくさんあると思います。
もちろんV・ファーレンのことも応援しています。あれだけ素晴らしいスタジアムができて、子供たちはここでプレーしたいと思うはずです。そういう意味で文化となって、これが連綿と続いていくと考えると本当にすごいことだなと思います。
そういう文化の発展に少しでも貢献できたらいいなと思っているので、もし長崎で見かけたら声をかけてください!」
慶太の総取りのような活躍に期待
―そして現在、V・ファーレンは自動昇格の可能性が残っています。ともにプレーした選手にエールをお願いします。
「(中村)慶太は怪我ばかりしていて、『何してるの?』という感じです(笑)
だからこそ、あいつが最後に昇格を決めるようなゴールを取れたら素晴らしいなと思います。本人もそうだしサポーターの人たちも嬉しいと思うし、慶太が最後に総取りするような決定的な仕事をできれば嬉しいですね。
あそこまでポテンシャルが高いやつはなかなかいないと思うし、あいつはポテンシャルでいったら代表に入っていてもおかしくないものを持っていたと思うし。まあ馬鹿なので、そこはちょっとあれですけど(笑)。
ポテンシャルや技術は本当にすごいものを持っていてもったいないなと思うんで、長崎でもっと活躍してほしいなと思いますね。
あと、安部大晴くんがめちゃくちゃ好きです。左利きだし、僕の好きなプレースタイルで、頑張ってほしいです。しかもアカデミーから出てきたというのが本当に嬉しいですよね。あんな良い選手が出てきたら子供たちの良い目標になるだろうし、本当に頑張ってほしいです」
自分が満足できるような挑戦を続けていきたい
―プレーヤーをはじめいろいろな活動をされていますが、最後に今後の目標を教えてください。
「引き続きサッカーをなるべく高いレベルで続けたいですね。
今、父のチームでやっているので父の目的を達成したいですし、自分自身も35歳ぐらいまでは他のことと両立させながら、なるべく高いレベルで競技者としてやりたいなと思っています。
あとは来年、もう1回ちゃんと洋服に関してやろうと思って、今仕込んでいるんです。長崎でポップアップもやろうと思っています。
AIとかメタバースとかWeb の仕事もそうですけど、他のサッカー選手や引退した人たちが今まで踏み入れて来なかったところで結果を出して『こういうこともできるんだ』という風に思ってもらえたら、今後が変わってくると思う。
そこは副産物的なところですけど、自分で満足いくような挑戦ができるように頑張っていきたいです」
1・2でも紹介しましたが、幸野さんは今月「NAGAYO FESTIVAL」というイベントを開催予定です。イベントは11月15~17日の3日間。
幸野さんは11月16日にV・ファーレンでともにプレーした前田悠佑さん、徳永悠平さんとともに小学生が対象のサッカー教室とトークショーを、11月17日にはAI Workshopを実施します。
イベント前日まで申し込めますので、15日の能鑑賞会やお食事イベントを含め参加希望の方は画像のQRコードよりお申し込みください。
また、幸野さんの洋服のブランド「CLUB SARCASM」に興味のある方は、ぜひ以下のURLよりご覧ください。
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