サイクルベースあさひ【一橋MBA戦略ケースブックVol2・分冊版】―フラグメンティッド・インダストリー制圧から成長へ【読書記録#08】
斜陽産業と言われている自転車業界でグングン業績を上げている株式会社あさひ(全国自転車チェーンのサイクルベースあさひを運営しているところ)が、なぜそんなに業績を伸ばしているのかが気になって手に取った本。
1時間くらいで読めたので、結論だけサクッと記録していく。
本書は、一橋のMBAのケースブックから分冊されたもの。本のスタイルも、あさひの快進撃の要因を淡々と分析していくようなスタイルで進んでいく。
MBAのケーススタディであさひが取り上げられている理由は、以下のような状況下にもかかわらず業績を伸ばしていたからだそうだ。
自転車小売業界の成熟化が進展している状況下で実現したこと
典型的なフラグメンティッド・インダストリー(小規模事業者が地域ごとに事業を運営している業界)で、市場シェアを拡大していった
確かに、硬直した自転車小売業界にイノベーションを起こしたと言っていいのかもしれない。
なぜ、あさひはそんなすごいことを成し遂げれたのか、本書による結論はこうだ。
1980年代後半、大手スーパーなどが自転車を売り始め、低価格競争が激化し、小規模自転車小売店がどんどん淘汰されていった。そこに対し、あさひをはじめとする、1990年代中盤から新規参入し始めたチェーン展開を行う自転車専門小売店舗は、中〜高価格帯の自転車も取り扱ったり、アフターサービスにも力を入れたりして、他の事業者とは異なるビジネスモデルとなっていた。
一般に、新車販売において他者との差別化を図ることは難しいが、自転車リペア事業では、差別化がしやすい。あさひは、自転車リペア業務の標準化と透明性に早期から注力したことが、他社と一線を貸すことにつながった。標準化されたリペア技術と、透明性の高いリペア価格提示とともに、自転車は使い捨てるものではなく、リペアしながら乗り続けるもの、という価値観を徐々にユーザーに浸透させることに成功したのだ。
その後、あさひの追い風になるように、電動アシスト自転車の販売数拡大により自転車の平均単価が上昇していく。これはユーザーにとって、より同じ自転車を長く使い続けたいという気持ちにさせられるため、よりあさひのリペア事業が魅力のあるものになっていく。また、リペアの社内標準化などは、一朝一夕でできるようなものではないため、あさひの先行者優位性になっていた。
自転車リペアのために、ユーザーが再来店するようになると、顧客とのタッチポイントとなり、自転車の買い替えや新しい商品の紹介などができるようになる。新車販売→リペア客→買い替え販売…と、LTVが向上させる。これが、あさひの快進撃の理由というわけだ。
今までと違った経路の本を手に取ってみたけど、結構面白かったので、他の企業のケースも読んでみたくなった。
以上、ざっくりした読書記録でした。
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